掛川を斬る!」の意見に対する返書
78%KAKEGAWA Vol.52 1984年7月号掲載
まえがき
今年の5月号で「掛川を斬る!」という特集を組みました。企画の趣旨は、掛川で生活をしている78%の読者が日常生活を通じて、病院や市役所、警察などの機関や、学校や商店や地域の習わし、都市計画や新幹線駅の問題などに対する不満を中心にしたもので、投書やインタビューの方法によって紙面に意見を掲載し、問題提起を行って、公の各機関や他の読者の皆様に考えて貰い、可能なことは解決して貰い、少しでも住みやすい掛川にしていこうということです。

特集のタイトルは少々大げさでしたが、特集で掲載した意見は、個人レベルで感じている日頃の疑問や不合理ではないかと思っていることを、本音でぶつけてもらったものです。78%ではこの「声」を、そのまま市役所を始めとする各関係機関に持っていき、それらの意見の回答なり対処をして頂くようにお願い致しました。その結果が今月号の特集です。

全てが納得のいく回答とは言い切れませんが、簡単に即決できる問題ばかりでもありませんので、今後どのように「声」が生かされていくのかを冷静に見つめていきたいと思います。今回の回答に対する意見がありましたら編集室にご連絡下さい。再度関連機関に問い合わせ致します。

また、特集の最後では、「掛川を斬る!」の特集に寄せられた新幹線掛川新駅設置の件に関する投書や新聞紙上に掲載された記事などを基にし、編集室の意見として「新幹線」を取り上げてあります。読者の皆様の「新幹線」についての考えや意見、情報などがございましたらお便りをください。

なお、回答は原文のまま、口答の場合は編集室でまとめさせて頂きました。
質問および意見内容
・カゼに効く薬はないはずなのに何故か薬づけ。わけのわからない薬を多数渡される。
・健康管理や食事療法は医師の立場からは教えてもらえないのですか?

回答:掛川市立総合病院
1984年4月に完成したばかりの掛川市立総合病院。宮脇から杉谷に新築移転した。
医師は個々の患者さんの症状によって、必要な薬を処方しています。かぜの特効薬がないので暖かくして寝ているのも一理です。かせの原因はウィルスで、現在確実な抗ウィルス剤は出ていません。しかし、かぜの為に起こる不快な症状を取る事も、時に必要で、発熱、鼻づまり、せき、たん等に対して処方します。

又かぜが長びくと二次的な細菌感染によって、気管支炎や肺炎を起こしますが、これには抗生物質が有効で、小児や抵抗力の弱い方には、早くから使用する事が多いと思います。昔は、ほとんど散剤(粉ぐすり)でしたので、混合してもそとからはあまりわかりませんでしたが、現在は一種類の錠剤が大部分ですので、大量に見られがちと思います。又、医薬の進歩によって、長期間服用するような薬が多く出て来たことも事実です。主治医とよく相談して、信頼して吹くようする事をおすすめします。

健康管理、食事療法などについて、一般的な事は、医師がお話ししていますが、特殊な食事療法等については、栄養士が栄養相談を行っています。細部については更に御尋ね下されば、出来るだけ説明致します。
質問および意見内容
・医療センターでの予防注射は、毎回混雑をして、子ども連れだと大変。場所を広くするか、回数(午前とか午後の2回位)を多くしてもらいたい。

回答:掛川市役所保健予防課
医師会から借りている手狭な医療センター。
この件については、保健予防課でも充分承知しており、早急に会場を作って欲しいと。市に要求してますが、予算の関係でメドがたったいないというのが現状です。現在の会場である医療センターは、昭和47年に医師会で作られた建物で、市が医師会から借りてるような状態です。

日・時に制約があり、予防接種だけでなく、成人病の予防検診等も含めると、年間にして250回位使用させてもらっています。そのため、回数を増やすことも不可能。又、駐車場も狭く、待合所が自動車の通行路に面しているため、危険性も高い。しかし、早急に必要とする掛川市立総合病院、清掃工場等の大きな事業があったために、保健センターまでは予算が回らなかった。今後も都市改造、新幹線駅設置の問題も有り、メドはたっていないため、改善対策として、
(1)受付時間、番号札の早めの提示。
(2)冬場を除き、受付場所を室内より地下駐車場に変更。
(3)待合室に椅子の設置。
(4)会場付近への車の「進入ご遠慮」の掲示。
等を実施している。

しかし、根本的な解決にはならないので総合計画に組み込んでもらえる様、今後も要求していくつもりです。
質問および意見内容
・緊急事態が発生した時や、市民がどうしても放送して欲しいと思う時には、同報無線を利用させてもらえないのか?

回答:掛川市長公室長(秘書広報係)
市内に多数配置してある同報無線。
掛川市同報無線の管理運用規定では、放送を必要とする内容に合わせ、定時・随時・緊急の3種類に分け、運用を図ることになっています。放送を必要とする条件としては、
(1)災害情報など緊急に伝達を必要とするもの
(2)不特定多数の住民に伝達し、協力、および理解を得る必要のあるもの
(3)その他市長が特に必要と認めたもの
となっています。

市では、緊急事態の発生する恐れのある時や発生した際の状況はできるだけ早期にキャッチし、お知らせしていく方針で運用を図ってきています。しかし、みなさんからの連絡がなくては状況を知ることが不可能で、放送ができないこともありますので、ご協力をお願いしたいと思います。なお、放送を必要とするような事態が発生した場合の連絡先は次の通りです。

平日の午前8時30分〜午後5時(土曜日は正午まで)は掛川市役所市長公室
上記以外の時間及び日曜・祝日は掛川市消防署
なお、地区ごとにある子局においても放送ができます。その場合は、管理する各区長さんにご連絡下さい。
質問および意見内容
・区画整理等で一方通行や右折禁止等の規制が新たに設けられ翌日には取締をやっていた。事前に市民に知らせるか、指導をしてもらいたい。
・暴力団が来るって本当ですか?

回答:掛川警察署
宮脇の国道一号線沿いにある掛川警察署。
どこの地区でも同じなんですが、規制が変わる場合は、事前に地区の関係者に説明しています。交通規制については、規制審議会というのがあって、「こういう必要があって、この様な計画で行います」ということを、関係者に事前に話すようになっていますから…。それも住民の意向を聞きながら合意の上で、一番良い方法でやっています。

交通標識を立てたばっかりで、従わなかったからといって、すぐに取り締まる様なことはしていません。一ヶ月半位は、指導期間という形で、現場で指導をする様にしています。広報誌にも載せたりして、市民のみなさんにお知らせしていますので、その辺は誤解のないようにご理解下さい。

暴力団についても「本当に来るんですか」と、いろいろ心配されているようですが、現在掛川署管内でも暴力的な問題が発生しています。しかし、警察としても、いろいろと手をつくしておりますので、そういったことを見聞きしましたら、すぐに警察の方へ通報して下さい。みなさんのご協力をお願いします。
質問および意見内容
・共働きの家庭が多いんだから中学校もぜひ給食制度にしてほしい。
・小学一年生から優劣をつけて賞を与えるのは、単に競争心をあおるだけ。
・カギッ子の為の学童保育所を作って欲しい。

回答:掛川市教育委員会
お弁当の件については、こういった意見も時々耳にしますが、掛川市は今、校舎の新築、体育館の建設を進めることが第一で、給食の設備の方までは予算が回らないのが現状です。直接子供の教育に関わる方に集中して予算を回しています。給食は県下で78%位の中学校が実施しているので、今後給食になっていく可能性はありますが、差し当たっては考えていません。ただし、お母さんが、「お弁当を作るのが大変だから」というのは問題がありますね。お母さんが一生懸命作ったお弁当を、子供が食べるという関係も必要だと思います。だから、いい面もあれば、悪い面もあります。どちらにしても、当面はメドがたっていません。

賞の問題については、差別とかいう考えは毛頭なくて、励ます目的で与えています。発展的なとらえ方をしています。教育の中で評価というものはつきものですから、これだけの事をやって、この子がどれだけしてきたかと言う事を、絶えず診断してあげる所に本当の教育がある。昔は優良賞とかの、本当にできる子だけに与える賞が多かったけれど、そういった意味では励みのための賞というのは多くなってますね。賞の与え方が変わってきているのです。

それから、カギっ子のための学童保育というのは、静岡県ではまだないですね。保育園の方は充実してきてますが、校舎の新築とか体育館の建設の方がありますから、ここまではねえ…。ちょっとできない問題だと思いますね。それぞれにお勤めの事情もあるかもしれませんが、当面はやることがいっぱいあるので、そこまでは考えていません。
質問および意見内容
・掛川の一学級の定員は多すぎる。もっと減らして教師との密着度を高めて欲しい。
・親から見ても教育の締め付けが多いので、もう少し規制をゆるめてください。

回答:掛川市教育委員会
定員の問題につきましては、一学級何名というのは文部省の方から、最高45名という規定があって、46名以上になると学級を増やす仕組みになっています。これは、全国どこの学校でも同じですから、掛川市だけが多いという問題ではなく、全国的な問題ですね。

掛川の小学校の一学級平均は34.5人とかなり低い数字です。ただしこの数字は、掛川市では分校、いわゆる小規模校が多いのでこういう数字がでるわけですが、もちろん45人ギリギリの学級もあるわけです。人数が少なければ一人一人の子供に、もっと目が行き届きますから、私達はできるだけ人数を少なくしてほしいという要望を、常にしているわけです。ただ国の予算の関係がありますから…。

それから、教育の締め付けについては、学校というのは集団で教育をする場ですから、何もきまりがないというわけにもいきませんから、ある程度はないと集団を形成できません。ただし、これが強すぎて「何でもかんでもいかん」というのでは、いい教育とは言えません。教育するのに、あまり細かいことは問題ではないと思いますから、規制、規制でやるのは好ましくないと思います。これは程度問題です。ただし、今掛川ではそういうことはないと思いますよ。いい線いっているんじゃないかと思っていますが…。押しつけの教育ではなく一人一人の子供で言えば、「生涯学んで生きる」学び方を学ぶのが基本線だと思いますので、先生方の集まりでは、絶えずそういったことを指導しています。今後「おかしいじゃないか」と感じることがあれば、どんどん担任の先生が学校長に言ってもらって、お互いに納得のいくまで話し合ってもらいたいと思います。
質問および意見内容
・公のところは事務的で、人間味に欠ける。
・強制的な婦人会入会はやめてほしい。

回答:掛川市役所市長広報室
「公のところは事務的で、人間味に欠ける」に対する回答は、掛川市役所市長公室が代表で答えてくださいました。

人間らしい振る舞いは、仕事にも生かされます。公務員である前に人であれ。特に電話の応対や接待では、このことが大切です。ご指摘ありがとうございます。今後ともご意見をお寄せ下さい。

なお、婦人会だけは「この質問にはお答えできません」という返事が返ってきました。
婦人会の性格が「女性が一人の社会人として、あるいは地域の人間として、明るい地域づくりに参加する意識を持ってもらうために作られた団体」ならば、市民により理解してもらえるよう、説明するのが当然だと思うのですが…。もちろん人間ですから、時には感情的になるのも仕方がないことだと思いますが、市民の素朴な疑問や訴えには、率直に耳を傾けてもらいたいものです。ましてや、掛川市の婦人会の各支部を代表する人達なのですから、いやな事は避けて通るのではなく、毅然たる態度で臨んでもらい、積極的に問題解決にあたってほしかったと、非常に残念に思います。
毎日多くの市民が訪れる、掛川市役所
掛川市役所玄関から入って左側にある市民課の窓口。

新幹線掛川新駅設置について

二俣線始発の掛川駅(右下)があり、中央に東海道線の掛川駅がある。その奥は新幹線が通過し、駅南地区の開発が進む。
No.50号「掛川を斬る!」の特集に寄せて


「新幹線ができたら住民票を移転…」私もできることならそうしたいと願う者です。今、新幹線駅設置を推進している人は、メリットばかり言っているが、本当はデメリットの方が多いのではないか。

新幹線に乗りたい人は静岡・浜松迄行けばいい。年に数回(新幹線を利用することが)あるかなしのための、高額負担はごめんです。新幹線をとめて、掛川を騒々しい平均的な都会にするより、静かな緑豊かな地方都市でいいではないか。

若いときは都市でバンバン働き、老後をふる里に帰り、自然と人情に包まれて過ごすのも最高の贅沢ではないか。一戸十万円とも、一人十万円とも言われる寄付金は、各区長から隣保単位に降ろされ、半強制的になることを心配する者です。
(市内在住・匿名希望・主婦・45才)
新幹線掛川駅設置に対する編集室の考え
署名運動、寄附、その影で…


新幹線問題については、私も疑問を持っている一人です。新駅設置を推進している人達は、80何%の人が署名をしてくれ、市民は諸手を挙げて賛成しているかの様に言っている。全てを納得した上で、80何%の人が、本当に新幹線の駅を必要としているのならば、あえて反対するつもりもない。

しかし、最近いろんな所で話をしていると、この問題に関する話題がよく持ち上がり、その半数以上が反対意見である。それこそ、商店の人達は諸手を挙げて賛成しているのかと思っていたら、意外にも、商店主の反対意見も結構あって、びっくりしている。

署名運動の時には、寄付金の事には一言も触れず、メリットだけをあげているのだから、まさか寄付金で新駅を作るなんて思いも寄らなかっただろう。「この間、回覧板が回ってきて、半ば脅迫めいた内容でびっくりした」という声もある。


「新幹線」最近の動き


6月17日、地方公共団体としての掛川市の事実上の主導権を握っている団体である「新幹線掛川駅設置推進市民会議」(以下、市民会議)は、市内にある135各区内の隣組単位(1500組)で推進委員(1〜2名)を選任して、一戸あたり10万円あまりの寄付を割り当てて徴収するように決定したという。法人に関しては一法人あたり100万円である。

この会議であいさつをした榛村市長は、「今の二十より末の百」と長期的な視野に立って考えていただき、掛川市の発展につながる新幹線駅が成功するようにお願いしたい、と述べた。

一方、前日の16日に一部の市民が集まり、「押し付け寄付と超過課税に反対する市民の会準備会」が、強制寄付を監視するということで発足し、請願書運動を展開した。

請願の趣旨は、「長びく不況と高物価、重税で苦しい市民生活を無視して、新幹線掛川駅建設のために、掛川市負担分40億円もの財源調達を、押しつけ寄付と市民税、固定資産税の超過課税によって確保することは容認できません。」として、次の事項を市議会に請願した。

一、新幹線掛川駅建設にかかわる押し付け寄付をしないこと。
一、市民税、固定資産税にかかわる超過課税をしないこと。
一、新幹線新駅の財源捻出のため、公共料金の値上げをしないこと。


「寄付の割り当て」を法律から見ると…


最近のこの二つの動きを見ながら、法律に疎い私は、六法全書のページをめくり、地方財政法を読みました。底には次のように書かれています。

【割当的寄付金等の禁止】
第四条の五(一部略)
地方公共団体は、住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄付金(これに相当する物品等を含む)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む)するようなことをしてはならない。

この文面からすると、現在の掛川市の行為は禁止事項に近いやりかただなと思います。事実、この寄付金集めが、違法行為であるとして、自治省が県を通じて動き出しています。

「市民会議」が、市民の自主的な団体としながらも、昭和57年(1982年)12月19日の設立総会における議案や式次第、署名運動の趣意書案までもが、市役所の市長公室の手で用意されていたことや、市長、助役や市議会議員長等が名を連ねるということを見ても、首をかしげたくなるのは私だけであろうか。

その辺の判断は、今後、自治省や県が指導した結果を見ていけば、あきらかになってきます。(その指導によって、市民会議が現在と替わった方向を出すようになれば、現在の市の行為は違法と言うことになります。)


「新幹線」と「発展」とは


このように様々な動きが表面化してきた新幹線(新駅設置問題)ですが、私は原則的に、社会に対して、次のようなこだわりを持っています。

今回の市長の言う「掛川の発展は先を見よ」とのことから、「文明の発展」として新幹線そのものを見ると、時間の短縮は便利なことで、良いことと思われているようです。したがって、一般的な考えとして、「新幹線は速くて便利だから利用する」ということになります。

コンピュータでしかスピードを制御出来ない新幹線ですが、多くの人達は手軽に早く行動できるので、必要性の少ない要件でも(移動が短時間になったため)右往左往しなければならなくなります。これは、最近のロボット化や秒進分歩のコンピュータにも見られることですが、「メリット」という大きなカスミが、その裏にある「便利なこと、手軽なものが、人間を粗末にし、自由を束縛してしまう」ということを見えなくさせてしまっているのではないでしょうか。

物が豊富な使い捨ての社会の「発展」という錯覚は、現在も、何でも全てが早くて効率の良くなるように「お金」を求めて動いています。人々は「お金回り」が良く、物豊かな生活を良いこととして、疑うということすらなかなかしません。過去に何度も苦い経験を重ねていながらもです。

敗戦後に、石炭による繁栄がありました。それは過去のものとなり、次には石油が石炭の代わりを勤め、その結果、公害をまき散らし、戦争をも引き起こしながら、現在は危機が叫ばれています。次に頭を持ち上げたのは、人類の生存そのものを脅かしている原子力です。

石油や石炭を軸として作られた物豊かな現在、大量の電気を必要としなければ動かない新幹線を、もう一度、目先の欲のカスミを取って、「寄付」とか「発展」とかの問題の外で考え直さなければならないと思うのです。多くの犠牲者を出し人間性を無視した(進んできた)現代社会を、これ以上拡大することが果たして良いことなのか、それが「発展」なのか私には疑問です。だから、このことと「新幹線」も、同じレールの上で読者の皆様に考えてもらいたいと思っています。

(78%編集長 永倉章)