掛川を斬る!
78%KAKEGAWA Vol.50 1984年5月号掲載
まえがき
今月号の特集「掛川を斬る!」というタイトルは、ある電気店店主の言葉からヒントを得て取り組むことになりました。「ある大手のメーカーでは、若い人達を集めて、そのメーカーに対する欠点や批判を徹底的に言ってもらい、次の企画や新製品の開発に役立てている。78%でも、掛川をもっと住みよくするためにそんな企画を立ててみたらどうかね。」と助言をしてくださいました。

皆さんから戴いた意見を、ただの悪口に終わらせるのではなく、発展的な捉え方をしてもらえたらいいなと思い、今回の「掛川を斬る!」を特集してみました。取材をしていて、いろいろな意見がありました。「自分さえガマンしていれば、周囲は丸く収まるのだから…。」という消極的な考え方の意見や、「自分にだって欠点があるのだから、人の批判なんて出来ない。」「所詮、一人の意見なんて受け入れられないんだから…」という意見も。

もちろん、この特集を組んだからと言って、世の中や掛川市が必ずしも良くなっていくとは思いません。それでも何かをやっていかなければいけないと思うのです。受け入れる側も、どんな小さな意見でも真剣に受けとめてくれることを切に願います。
三猿主義は、何も美徳じゃない!
現在高校2年生になるS子は、1年生のときに親や教師に対してかなり反抗的になり、成績もどんどん落ちていった。母親から相談を受けた私は、「ただの反抗期だから、あまりやかましく言わないで、ほっとけば大丈夫」と答えました。でも、少し心配になったので、本人を連れ出してじっくり二人だけで話し合ったことがありました。その時私は「反抗するにはそれなりの理由があるはずだから、何でも聞いてあげるから思っていることを全部言ってみなさい。」と言いました。S子は涙を流しながら、心の中にあるものをすべて打ち明けてくれ、それから約2時間ほどじっくりと話し合いました。それがきっかけになったかどうかは分かりませんが、それからのS子は、はっきりと変わっていきました。いまでは、自分の目標をはっきりと持って前向きな姿勢で挑んでいます。成績もなんとか元に戻ったようです。早い内に話し合って本当によかったなって思っています。
日本人特有の三猿主義「見ざる、聞かざる、言わざる」を美徳と考えているとしたら、これは大きな誤り。傷口は小さい内に直さなければなりません。大きくなってからでは遅すぎます。(78%YK)
何でも薬づけでは、たまらない。
病院なんか、薬づけみたいに、薬ばっかりくれるんです。
診察して、ちょっと咳が出るって言えば、
何種類もわけのわからない薬をいっぱいくれて…。
(中年の主婦)
病院を替えた途端に元気に…
仲人の方が掛川市民病院に入院をしていて危篤状態になり、医者から「もうダメだけど、もし他の病院に移すなら移してもいい」と言われ、浜松の病院に替えたら「現在飲んでいる薬を全てやめてください」と言われた。その後、見る見るうちに回復し、今では退院して元気に歩き回っています。もうダメだと言われたのに、病院を替えたら直っちゃったって、どういうことなのかね。とにかく、薬づけで、ちょっと病気をしたり、怪我をすると、わけのわからない薬を何種類もくれる。
(中年の男性)
小さい子どもなんだから、
もっと配慮してほしい。
医療センターで予防注射をしてくれるんだけど、毎回ものすごい混雑するんですよね。小さい子どもを連れて行っても、医療センターの待合室が狭いもんだから、階段の所をず〜っと列を作って待っているんです。小さい子どもだとむずかってものすごく大変なんですよ。もう少し広い場所でやってくれるとか、回数も午前と午後の2回ぐらいにしてもらえると楽になるんだけど…。
(若い主婦)
公のところは、事務的で
人間味に欠ける。
市役所もそうだけど、病院なんかも電話の応対や接待が、すごく事務的で嫌な感じを受ける。もっと人間味がはしいですね。
(中年の主婦)
身近なものに対しては、
批判したがる性質を持っている。
掛川市民病院に関しては、以前からいろいろな話を耳にした。申し訳ないが私自身はまだ一度も利用したことがないので、何とも言えない。一度実際に体験をして率直な意見を述べてみたいとは思うのですが、何しろあまり病気をしないことと、午前中しか受け付けてくれないという事で、時間的に無理な面があって利用できない。どうしても病院にいかなければならないときには、藤枝のセントラル病院という所まで出かけて行く。ここは、午後6時までに入れば受け付けてくれるし、電話で前もって連絡しておけば、少し位遅れても融通がきき、その時間帯だと待ち時間も少ないので私にとっては好都合で、看護婦の対応も気持ちが良い。やはり公立ではないということと、医院長の医療に対する姿勢がそうさせるのだと思う。薬にしても「身体の害になるような薬は排除するべきと私たちは考えます。必要以外の薬は出していません。」という張り紙がしてある。

ただし、掛川市民病院に入院していた人のこんな意見もある。
「自分が入院していてつくづく感じた事は、誰でも身近なものに対して批判したがる性質を持っているのではないかということ。たとえば、菊川の人達は『菊川の病院はダメだ』と、掛川にやって来る。掛川の人達は『掛川の病院はダメだ』と、袋井や浜松に出かけて行く。袋井の人達も掛川や浜松に行く。また、浜松の人達は名古屋や東京まで出かけて行く。結局は、どこの病院に行っても同じ様なことが繰り返されているんだ。」

本人や家族にとって、病気が治れば良い病院であり、悪化すれば悪い病院ということになるようだ。これは病院だけではなく、すべてに通じて言える事だと思う。しかし、薬づけはやめてもらいたい。何も書いていない訳の分からない薬を何種類も飲ませられたのでは不安でしかたない。医薬品に従事している人に「カゼに一番効く薬って何ですか」って聞いたら「カゼに効く薬はないね。暖かくして、ゆっくり寝ているのが一番」と言われました。なのに、病院へ行くとごっそりと薬が渡される。熱もないのに何故?健康管理の方法や食事療法などは、医師の立場からは教えてもらえないのでしょうか。
田舎は安定しすぎて、
平凡な生活で終わっちゃう。
今まで東京にいて、つい最近帰ってきたんだけど、東京にいるときは、自分から働きかけなくても何かやることがあった。だけど、こっち(掛川)は自分から進んで何かをやっていかないと、本当にただ平凡な生活を過ごして終わってしまう。俺なんか家に入ってしまえば何も生活の苦労をしないで済むから、別にやらなければやれないで済む。田舎はそれだけ生活が安定し過ぎているのかもしれない。俺なんかそんな生活は絶対イヤだから、何かをやっていきたいと思っている。
(若い男性)
暴力団事務所が来るって、
本当ですか。
この頃、暴力団が来るっていう話をよく聞くんだけど、ぶっそうで恐い。
安心して暮らせる街にしてもらいたい。
(女子高生)
商店街に駐車場が少なくて、
警察はウロウロ。
掛川の商店街には駐車場が少ないから頭にくる。道路にちょっとでも止めようものなら、すぐに警察がやってくる。これじゃあ買い物したくったって出きやしない。何とかして欲しい。
(若い女性)
いいかげんにしてほしい、
強制的な婦人会入会。
私たちの地区では、強制的に婦人会に入れられてしまう。やれ集会だの、祭りの練習だのと言って、出ることばかり。こっちは忙しいんだから、とても出れませんよ。強制はやめてもらいたいものですね。しかも、その家にお嫁さんがいなければ、50才、60才になっても抜けられないんです。
(中年の主婦)
警察って、いったい何だ?
警察のやり方は、はっきり言って横暴だ。最近も、駅通りの区画整理で一方通行のところが解除されたり、新たに一方通行になった所や右折禁止になった所などがある。いつも通り慣れている道だから、いちいち標識なんか見るもんか。それなのに、その日か次の日の変わったばかり位の時に、もう取締をやっていた。警察は当然、そこに立って指導するか、前もって予告の案内看板を出すなり、何らかの方法で市民に知らせる義務がある。
(中年の男性)
新幹線駅ができたら、
住民票を移転
掛川に新幹線の駅が出来たら、すぐに住民票を他の町に移したい。だって、(市は)借金ばっかりなのに、これ以上借金したら、私たちの税金に降りかかってくるのは目に見えているもん。これ以上税金取られちゃたまらない。
(中年の女性)
親から見ても、
教育の締めつけが多すぎる。
学校の教育の締め付けが多すぎる。何でもかんでも規制、規制…。そうやって規制すれば、子どもが非行に走らないというような考え方が多すぎる。もう少し規制をゆるめてもらいたい。
(中年の主婦)
中学は朝が早いから、
弁当作りは大変。
掛川市では中学の給食がないんですよね。やっぱり中学ともなると部活などで朝早く出るので、その前にお弁当を作って持たせてやるのは大変なんです。そういう意味では、小学校より大変ですよね。共働きの家庭が多いんだから、ぜひ中学も給食制にしてもらいたいものです。
(中年の主婦)
小学一年から、
競争心が芽生えるなんて恐ろしい。
自分の子どもが小学校へ通うようになって感じることはとても多いです。学習の進み方なんかものすごく早くて、落ちこぼれが出るのが当たり前。一年生から競争心が芽生えるようなシステムになってしまっているんです。やたら賞がつくんです。たとえば、一年生で初めて紙版画をやったとすると、もう特賞とかがつくんです。本当は子ども達に「紙版画ってこんなに楽しいものか」っていうのを、わからせるためにやるのが本当で、一年生の時から優劣をつけるのはおかしい。このように、全てがそういう賞を与えるシステムになっているんですね。賞があるために、もらえなかった子どもの楽しみは半減してしまいます。
(中年の主婦)
カギっ子のための、
学童保育がほしい。
共働きの家庭がこれだけ多くなったのに学童保育がないのはおかしい。幼稚園を卒園すると、預かってくれる所がないので、学校から帰ってくるとほったらかしになってしまう。東京の方では、そういった子どもを預かる所も出来ているようなので、ぜひ掛川にも作ってほしい。
(若い主婦)
教育面でこんなに遅れているのに、
何が生涯学習よ。
教育施設とかそう言う面でかなり遅れているんじゃないかと思うんだけど…。掛川の場合、一学級40人〜45人ぐらいなんですよね、生徒が。他へ行くともう少し人数を減らして、35人定員とかを実施している所もあるんですよ。生徒が多くなればなるほど、教師との密着度が薄くなるんです。教師の数も、級外(担任以外の教師)の教師がいなくてギリギリなんです。体育館なんかも最近やっと建ち始めたという状況で…。教育面ではかなり遅れてるんじゃないですか。生涯学習を宣言している割には、お粗末な教育ですね。
(中年の女性)
なんで商店は、
あんなに早く閉めちゃうの。
商店(街の中心部の)が閉めるのが早くて、夜なんか真っ暗。学校の部活が終わって、帰りに何か買って帰りたいと思っても、7時頃だとほとんどの店が閉まってて、買い物も出来ない。
(女子高生)
都市計は、
道を広くするだけが目的なの。
都市計、都市計って騒いでいるけど、結局は道路を広くして、店舗がきれいになっただけじゃない。前と何にも変わっていないよね。掛川は商店街が分散されてて、東西南北に広がっているから、歩いて買い物を楽しむなんてことはない。必要な物は買うけど、買い物を楽しむなら、やっぱり浜松に行っちゃいますよ。
(若い女性)
評判の木レンガも、
雨の日は危険。
この間、雨降りに駅通りを歩いていたら木レンガがツルツルすべって、もう少しでひっくり返りそうになっちゃった。すぐそばで酔っ払いが転んでいたけど、あれは危険だよ。目の不自由な人や障害者ならなおさら…。アーケードをつけるか、何かしないと危ないんじゃない?
(若い男性)
駅南と駅北、対称的な街。
私は掛川を離れて3回目の春を迎えたが、掛川に帰る度に思うことがある。都市計画が進みビルが建っていく。私は、掛川がだんだん殺風景な街になっていくように感じる。何がどう殺風景になっているかと問われると、うまく答えられないが、とにかく私はそんな感じがする。都市計画にしても、何か無計画にやっているようである。工事が始まってから5〜6年経ったように思うが、駅前ばかりしか変わってないみたいだ。同じ駅周辺でも南側は田畑というか原野が多いのに道路だけが整備されている。北側はビルなんかが建っているのに、道路のあちこちに工事の残ガイが目に入る。本当にこれで都市計画なのだろうか。今まで都市計画をやってどんな利益があったのか。私は、単に一方通行が減っただけに思う。
(中年男性)
長男の嫁には、
いつも「家」がついて回る。
長男の嫁というのは、いつも「家」がついて回るから何も出来ない。何かあれば「あっちの嫁が…」って言われる。だから、部落の集会なんかに出ても「家へ帰って相談してから…」ということになる。
(中年の主婦)
よそ者扱いを、なぜするの。
この辺って、すっごい閉鎖的で、集団で固まっているというか、とにかく他から来た者を、よそ者扱いして寄せ付けないところがある。これじゃあ人口が増えるわけがない。私は浜の方から引っ越してきたんだけど、あっちの人達はもっと開放的で、おおらかです。
(中年の女性)
結婚式に
なぜあんなにお金をかけるんだ。
最近の結婚式は異常じゃないかと思う位お金をかけている。何百万だらぁ?それも祝い金を当てにしてやってるんだから、招待された方はたまったもんじゃない。みんなお金を包むのをやめて、湯呑み茶碗かなにかにすれば、あんな派手なことしなくなるらあ。結婚式場が儲かるだけじゃん、バカバカしい。
(若い男性)
ここまで言われると
辛くなっちゃう。
僕、日本中を季節労働者として渡り歩いています。市内の某会社に来て、早や二ヶ月。時代劇の「掛川の宿」のイメージを抱いて、勇躍(ゆうやく)してやってまいりました。…絶望、ただ絶望あるのみ。街がダサイ、暗い、活気ゼロ、時代遅れ、非文化的、スローテンポ、おまけに店は早く閉じ、物価高、物は古く、女はブス。ここは地獄海に面したヘソの緒じゃないか?旧東海道線だけが走る忘却のかなたの町だ。パチンコ台の汚いこと。スナックの無愛想。挙げたらきりがない。日本でも珍しい程。どうしようもなく、どうでもいい町。それが名前だけは粋な掛川市だ。僕の当初に対するご意見をお聞かせください。楽しみに待っています。
(男性)
掛川に住む掛川人としましては、ここまで言われると深くキズついてしまうんですよね。お手紙を拝見して、絶句、唖然…。確かに納得のいく部分もあるので、反論するつもりはありませんが、でも、住民の人柄は温かくて、とても義理堅い人が多いんです。これは都会では考えられないことです。こんな小さな街で78%がこれだけ長く続けられるていることだって、多分にそういう面が起因しているのです。都会人は冷たくて、薄情なんだから…。店員の無愛想だって、たまたまそういう所に行っただけのこと。どこの街だってそう言う店はいっぱいあります。その他のことも、都会を除けばどこも似たり寄ったりだと思います。だけど、一部の人達はそれを脱皮するために、いろいろと努力をしています。表面的な面だけでなく、掛川にいらっしゃる間に、いろいろな角度から掛川を見ていってくれたらと思います。良い面もいろいろあります。
私たちがこの企画を考えたのは、掛川市の悪い面を暴露するためのものではありません。この街をより良くするための発展的な観点から出たものです。その辺を理解して頂けたらと思います。
商店主から商店主に、
言いたいことがある。
消費者の中には、買い物を楽しむために、わざわざ掛川に来てくれる人もいるんだから、これからは浜松や静岡に追いつけるよう、楽しみのある商店街を作り出していかなくては…。昔ながらのやり方では、もうお客は寄りつかない。店頭のディスプレイひとつとってみても、商品を吊しておくだけではダメ。個々の店が店先をきれいにして、ディスプレイなども趣向をこらさなくっちゃあ。まずはそこから始めてもらいたいですね。
(男性)
緊急事態には、
同報無線を利用させて。
4月18日夜8時30分頃に知人から「今、手術をしているが血液が不足しているので、至急AB型の人を探して欲しい」という連絡を頂いた。そこら中に電話をかけたんだけど、AB型はなかなかいなくて、たまたまその日はわらび座の公演がある日だったのを思い出し、知人の人に頼んで呼びかけてもらったところ、3名程が病院に駆けつけてくれることになった。病院には合計60名位の人達が駆けつけてくれたそうであるが、不幸にもその子どもさんは亡くなられてしまった。こんな時にこそ市でも同報無線を流してくれたらと非常に残念に思いました。

今回のことだけでなく、私たちの知らない所でいろいろな緊急事態が起こっていると思います。私だってもしこの血が人のお役に立てるのなら、いつだって駆けつけていきたい気持ちです。せっかく市内全域に取り付けてあるのですから、もっと有効に使ってもらいたいと思います。火災、迷子のお知らせ、霜害の予報、市の行事連絡…大いに結構。それに、緊急事態が発生した時や、市民がどうしても流して欲しいと思うような時も、もう少し融通をきかせてもらえたらと思います。これは78%からのお願いです。
あとがき
先月号で「掛川を斬る!」に関しての投書を募ったのですが、投書が少なかったためインタビューで直接お話しをきかせていただいた意見もあります。すべて実名などを伏せて掲載致しました。皆様ご協力ありがとうございました。なお、これらの意見に対する感想や反論などがございましたらぜひ78%編集室まで投書なりご連絡をくださいますようお願い致します公平をきすために、すべての意見を次号以降で掲載させていただきます。

さて、掛川の商店街も最近になって一部の若手商店主の間で、もう一度足元を見つめ直して勉強しようという動きが出てきました。従来のお仕着せの商売から脱皮して、楽しい商店街作りを目指しています。一年後、二年後の掛川がどのように様変わりしていくのか楽しみでもあります。