おっと!やばいぜ皆の衆!(なりふり構わぬあくどい商法その手口)
78%KAKEGAWA Vol.61 1985年4月号掲載
最近、悪質な訪問販売や街頭勧誘、電話勧誘などが全国的な問題になっている。掛川でも消防署員を装った消火器の訪問販売を始め、屋根瓦の工事、トイレの換気扇、ガス漏れ警報器等々、その被害者は年々増えているという。その殆どは遠方から来た業者で、ある地域を集中的にバタバタと売り込んで、その情報が流れる頃にはサッと引き上げて、すぐの次の地域に行ってしまう。売り込みの内容が巧妙で、しかも法律に触れないように上手く立ち回っているために、法律の専門家でさえも太刀打ち出来ない状態だという。後で悔しがったり泣き寝入りしないためにも賢い消費者になることです。今月はこういった事例をいくつか紹介します。
ソフトムードで強引に…
最近の訪問販売は、昔の様に恐〜お兄さんがやってきて「ゴムひもを買ってくれ」と、すごむ様なやり方ではなく、全体的にソフトムードで、相手の心理状態をうまくつかんで、強引にせめてくるというからたちが悪い。今までの押し売りのタイプとは明らかに違うのである。

かといって、買わされた物が欠陥商品であるとか、全く使えない物というわけではない。一般的な市場価格の2倍から3倍の高値で売りつけられたり、必要のないものまで買わされると言うことなのです。

少しでも安い物をと、スーパーや商店の安売りの日には目の色変えて行く人が市価の2倍も3倍もする買い物をしていたのでは、とても賢い消費者とは言えません。本当に必要な物かどうかを確かめて、少し時間をおいて検討することです。「今を逃したらチャンスはない」などと契約をせかされたら用心して下さい。

割賦販売の場合はクーリングオフ(契約をした日から一定期間内なら一部商品を除いて無条件で解約できる)の制度があるが、現金販売の場合は「解約できない」と言われても、それは違法にはならないのです。

結論を言えば、商品は必要な時に、地元の信頼できるお店で買うのが一番。地元のお店は逃げて行かないからです。苦情があれば言っていけるし、物によっては交換や返品もきくからです。
訪問販売=全てが悪徳業者ではないが…
セールスは対応に出て来た主婦や家族を見て、相手によって対応が変わるという。その辺りは良く研究されている様で、「そうねえ、今はお金も無いし…」とか語尾がぼけている返事は相手の思うつぼ。30分も1時間も話を聞いてしまうと、断れない状況に追い込まれてしまうので、訪問販売員が訪ねて来たら「この人は何を売りに来たか」を確かめて、本当に必要かどうかを確認し必要でないと思ったらその時点で断る様にしたい。

但し、販売業者の名前や商品の種類をあいまいにしている業者は要注意ですが、訪問販売イコール悪徳業者ではないので、のっけから「そんな物要らないから帰ってちょうだい!」と言うのではなく、相手も同じ人間なので、尊重しながら正しい断り方をしてください。

どこの誰が何の目的で訪ねて来たのかを確かめて、必要でないものなら「今、そう言う物を必要としておりませんので、お断り致します。」と言った方が相手も気持ちが良い。2回目にまた言ってきた時には、「先ほども申し上げたように、とにかく家では必要としておりませんのでお断り致します。」と、今度はきっぱりと厳しい口調で言えば、相手は顔色と態度を見て帰って行くそうです。3度目を言ってくる場合は殆ど無いそうです。

所が、トイレの換気扇の場合はかなり強引で、「お宅の換気扇の電気の調子を見たところ、電気が漏れていて火災を起こす危険があります。私は前に来た業者ですが、危険ですから替えてってあげましょう。」と、親切半分みたいな言い方で、その日のうちに替えていってしまうそうです。もちろんお金も持っていきます。留守番をしているお年寄りなど、家族の誰かが頼んだものとばっかり思って、言うとおりにしたというケースもありました。

又、屋根瓦も自分が屋根に上がって確認出来ないだけに、「危険だから取り替えた方がいい」という言葉に惑わされないように…。

ある人は、屋根瓦の業者がやってきて、家まで上がり込んで話をしてきたので、その後どういう風に出て来るか様子を覗っていたそうです。しばらく話をしていたら、「電話を貸して下さい」と言って、自分の会社に「今こういう所を回っているが…」と報告をしたそうです。それが「第一段階に踏み込んだよ」という合図になっているらしく、しばらくすると外にいた仲間がやってきて、裏口の方で待っていたそうです。電話をかけ終わると「それじゃあ奥さん、見るだけですから…。お宅の屋根がどんな風になっているか見せて戴きます。」と、かなり強引に出て来たそうですが、そこできっぱりと断ったので、しぶしぶ帰って行ったとの事です。
他人に言うと幸運が逃げていく…
相手の弱みにつけ込んだ商法や、手相の占いによって売り込む方法もある。実は私もその一人なんですけど、8年位前に3本セットで8万5千円もする印鑑を作らされてしまった。「手相や姓名判断をするだけだから…」ということだったので見てもらったところ、よく当たっているのです。そこでついつい「あなたは将来必ず自分で何かをやる人ですから、一生使える印鑑を作った方がいいですよ」と言われ、実印を欲しいと思っていた矢先でもあったので、ついその手に乗ってしまった。実際には粗悪品でもなかったし、現在もしっかり利用しています。

所が、最近の商法はもっとあくどく、日頃留守番をしているお年寄りなどの心理状態をうま〜く利用した訪問販売も横行している。

留守番をしているお年寄りは、日中の会話も少なく、家族が帰ってきた夜でも疎外感が強く孤独な時間が続く場合が多い。淋しいという感情があるために、お年寄りの心理状態をうまくつかんだ若いセールスがやってくると、つい嬉しくなって気を許してしまう。

この家の財産はどの位有って、貯金はどの位有るか、本人が自由がきくお金はどの位有るかを巧みに聞き出して、最初は10万円程度の印鑑を作らせ、それをきっかけに足繁く通ってくる。

幸福の壺だとか、色々な物を売り込みにやってくる。しかも「人に漏らすと幸運が逃げてしまうから、今から10日間は絶対に人には言ってはいけない。家族にも言ってはいけない。」と、口止めをしておく。その間にクーリングオフの期間が過ぎてしまうために、返品することも出来ず、後で気が付いたときにはもう手遅れとなっている。中には3百万円も持って行かれたという人もいる。
あなたは幸運な方…
よく、「あなたは幸運な方です。大勢の中からあなたが選ばれました。詳しい話をしますから、何日にどこそこへ来て下さい」と、何だか訳のわからない電話が掛かってくることがある。

話を聞くだけなら…と安易な気持ちで出掛けて行くと、出向いた先で何時間もねばられて、結局高価な物を買わされてしまうことになる。誘われた目的をはっきり問いただすことです。

最近、浜松の方で被害の出ているもので、「温泉旅行の無料招待」というのがあります。公会堂などに集まっている時に、アンケートを取ったり、話をして全員にくじを引かせる。しばらくしてから手紙が届く。

「あなたは幸運な方です。抽選に当たったので温泉旅行に招待致します」という内容だ。喜んで旅行に出掛けて行けば、何のことはない、あっちからもこっちからも同じ様に当たった人達がやって来る。

行った先の旅館に着けば、業者の態度は一変し、全員を広間の一室に閉じ込めて、存在するのかしないのかわからない様な土地の契約を迫られたり、高価な商品を買わされてしまう。

「タダほど高い物はない。」と言うことを肝に銘じてください。まだ、掛川では被害の報告は出ていませんが、魔の手はすぐそこまで来ています。

欲を出したがために無一文に…
何とかいい利殖の方法がないかと思っている奥さんや、老後のために退職金を上手に増やしたいと思っている定年退職者が引っかかりやすいのが、海外先物取引である。

金とか小豆などの投機的な相場…。どこで調べてくるのか、定年退職をした家には、こういった電話がひっきりなしに掛かってくる。

電話を受けて「10日間でこの位の利息がつきます。」と言われて、「そうですね…」と、何となく迷った様な返事をすると、直ぐにやってきて「うん」と言うまでは延々と夜中になっても話を続けていくそうです。

その内に根負けして「それじゃあ百万円位なら…」と契約をしてしまう。一週間か10日ぐらいたった頃に再びやってきて、「奥さん、もうこんなに増えたんですよ。」と、7〜10万円のお金をちらつかせる。

「これをまた入れて、さらに上積みすれば、今度はこんなに大きくなるんです。もう百万円どうですか」と来る。それから後はずるずるとお金を引き出されていって、限界までくると、後は何を言っても電話だけの対応になり、「今は時期を見計らっていますから…」とか何とか言われて、口数だけを増やされ、結局は自分の手元には一銭も入ってこない。

一千万円を超えたくらいから、ようやく気が付いて、弁護士やら公的機関に相談に行くが、敵もさるもの、法の網を上手にくぐっているので、専門の弁護士でも太刀打ち出来ない状況だという。今までに解決した例は殆ど無く、20〜30万円を返してもらえれば良い方だという。

世の中には、そんなにうまい話があるはずありません。海外先物取引は専門家でも難しく、一夜にして無一文となってしまう人もいます。何もわからない素人が手を出しても、業者に利用されるだけです。電話が来たらきっぱり断りましょう。
食品や日用品の大安売りします…
訪問販売ではないけれど、日用品や食品の安売りとか、説明会を開くという名目で人を集め、閉め切った場内で熱狂的な雰囲気を作り上げ、商品を買わせるというのがある。一般的には、開催する会社の「新商品普及会」の頭文字をとって、「SF商法」と呼んでいる。またの名を「催眠商法」とも。

午前中は無料で、或いは安〜い値段で、日用品や食料品を配ってその気にさせ、午後は近所の知り合いを誘ってくるように言い、本命の高額商品を買わせるというもの。

主に、ベッド、羽毛布団、マッサージ器、健康食品などだそうですが、お年寄りなどは、販売業者の巧みな話術に酔いしれて、買わされるのを承知で通っている人もいるという。

テレビの漫才を観ているより面白く、同じ年代の仲間が集まるので、家にいるよりよっぽど楽しいのだそうです。時々、お年寄り達が同じ様な袋や箱を持って、仮設の会場からゾロゾロ帰って行くのを見かけるが、その人数たるやビックリする程です。誘われてもいかない事が一番ですね。
友だちから誘われたばっかりに…
友だちから「富士スピードウェイを見に行かないか」という誘いに乗って、危うく大金を取られる寸前までいった人がいる。

ただ「富士スピードウェイを見に行くだけ」と軽く考えていたことと、友だちから誘われたという安心感もあって、いつしか、一緒に行った仲間とも打ち解けて楽しい一日を過ごした。

会場では一人一人に番号札が渡され、抽選でスカイラインターボがもらえるという、なかなか大がかりなものだった。その際にアンケートをとらされ、本人には海外旅行に行きたい、店を持ちたいという夢があったので、つい色々と書いてしまったそうです。

数日後、「この間の仲間がいる所へ行こう」と、事務所に連れて行かれ、カーワックスの説明をされて、いかに素晴らしい商品かという実験までしてくれた。その後の話し合いは円座で皆から囲まれた状態になり、異常な熱気に圧倒される程だったという。

会員になれば海外旅行にも行けるし、大手企業と契約しているので、そのメーカーの商品が安く手に入るというふれ込みだった。一人では出来なくても、皆が集まってやれば何でも出来ると、延々と話は続く。

「やろう!」「やろう!」と、皆から言われた時は、つい返事をしてしまったと言う。2回目か3回目の時には、入会金として5万円ほど取られてしまった。浜松にある事務所では、発表会やダンスパーティも開かれ、帰りは12時とか深夜1時頃になることもしばしばあった。友だちも増え、親密度を増した頃を見計らって、オーナーに呼び出された。

「これは会員になった人すべてに話すわけではなく、お前のやる気を見込んで話をする。初めのアンケートの時に店を出したいと言ってたし…。例えば、今日なら50万円で買える土地があったとして、明日、明後日には2倍、3倍になることがわかったら、お前はその土地を買うか、買わないか」と迫られた。それで「イエス」と答えれば、次の話をしてやろうという感じで話したという。

次の話というのは、エージェント(代理店)になれば、会員を1人増やすごとに5千円が入り、その会員をエージェントにすればもっとお金が入るというもの。そのためには50万円の契約金が必要となる。

オーナは「自分は友だちの所を回ってお金を借りてきた。一生のうちは何回か人に頭を下げて回らなければいけない時がある。お前なら出来る。」と、暗に借りてでも50万円用意しろと言っているようだったと言う。

本人も、最初に「店を出したい」と闘志を燃やしていた手前、引き下がれないような状態に追い込まれていた。しかもその時も「おかしいな?」という気持ちは全く無かったという。ただ、50万円という大金が用意出来る自信も無かったし、友だちを引き込むことは出来ないなという意識だけが、エージェント契約金の支払いを拒否させたと言える。

このような、商品を売ることが目的ではなく、友人や親戚を利用して会員を増やしていくやり方も多い。
公的機関をかたる「かたり商法」…
あたかも消防署や保健所、郵便局から来たように装って商品を売りつける「かたり商法」というものがある。

最近よく問題になっているのが消化器。「現在有るのでは容量が小さいから大きいのにしなさい」とか「法律で義務づけられているから」と言って、高い値段で売りつけていく。

もちろん消火器を設置することは、防災面を考えれば必要な事であるが、法律で義務づけられている訳ではない。3ヶ月に一度定期点検にやって来るからと売りつけていく業者もいるが、まず二度とやって来ることはない。

実際には、粉末の消火器の場合には、5年に一度の詰替で十分だそうです。必要な場合には、地元の消防設備士の免許を持っている業者か、消防署に問い合わせすれば詳しく教えてくれます。

その他にも、表札、ガス漏れ警報器、シロアリ駆除、ゴミ容器等々、紛らわしい売り方をする業者がいっぱい。婦人会などで消火器の業者を斡旋する以外は、公的機関で訪問販売をすることはあり得ません、必要な物以外はまったく買う必要が無いのです。必要だと思っても、正当な金額かどうかよく確かめてから買うようにしてください。



引っかかったらすぐに市役所へ…
今までに紹介した以外にも、ホームパーティ形式で料理講習会を開きたいと言って、調理器具を売りつけたり、キャンペーン中だから安くすると言われて、ベランダの見本工事をやってもらったら、割引どころかむしろ高かったとか、本当にいろいろな商法があります。

言葉巧みに言い寄られると、つい断り切れない時もあります。引っかかることは誰でもあります。そういう時には恥ずかしがらずに、直ぐに相談することです。迷っている間に日が過ぎてどうにもならなくなってしまいますから、一刻も早く相談してください。

殆どの場合契約書には小さな字だけど「契約を取り消す場合には、一週間以内に、書類で取り消してください」と表示してあります。
ご相談は、掛川市役所商工労働課まで。消費の相談をしたいといえば電話を回してくれます。
脅かされた時の自己防衛…
隣家と離れているある一軒家の主婦は、「訪問販売の業者から威しに掛けられて怖くなってしまった」と言っていました。こういう場合はどうすれば良いのか。

現行犯とか詐欺犯以外は、警察でも手を出せないケースが大半です。ということは自己防衛以外にないわけですが、相手に背を向けながら110番するわけにもいかず、家族もいない家では本当に困ってしまいます。そういう時には「今から用事があって出掛けなければならないので…」と言って帰ってもらうようにする。

それでも帰らなかったら、とにかく外に飛び出して「誰々さ〜ん!」と人がいてもいなくても、誰の名前でも良いので、あたかもそこに人がいる様に大声で叫ぶこと。飛び出してしまえば側に相手はいないし、まさか追いかけて来ることもないだろう。とは言うものの玄関を相手がふさいでしまっている場合にはなかなか勇気が要ります。しかし、それしか手段がないとしたら裏口からでも良いので、やっぱり勇気を出すしかないですね。

主婦だけではなく、家族全員が話し合って、悪質な業者に引っかからないようにして欲しいものです。万一引っかかってしまって困った場合には、諦めずに弁護士などの専門家に相談を掛けることです。