自然派SOHOの田舎暮らし快適実践術
メールマガジン「八ヶ岳の里から」バックナンバー
《第16号》2006年3月15日発行
◆ いなかのSOHO(素人が建てるログハウス 必要書類)
◆ 今週の話題(春間近の里山の野鳥たち)
◆いなかのSOHO

前号からの続き「素人が建てるログハウス」です。

  ●こころの中

ログハウス建築場所の土地は八ヶ岳の西麓にありました。標高は1420メートルです。地目は不動産登記法によると山林でも宅地でもありません。原野になります。そして都市計画区域外です。

もともと原野や山林は、本来ならば人が住むには不便なところです。そういうところだからこそ、自然が多く残されています。本来ならば守るべき自然なのですが、やはり、そういうところだからこそ、自然の中で暮らしたいという人たちも少なからず出てきます。

わたしもその仲間で、自然を愛するが故、自然にできるだけ近いところに住んでみたい、という願望がありました。人が住めば、そこの自然に何らかの影響が出てくることはいままでの経験上、十分にわかっています。

自然を愛することと矛盾しますが、いま自分を解放するにはそれしか脱出口が見えません。自己矛盾を抱えながらも走り出していました。

  ●書類の提出

原野の他に山林や雑種地などは建築基準法上の制限はないのでそのままで家を建てることができます。ここの場合、原野だから何をしても良いのかというと、そうはいきません。

自然保護の観点から言えば、原野や山林にこそもっと多くの建築に関わる規制をするべきだとは思っていますが、実際の法律や条令では、規制は多くはありません。こんな法律しかないのなら、大きな資本による乱開発の余地は数多く残されているなと思いましたが、そのために県や村が独自で決めた自然保護協定があります。

ここの別荘地も他と同様に大きな資本による開発行為で出来たところです。県も村も開発を許可することにより、観光をはじめさまざまな税収に多くのメリットがあります。開発業者との各規制を取り決め、それを守ることで開発事業を許可しました。

そういう性格上、民間管理会社の管理する別荘地内なので家を建てる前にも、建てた後にもいろいろな規制があります。

家を建てる前の規制はというと…
国の森林法、県の自然保護条例と自然保護協定、村の自然環境保全条例と水道条例、そして建築基準法です。

今でこそ、業者努力により構造や防火の検査をパスしたログハウスが町中にも建っていますが、当時、在来建築より構造上は丈夫でしっかりしたログハウスなのに建築基準法では認められていない建物でした。当然の事ながら、一般的な宅地に建てれば、構造上認められない違法建築になります。

なかには、違法を承知で建ててしまう人や業者もいましたが多くは、山中の原野や山林にぽっんと建っていたり水道や道路の便の良い別荘地に集中したりしていました。今回建てるログハウスはというと建坪が24坪、延べ床面積でも40坪くらいですのでそして地目は原野なので、建築確認申請は必要ありません。

ということで必要になる主な書類(当時)は…
・地方事務所へ森林法の民有地としての立木の伐採届
・村役場の建設課と別荘地管理会社へ建築工事届
・村役場の水道課へ村の水道公認業者による工事届
これだけ提出すれば完了です。意外と簡単なものです。

  ●自然保護協定について

法的に必要な書類は様式通りに提出すれば、よほどのことがない限り、すんなりと認可されます。もちろん虚偽があってはいけませんが、初めてのことで個人で提出する場合はわからないことも多くあります。専門知識が必要なこともあります。その場合は、村の建築課に出向きわからないことを聞きながら記入すれば特に悩む問題はありません。

一番のポイントは、以前にもお話ししましたが、自然環境保全のための地区での決まり事を守ることです。この自然保護協定は法律みたいに規制力は強くはありませんが条件を無視すると管理会社や村から改善措置がとられます。

たとえば、家を建てる場合の建築後退や道路後退です。一般的には道路中心から2メートル以上離れていれば問題がないのですがここでは幹線道路から20メートル、支線道路からは10メートル以上そして隣地部分は5メートル以上離れて建てなければなりません。緑地保存のためです。当然その緑地間の伐採もよほどの理由がない限り規制されています。

しかし、ここには重大な落とし穴があります。それは、管理会社が協定遵守の監視を行っているということです。県や村では一切監視活動はしません。土地を売買する業者が委託した管理会社が、主導権を持っていると言うことになります。もし協定違反があっても、管理会社が動かなければ、なにもはじまりません。黙認すれば表にも出ません。

以下はその時の関係者から直接聞いた話です。
ある別荘地管理会社の親会社のひとつである大手建築会社がありました。大分前の事ですが、そこの別荘地に、その建築会社の関連会社がで建てた建て売り用の別荘がありました。建てるに当たりもちろん測量は行ったはずなのですが実際に建てた部分の一部が隣地緑地保存部分に1メートル以上も掛かっていたり、隣地境界とぎりぎりの所もあったようです。その後、建築会社は隣地の地権者と何らかの交渉したらしく、管理会社からは改善命令は出されず、そのまま売りに出されたそうです。

どんな取引があったのかは定かではありませんが、前出の軒を切られた家を建てた業者は憤懣やる方がないでしょう。明かな自然保護協定違反です。

決まりは破る人がいるからできるもので、それを監視する方が目をつぶっていては、なにも協定の意味がありません。現在はどうなっているかわかりませんが、
いまだに親会社と子会社の関係のようです。どこの世界にもあるような事がここにもあったんですね。

だからといって私たちは協定違反するわけにはいきません。限りなく自然保護協定遵守です。
(つづく)


◆ 今週の話題《春間近の里山の野鳥たち》

春も近づき、ここ里山では野鳥が活発に飛びまわりはじめました。霧がたちこめたある朝、カケスが5羽、家の横の斜面に飛来しました。ドングリを食べに来たのでしょうか。前日落ち葉の掃除をしたので、一緒に掃き溜まったドングリを盛んに突いたりくちばしで避けたりしています。

そのうち、近くの木にアオゲラが留まりました。枝ではなく幹にぶつかるように足をクッションにして留まります。地上から5メートルくらいの所です。すぐに幹を突きましたが、そのままバックで地上に向かっていきました。一回の動作で30〜40センチは降りていきます。そして地上におりてカケスと一緒になにやら地面を突いていました。

しばらくして、霧が晴れてやわらかな陽が差してきました。今度はヤマガラとシジュウカラ、エナガとコゲラの賑やかな集団です。30羽以上はいます。細い枝にぶら下がったり地上に降りたり、すばしこく動き回っています。

すると、今度は反対側の林から木を突くドラミングの音が山に響きます。かなり大きな音で突いています。そ〜っとのぞきに行きましたが、どこから音がするのか反響するのでわかりません。奥に行くとだんだん音が大きくなってきます。見つけました。アカゲラです。枯れかかった山桜の木を、一生懸命に突いています。近くに行こうとすると、気がつかれてしまいました。一瞬目が合いました。その途端「ピキョユゥ〜ッ」という高い声を残して飛び去りました。

青空が見え始めました。天からのんびりとした「ピ〜ヨッ、ピ〜ヨッ」と声がします。ノスリです。たぶん南側の小さな山の赤松林に住んでいると思われるノスリです。1羽が松林の上を低空で飛翔をしています。そのうち西の山に向かって飛び去っていきました。


【編集後記】

今住んでいる家を建てるために、今は倉庫として使っている作業後屋を先に建てました。そこは電化製品や外水道もあり、寝具も揃えてあるので一応は住めるような状態になっていました。

ある日作業に来たら、鍵を掛けたはずのドアが開けっ放しになっています。不思議に思い中を見ると、かなり荒れています。おまけに、入口にはまだ暖かいヤカンにインスタントラーメンが割り箸をつっこんだまま置いてあります。長いすやホットカーペットも位置が変わっておりなんだか生活感があります。コンセントには充電中の電気カミソリがささっていました。

作業にこない冬の数週間、ドアのガラスを割りドロボウ?が入り込み、倉庫に住み込んでいたようです。突然私がきたので、そのまま逃げたようです。

即通報して30分ぐらいでパトカーが2台、警察官が7人、さらに本署から鑑識
の人たちまで来て大騒ぎです。取られた物は食糧の缶詰やラーメンなどです。額は少ないのですが一応、被害届を出しました。

もうとっくに忘れていた、今から7年前の話です。窃盗の時効が7年だそうで、その時の証拠になった遺留品の電気カミソリの所有権放棄の書類にサインがほしいとのことで、若い刑事さんが訪れました。残念ながら犯人はまだ見つかっていないようで時効を向かえたようです。
標高1,420mの土地。原野だが自然や建築に対するいくつかの規制が有る。

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