素通り禁止?!無人販売
78%KAKEGAWA Vol.60 1985年3月号掲載
掛川駅西側
自転車の違法駐輪
掛川駅舍を中心に、東側の道路沿いと駅前交番の裏側の西と東に分かれて、国鉄をる用する人達の自転車がズラリと並んでいる。それに加えて、駅付近の歩道までも自転車が占領している。

本来ならば道路敷にあたるため、違法となるべき所であるが、区画整理等の影響のため、自転車預かり所が廃業する所も出て来て、預かる場所がないということもあり、市側としては目をつぶっているのが現状。

駅舎の東側だけでも2月13日午後4時頃調べたときには、自転車が214台、オートバイが35台もあった。掛川署の昨年の調べでは、掛川駅舍の東西だけで500台以上、掛川市の調べでは全体で800台以上が違法駐輪をしていることになっている。

現在、自転車預かり所を営業しているお店は、市内で4軒しかない。これだけの台数を4軒で振り分けることは、収容能力から見ても不可能である。

東側の道路敷には、「ここは車の出入り、歩行者の通路のため駐輪禁止です。自転車は東側白線内に整理整頓して置いて下さい。」という看板を市役所が掲げている。これは市側の暗黙の了解と解釈していいだろう。但し、今後駅前が整備された時点で、どういう風になっていくかは「具体的には何も決まっていない。」(市役所)と言う。

昨年の1月頃に、国鉄掛川駅の貨物取扱が廃止された。それに伴ってその跡地を利用して、駐輪場を建設するという計画もあった。2階建てで自転車500台、乗用車50台くらいが置ける駐車場を設けると言うもので、国鉄に対しても、既に申し入れを行っていたと言うが、1年経過した現在も、まだ正式なことは何も決まっていない。
通勤通学する人達にとっては大切な足。屋根付き駐輪場が早くほしいよ〜。(駅東側)
掛川駅東側
バカにならない預かり料金
ユニー裏側
現在、自転車預かり所に自転車を預けると、1ヶ月2,000円〜2,300円の預かり料金が掛かる。(ちなみにお隣の菊川町は学生2,000円、勤労者2,100円。)バイクに至っては2,500円〜3,500円である。一日にすれば100円程度だから、安いと言えば安い。

預かっている方にしてみれば、一等地で固定資産税をがっぽり持って行かれるんだから、当然そのくらいは要求したいところだろう。しかし、預ける身になれば、交通費以外の出費になるのだからバカにならない金額である。

多少自転車の傷みが早くなっても、無料の青空駐輪のほうがいい、と考えるのも無理からぬ話だ。駅舍の東側の道路敷を利用している男子学生にちょっと話を聞いてみた。

78%:「毎日ここに置いているんですか?」
学生:「そうだよ」
78%:「自転車預かり所に預けないんですか?」
学生:「預けるとお金掛かるから、けっこう高いのでもったいない」
78%:「自転車の傷みが早いでしょ?」
学生:「そう、1年で錆びだらけ。でも、後1年は乗らないと。」
78%:「無料の屋根付き駐輪場が端居ね。」
学生:「うん、ほしい。ほしい。」
学生にとって2,000円といえば、1ヶ月のお小遣いにも相当する金額である。電車の定期代も含め親の負担は大きい。

青空駐輪(よく放置自転車と呼ばれるが、大部分は放置してあるわけではないので、あえて青空駐輪と呼ぶ)が増えてきたのは最近始まったことではない。2〜3年前に廃業したある預かり店の店主は、
「うちがやめる頃から、預かる台数が徐々に減ってきましたね。ユニーやジャスコの駐輪場に置く人が増えてきたんです。『あんたんとこへ置くとお金を取られるけど、ユニーやジャスコならタダで置けるもんね。』と、堂々と言ってく人もいましたよ。」返す言葉もないとったところだろうか。

ユニー東側
夕方5時前後頃から自転車の持ち主が現れて徐々に台数が減っていく。
浜松には無料の駐輪場がある
掛川で付き2,000円〜2,300円の預かり料なら、浜松ではどのくらい取られるのかを知りたいと思い調べてみたところ、意外にも浜松駅周辺においては、自転車預かり所は一軒も存在しなかった。

浜松には以前は自転車預かり所が何軒かあったらしいが、駅前を整備していくうちに、徐々に消えていってしまった。その代わりに、市で管理している無料のしかも屋根付きの駐輪場が駅周辺に3カ所も完備された。合計2,000台以上の自転車が収容できるという。

自転車預かり所が一軒残らず廃業してしまったというのは、都市の中で、しかも駅前の一等地では成り立たない商売になってきたからである。地価が高いということは、それに伴って固定資産税が上がってくるからだ。

この問題に関しては、特に最近の掛川についても言えることだが、新幹線掛川駅の関係で地価がうなぎ登りにどんどん上がり、自転車預かり所では商売として成り立たなくなりつつある。ある自転車預かり所のご主人が、「税金が高くて往生こいちゃう。」とこぼしていたが、この商売ばかりは税金が高いからといって、駅から遠い地価の安い郊外でやれる商売ではない。

話がそれてしまったが、そんなわけで浜松駅周辺から自転車預かり所がすっかり姿を消してしまったために、浜松市が動き出したと言うのが実情。しかし、オートバイについてはまだ手つかずの状態である。今後の都市計画の中に組み込んでいく予定とは言うものの、なにせ町の中心地に広い土地を探し出すのは大変な事である。

「国鉄が、目の前の空いている広い土地を、開放してくれるのが一番いいんだけど…。」と、国鉄の広い土地を眺めながら指をくわえて見ているだけ、というのが現状のようである。考えていることは何処も同じで、掛川市でも「国鉄の土地を開放してくれたら…。」と言っていた。

実際には、大半が国鉄を利用する通勤通学者のための駐輪場である。国鉄利用者サービスのために、せめて半分でも土地を提供してくれても良さそうなものである。

駅前交番に近い駅の西北のところは何故かまばらだった。
駅前の整備が行われているジャスコ前。
この台数では整理整頓しても一列には並ばないだろう。一台こけたらみなこけそうだ。
掛川にも無料の駐車場を!
掛川市はまだ都市計画(土地区画整理事業)の途中であるが、すでに自転車預かり所は半分以下になってしまった。現在残っているのは4軒だけで収容台数もごくわずかだ。自転車預かり所も、必要としている人にとっては、なくてはならない所でもある。

預かり所に預けておけば、雨が降っても風が吹いても安心だし、盗難に遭う可能性も少ない。しかし、現在の預かり所の件数ではまかないきれないし、将来的には何軒の預かり所が残っていくかもわからない。現在残っている4軒に、今後も続けていくのかを尋ねてみたいと思ったのですが、2軒は取材を拒まれ、全体にはっきりした方向が掴めなかったのが残念です。

拒否された理由は、多分押し売りかなにかと勘違いされたのではないかと思うのですが、一軒は本を見せて「こういう雑誌を出しているものですが…」と説明しだしたら途端に追い返されてしまった。いくら説明しようとも全然相手にされず背中を向けて奥に行ってしまった。正直かなりのショックを受けました。

しかし、気を取り直してよくよく考えて見れば、それもやむを得ないことだと納得したわけです。最近は強引に物を押しつけていくセールスや、保健所や消防署員になりすまして売りつけていく業者や、取材だからと言って後で広告料を請求してくる業者もあるという話だから、初対面の人間に対しては警戒心を抱くのだろう。人間が人間を信じられない世の中になってしまうのは悲しいこと。おばさんの気持ちも判るけど複雑な心境です。

話を本題に戻します。路線バスや二俣線廃止が叫ばれたり決定してしまっている昨今、ベッドタウン化してきている掛川市にとっては、近距離の人達の通勤通学の足として、これからも自転車が増えていくと思います。将来的には必ず無料の駐輪場が必要になってきます。その時には、せめて簡単な屋根付きの駐輪場を作って欲しいものです。
駅近くの自転車預かり所。都市計画で区画整理の途中。
通勤通学以外にも買い物などで定期的に利用する人も多い。
雨にも負けず、風にも負けず…
2月9日は久々の雨。この時期には珍しく大雨と言ってもいいだろう。こんな日には、青空駐輪場もさぞや閑散としていることだろうと思って出掛けて見れば、自転車は雨の中を濡れながら、いつもと同じ様に主を待っている。前の日よりもほんのすこし少ない程度で、これは今日が土曜日のせいでもあると思われる。

雨降りにもかかわらず、これだけの自転車が並んでいるということは、いかに人々にとって自転車が大切な足になっているかがわかる。青空駐輪の場合、雨が降れば当然濡れる。サドルの部分だけをビニールを被せて保護している自転車もあるが、大半はそのままの状態である。持ち主は半ばあきらめの境地なんだろうか。

自転車の場合は、雨にも負けず…とはいかない。雨に濡れればいつかは錆びだらけとなる。ブレーキのきかなくなった自転車や、御用済みとなった自転車は、哀れにも置き去りされたままになることがしばしばある。

市では、昨年の暮れに放置自転車の処分を実行した。明らかに長期間置きっ放しと思われる自転車だけを対象にし、一ヶ月の猶予期間をおき、荷札を付けて週一回調査して回った所、全くの放置と思われる自転車が100台以上も有ったそうです。

自転車としての機能を全く果たさない様なもの、例えばブレーキが壊れていたり錆び付いて動かなかったりと、廃物同様の自転車である。それでも100台以上集まれば結構場所を取る。それだけ道路を占領しているわけだから、放置したままというのは、使い捨ての時代に慣らされた人間にとっては当たり前の行為なのか。

市側としても、違法を承知で黙認してくれてるのだから、利用する側もそれなりに答えていかないと、結局は自分で自分の首を絞めていくことになりかねない。主人の足として長年働いてくれた自転車である。不要になったからと言って「はい、さようなら」では、あまりにも無責任。最後の処分ぐらいは自らの手でしてあげたいものだ。

雨が降っても青空駐輪場は大盛況。
嗚呼!自転車泥棒
放置と言っても、すべてが持ち主の無責任な放置ばかりとは限らない。中には盗難に遇った自転車が混じっていることが結構有るからだ。しかし、自転車の場合盗難といっても、意外に軽い気持ちで、そこら辺に置いてある自転車に乗って行ってしまうのだそうです。完全に自分の物にしてしまうのではなく、自分が移動してしまえば、それで終わり。

そこに置いたまま、盗んだ方は移動目的を果たして何処かへ行ってしまい、盗まれた方は自分の愛車がどこへ行ってしまったのか全くわからないので、結局はそのまま「放置された」ということになってしまう。

掛川駅前の交番には、毎月平均で7〜8件の盗難届があるという。中には届け出るのが面倒なのでそのままにしてしまうケースもあるという事だから、実際の数字はもっと多いようである。

盗難の殆どがカギを掛けていないのが原因。「カギを掛けることが、持ち主の最大の防御」と、交番のおまわりさんが言っている様に、、道ばたにカギを掛けずに置いていくのは「よかったら、どうぞ持っていって下さい。」と言っているようなもの、だそうです。

駅周辺の場合は、特に電車の時間が間に合わないと、そのままカギを掛けずに行ってしまう場合が多いので、後で泣き言を言わないためにも、カギは絶対に掛けましょう。残念ですが、今は他人を信用できない世の中になってしまったんですから…。

カギを全く掛けない無用心な人、カギ付きチェーンを掛ける慎重な人。用心に用心を重ねることが盗難防止となる。