自然派SOHOの田舎暮らし快適実践術
メールマガジン「八ヶ岳の里から」バックナンバー
《第49号》2008年1月19日発行
◆大切な薪から思うこと
◆本年最初のメルマガになります。正月もあっという間に過ぎ去ってしまい、なんだかんだでもう一月も後半になってしまいました。遅いご挨拶になりましたが今年もどうぞよろしくお願い致します。
◆大切な薪から思うこと
一月になったとたん急に寒くなりました。雪はほとんど降らないのですがこの数日朝の気温はマイナス10度前後です。ここで活躍するのが薪ストーブ。
この冬は薪ストーブのブームだそうで、一昨年から都会でも薪ストーブが売れているようです。暖房燃料として灯油(原油)が高くなったことがブームのきっかけらしいのですが、何時の世も客観的条件が揃うと新しいムーブメントが起こるようです。善し悪しは別として、このことが化石燃料の使用を抑えることになればとても良い傾向だと思います。
ある人はこんな事を言っていました。
「薪は太陽エネルギーの生まれ変わり。」
とは言うものの、薪ストーブは二酸化炭素をはき出して環境に悪いという人もいます。たしかに燃やすという行為と現象だけをとらえればそうですが、そこに薪(木)を燃やす事に対するとらえ方の違いがあると思います。
でも大切なことなので、今回は簡単にこのことに触れてみたいと思います。
◆バイオマスエネルギー資源
薪を燃料にするということは、木質バイオマス(生物資源)エネルギーとして優れものです。地球の二酸化炭素のバランスを取るのにも役立っています。古くから人類が使っていた燃料でもあり、わたしはあまり好きではない今の言葉を借りれば「地球に優しい燃料」です。
植物や樹木は成長期にさかんに光合成をして炭素を蓄積しながら二酸化炭素を吸収し、そして、最期には朽ちていきながら吸収した二酸化炭素を同じ量位放出します。結果的に言えば、木(森林)は二酸化炭素を吸収しないことになります。
薪を燃やすことは、成長期を終え朽ちていく木と同じで、樹木を薪にして燃やす時に出る二酸化炭素は、木の吸収してきた二酸化炭素を出すことになります。燃やすことで熱エネルギーに変え、しかしながら二酸化炭素は総体では増えないという、巷で言う「カーボンニュートラル」という特性があります。
ここで一般の見解と違いますが、私は木を燃料にすることは完全なカーボニュートラルとは思ってはいません。と言うのも、木を切るときにエンジンや電気のチェーンソーを使い、切った木や薪にしたときにも多くは運搬に車を使っているからです。その負荷は少ないものですが、そのことを差し引かなければならないという理由からです。
でも、今までのように石油や石炭を燃やせば地球の二酸化炭素は増えますが、今まで使っていた化石燃料を木質バイオマスに順次変えていくことで二酸化炭素が徐々に削減されることになることは事実です。
ここで、一つ難問があります。それは以前にも書いた薪の確保とコストです。
雑木の多いこの里山でさえ大変な薪の確保は、木の少ない都会では推して知るべしです。今ではインターネットの通販でも買えるようですが、その金額を見て驚きました。ある通販の大手では20キロで2,200円。まとめて買ってもキロあたり80円という具合。
本来薪用の木はタダに近い金額です。当然、人件費や設備、輸送費などで商品としてある程度の金額になる訳なのですが、エネルギー効率からみても暖房の燃料としてはやはり高いものになります。
木材の発熱量からすると木材1キロあたり灯油換算だと約0.45リットル位になる(大まかな数値です)ので、灯油の1リットル金額に換算すると180円から250円のコストになります。たぶん実際には設備やメンテナンスでもう少し高くなると思います。
しかしながら、タダで手に入るものなど木なら何でも良ければ、たとえば建築廃材や枯れ枝や流木などを燃料として使用すれば、コストは低くなります。一番良いのは、その地域で最も手に入れやすい木を使えば良いのであって、楢や樫のような火持ちの良い堅木にこだわる必要もありません。(この場合煙突やストーブの掃除や点検はこまめに行わなければなりませんが。)
因みに、発熱量は針葉樹でも広葉樹でも樹種による差は大きくなく、同じ体積の木材であれば比重が大きくなるほど多くの熱を発生することになります。もちろん、広葉樹の堅木は比重が高いので火持ちも良く、火力も安定しているので一番人気なのは言うまでもありません。
我が家の薪ストーブはクッキングストーブとしても日常的に使っているので、薪の確保には、方々の知り合いに声を掛けて1年中気を配っています。時には杉や檜などの針葉樹も貰いますが、この場合は細かく割って焚きつけ用(スターター用)にしたり、オーブンの温度を急激に上げたりする時にはとても重宝します。(以前は薪のボイラーを使っていましたが、そのボイラーでは、間伐の唐松が大活躍していました。)
先の「森林は二酸化炭素を吸収しない」ということは、事実なのですが、それでは、植林しても二酸化炭素は減らないのかということになると一概には言えません。間伐で未成熟な樹木の成育を早め広大な面積の植林をすれば吸収能力が増えるのは明かです。ただ生育期だけのことなので、かなり短期的なことです。長期的に見れば循環させなければ意味のないことですが、家でも家具でもどんどん木を使い炭素の固定時間をより長くする事もしなければなりません。
ともあれ、循環型の木質バイオマスは今後も大いに利用したいものです。
【編集後記】
この時期農家は休眠です。近年農地が作付けされないまま放置されている所を多く見かけるようになりました。その様なところは後継者が居ないことが多く、老齢化で管理もままならないと聞きます。もしメルマガの読者の方々の中で、週末農家的な家庭菜園をご希望の方がいらしやいましたら是非この里山の農地を借りて野菜を作ってみてください。猿の害も大分解消されました。被害は無いわけではありませんが、本当の無農薬有機野菜を作る喜びと、食べる楽しさが、そんなことも忘れさせてくれます。人数は限定になりますがご希望の方はメールにてご連絡下さい。3月も終わりになると今年の畑仕事の開始です。
伐採を頼まれ伐った楢の木。直径は50センチ位。玉切りしてあとは薪ストーブの燃料になる。
Copyright(c) 2000-2020 Creative Design Office LETTER HOUSE(since1979) arrival media All Rights Reserved.