掛川にみる「いいつたえ」「迷信」
Vol.29 1982年8月号掲載
掛川にも、昔から言い伝えられてきた言葉や諺は数え切れない程たくさんあります。良いにつけ悪しきにつけ、私たちは父や母、おじいさんやおばあさん達の口から様々な事を教えられ、一部では、未だにそれらのことを日常生活の中に取り入れているところもあります。
昔も今も多くの人達が迷信と判っていながらも、忠実に守り、あるときは躾の一端として、あるときは自分を勇気づけるおまじないとして代々語り継がれてきました。
言い伝えの中に、昔の人々の多くの知恵や多くの経験、あるいは目には見えない何かに縋って生きてきた証を垣間見ることが出来ます。しかし、そう言った言い伝えも今では影が薄くなってきたように感じます。
そのことが科学的でないから当然だと思う気持ちがある反面、そういったことを信じる素朴さというか、純朴さが消えていくことに一抹の寂しさも感じます。
読者の皆さんがどう捉えるかは別として、全てがただの言い伝えばかりとは言い切れない部分もあり、教訓や戒めとして考えさせられる部分もたくさん有ります。
そこで、78%では、掛川近郊のあっちこっちから探してきましたよ。いろいろな言い伝えがあるので、もうびっくり。今回掲載したものは、多分ほんの一例だと思います。細かくは調べられませんでしたが、幼い頃に両親や近所のお年寄り達からしつこく言い聞かされてきた言葉を、もう一度懐かしく思い返していただけたらと思います。
イラスト:こまいやすこ 文:やなせかずこ
言い伝え
雨の日に頭を洗うと禿げになる

頭の毛が薄くなって悩んでいる方、気をつけてください。「雨の日に頭を洗うとハゲになる」そうだから。どうしてもその日に洗いたいときには、「髪を洗うお湯(水)を手で壁にかけてから洗う」と良いそうだ。昔はアートネイチャーというものがなかったから、ハゲは深刻な悩みだったに違いない。


しびれ、しびれ京へ上れ。京の子どもに皆うつれ

よその家に上がって、ちょっとかしこまり、慣れない正座なんかすると、たちまち足がビリビリとしびれてくる。どうぞ足を崩してください。なんて言われても、時と場合によっては崩せないこともある。立ち上がった途端に、足の感覚がなくてヨロヨロなんてことよくありますよね。特に太めの人などは体重がもろに掛かっているので大変だ。そこで足がしびれた時には、足の親指を揉みながら「しびれ、しびれ京へ上れ、京の子に皆うつれ。」と言う。それじゃあ、京の子はどうするのかな?なんていらぬ心配もしてしまうが…。しかし、足の指を揉んでいると治りが早い。これっ、本当の話。


中日に仕事をしてはいけない

昔も今も生活が苦しかったために年がら年中仕事をしていたんですね。せめて春分や秋分の中日ぐらいは、仕事をしないで仏様の供養に行きなさいというありがた〜いおぼし召し。今じゃ、年がら年中休日ばっかりで、中日ぐらい仕事をしなさいって言われそうだ。「中日に仕事をすると「中(宙)に吊される」そうです。


いい夢が見たかったら…


文明の発達した今日でも、なぜ夢を見るのかはっきりした事は究明されていない。夢って、考えれば考えるほど不思議なものである。いい夢を見たときなんか、今日一日、何かいいことがありそうで、気分がグッと爽やかだ。そして、夢の中で「これは夢なんだ」と、意識しながら見ているときがある。
いい夢の時はいつまでも覚めないでほしいと願うが、嫌な夢の時は起きよう起きようするが、なかなか目が覚めない。こんちくしょうと思っても無駄である。夢を見る時間はほんのわずかな時間だというけど、そんな時はとてつもなく長く感じる。そして時には夢が現実となることがしばしばある。
嫌な夢が正夢にならないようにするには、
「朝起きたら誰とも口をきかない内に、南天の木の所に行って、見た夢を説明し、悪いことがないように祈ると良い」そうだ。(木のない人はどうするのかな?)
そして、いい夢を見たい時には
「寝る前に枕を三度叩く」と良いそうだ。


この近辺に狼がいたなんて、信じます?

犬によく似ていて、一日に数十キロも歩き、また何時間でも走り続けるという狼。日本では明治38年(1905年)頃に絶滅して、今では伝説の中でしか残っていない。今回の特集を組むきっかけとなった杉山さんのお便りの中にあった「夜、塩を買いに行ってはいけない」という言い伝えは、実はこの狼に関係しているんですって…。
狼は塩が大好きで、夜、塩を持って歩くと狼に襲われるんだそうです。昔はこの辺にも狼がいたんでしょうかね。あれは寒い地方に棲息しているものだと思っていましたが…。もっとも、今では絶滅してしまったので絶対にいないから安心です。でも、ほかの狼はウヨウヨしていますぞ、気をつけよう。


ヘビの嫌いな人へ…


ヘビのキライナ人間に、好きになる方法なんてあるわけがない。草むらや道ばたに縄などの長いものが落ちているだけで逃げ出しちゃうんだから…。まして、山道を歩く時なんか、まともに顔を上に向けて歩くなんてとてもとても…。そこで、ヘビのキライな人にいいこと教えてあげます。
「ナムチュウ大明神」を唱えながら歩けば、不思議とヘビを見つけないそうですよ。


客を早く帰らせるには…


嫌いな客や、客が長居をしてなかなか帰らなくて困ったときに、隣の部屋で(今流行のワンルームマンションでは見つかってしまいますが)
「ほうきを逆さに立てて、手拭いを被せる」そうすると、不思議に早々と帰って行くそうです。
そして、時には嫌な客が帰った後
「塩をまいておけ」なんてことをよく言いますが、この塩というのは、いろいろな場面で使われるので、なかなか重宝な物です。


塩の使い途あれこれ


お葬式から帰ったら、身体を清めるため
「本人の身体に塩をまく」
友人が亡くなってお葬式から帰ってきたら
「自分の履き物の上に塩を置いて」死との絶縁をする。

屋敷内に杭を打ったり、穴を掘ったりするときにも塩が使われる。塩を小皿にい入れて
「地下の神様、杭を打つので除けて下さい。どうかお障りのないようにお願いします。」と言いながら、その場に塩をまく。地下の神様に杭が刺さってしまったら大変だっ!後の祟りが恐ろしや(?)

逆に、塩を使ってはいけないときもある。
「つきたての餅に塩をつけて食べてはいけない」何故いけないのかと言うと、人の死後四十九日目に行う仏教の法要の時には、餅に塩をつけて食べる習慣的な儀式があるからだ。目出たいときに行うと縁起が悪いと言って嫌うのである。ある人は子どもの時知ってか知らずか、つきたての餅に塩をつけて食べたがために、母親にぶん殴られたそうである。そういう人の前では隠れて食べるように気をつけましょう。

ついでに、餅に関する言い伝えは、
「暮れの二十九日に餅をついてはいけない」二重苦とか苦餅とかの語呂合わせのようです。土地によっては福餅(29をふくと読ませて福餅)と言って、わざわざその日につくところもある。
また
「暮れの丑(うし)の日に餅をついてはいけない」という言い伝えもある。丑は火の神様と言われているので、この日に餅をつくと火事になると言われている。本当かなぁ〜?


厄年に根拠はない

厄年というのは、日常生活の中でも根強く残っている迷信のひとつである。土地によって違いはあるが、一般的には男性が25才、42才、61才、女性が19才、33才、37才を厄年と言い、特に
男性が42才、女性が33才が「大厄」と言われている。この大厄の前後の年が前厄と後厄。しかし、この厄年も特別な根拠がなく、女性33才は「散々」に通じ、男性42才は「死に」に通じる言葉ということから特に強調されたものだという。実際、この年代は家庭的にも社会的にもぐっと重荷がかかってくるため、肉体的、精神的な負担が多く、夫婦関係も中だるみになりがちなため、一応気をつけた方が無難と言うことです。


子どもや動物は天気予報官?!


お天気や地震、雷に関する言い伝えも多い。まずは雨の言い伝えから。

「ならい風(北西からの冬の季節風)が吹くと雨になる。」
「ヘビが木に登ると雨になる。」
「朝焼けは雨、夕焼けは晴れる。」
「虹が川をまたぐと雨になる。」
「月に輪(霧)がかかってくると雨になる。」
「星があんまりきれいすぎても雨になる。」
「下駄を飛ばして表が出れば晴れ、裏が出れば雨、横に立てば曇り。」
(これも言い伝えになるのかな?)
「東風が吹くと雨になる。」(風向きによって小笠町や菊川町の一部地域で、夜に波の音が聞こえたりするときがある。こんな日の翌日には必ず雨が降る。)
「夕方、子どもが騒ぐと雨が降る。」

地震や雷などの言い伝えも少しありました。

「ねずみが騒ぐと地震が起こる。」
「一雷はわざをする」
(雷が一回だけしか鳴らないときには災いが起きる)
「ナマズが暴れると地震が起こる。」
「ヘビを見ない年は地震が起こる。」


これらの言い伝えの中には、実際の経験や統計でも正しいとされているものもあるという。科学的、気象学的に分析すればその理由が出て来ると思うが、昔の人はよく観察したものだと感心する。


お見合いにお茶は禁物?と婚期が遅れる原因。

年頃になると、日頃の行いがよっぽど悪くない限り、必ずひとつやふたつお見合いの話が転がり込む。お見合いをしてうまく話がまとまった時には仲人の所へ挨拶に行くが、この時お礼として持っていく手土産に、お茶は出来るだけ避けた方が良い。お見合いにお茶は禁物だ。掛川はお茶の産地だからといって持っていっても、相手によっては突っ返されることもあるそうだから気をつけよう。
お茶は「茶化す」とか「お茶を濁す」に通じるからだそうだ。だから、お見合いの席にもあまり好まれないようだが、断りたいときにはよいかもしれない。返事を問われたらお茶を出してやればいい。しかし、相手がこの言い伝えを知っていればの話…。

女の子の結婚については、両親にとって悩みの種のようだ。10年位前までは22〜23才になると、本人もかなり焦ってきたようだけど、最近では男性の方がやたらに焦っているように感じる。女性は賢くなったのか、少しでも長い間自由を楽しもうという傾向が強くなってきている。現在ではあまり通用しないと思うけど、婚期が遅れるたら、次のようなことが原因しているのかも。

「台所からゴミを掃き出すと婚期が遅れる。」
「お皿の上で物を切ると婚期が遅れる。」



お金持ちになれる人間は…身体に関する言い伝え


「耳くそがたまる人はお金もたまる。」
「耳たぶの厚い人はお金持ちになる。」

とか言われていて、あまり根拠はないみたいだけど、お金持ちの人を見ると確かに耳たぶの厚い人は多い様に感じる。

ところで、耳がかゆくなったことありますよね。
「朝の右耳、夜の左耳良いことなし。」と言って、朝右耳がかゆくなったり、夜左耳がかゆくなると、いいことは無いそうだ。逆ならいいのかな?

「夜、爪を切ると親の死に目にあえない。」(夜+爪でよつめ→世を詰める→寿命を短くする→長生きしない、につながるのだそうな。)

「ざるをかぶると背が伸びない。」(食べ物を入れるもので遊んではいけないという戒めのようですね。)

「ミミズにおしっこをかけるとおちんちんが腫れる。」よくいますよ!墓石に小便をして三日間入院したなんて人もいましたね。その逆に「子どものおちんちんが真っ赤にはれた時にはミミズを水で洗ってやると治る。」そうです。不思議に治るそうですから、一度試してみては?害にはなりません。


くしゃみ

「いち誉められ、にくまれて、さん惚れられて、よかぜひく」くしゃみが出たとき、1回で終われば誰かに誉められ、2回出たら誰かに憎まれ、3回出たら異性に惚れられたということ。4回以上出たら、風邪をひいた証拠だから気をつけようね。
ところで、全国的には
「一ほめられ、二そしられ、三くさされ、四かぜをひく」というのが本当みたい。(くしゃみ3回、ルル3錠なんてのもあったなあ))もともとくしゃみが出るのは不吉という考えがあって、江戸時代には、くしゃみが出たときに「こん畜生」とか「くそくらえ」と唱える習慣があったようで、明治の頃まで下町の職人などの間で残っていたようです。でも、夜に外を歩いている人達の中にも言う人がいますね。今でもこのことが残っているのでしょうね。


一日の生活の中では…


一日のはじまりは楽しくなくてはいけません。慌てず、騒がず、ゆったりと…。朝から慌ただしく出かけて行くようではいけませんよ。
「女の子は朝、針を持ってはいけない。」これは前の日からちゃんと準備をしておけという戒めの言葉です。朝はゆっくりとお茶でも飲んでから出かけたいもの。

お茶と言えば
「茶柱が立っていたら、人に言わずに黙って飲むと、何かいいことがある。」そうだから…。そしてお茶を飲んだら家の中をぐるっと見回してみよう。
「朝の蜘蛛が手を広げていたら、お客さんが手土産を持ってくる。」もうこれでバッチリ一日が楽しくなっちゃうというわけ。「朝の蜘蛛は殺すな、夜の蜘蛛は親のかたきと思え。」朝から殺生するなという意味だけど、夜ならいいの?日本に棲息している蜘蛛はほとんどが益虫だから、やたらに殺生しないで下さいね。


猫、ネコ、ねこ


昔から
「猫を殺すと七代にわたってたたる。」とか「猫はものを言ったり、死人を踊らせたり、人を食い殺して、その姿とくに老女の姿に化ける。」とか「猫は九回生まれ変わる。」と言われている。これらは猫の持つ陰性の性格が“化ける”と思わせる大きな要因になっているようだ。
たとえば、過剰なまでに多くなった車社会での、今様な言い伝えに、道路の真ん中で猫が轢かれていても、可哀想だといって道ばたに寄せてやったりすると、
「その人に猫が乗り移る」と言って嫌う人もいる。どういうわけか猫は親切にしてあげた人にたたったり、乗り移ったりするそうである。暗闇の中で不気味に光る目を見ていると、なんとなくそんな気もしないではないが、あまりにも人間に接近した生活をしている猫に対する反発として猫の嫌いな人達が口にする言葉なのだろう。


家の中の父親、母親…

「ご飯を食べてすぐに寝ると牛になる」とよく言うが、それでは父親のことをカミナリおやじと何故言うのか?「休みの日になると一日中、あっちでゴロゴロ、こっちでゴロゴロ…」(お後がよろしいようで…あんまり関係なかった?)
ところで、父親は一家の長である。毅然としている父親は見ていても頼もしい。昔から
「玄関の敷居に乗るな」と言われているが、玄関の敷居はその家の主人の頭部のこと。だから、敷居を踏まれると、その主人が外に出て胸を張っていても、人から頭を押さえられてしまうということの意味なので、家族の協力が必要なんですね。ちなみに、裏口の敷居は母親の頭を指しているそうです。


泣きやまない子には…


私が小さい頃に、小さな子が夜泣きをして、いくらあやしても泣き止まないときに
「ナタを紙に包んで枕のある布団の下に敷く」ということを聞いた。不思議に泣き止んだそうであるが、今は家庭内暴力が横行し、その年齢層もだんだん低くなっていると言うから、あまりやらないほうがいいかもしれない。夜中に子ども急にがナタを振り回しでもしたら、まっつぁおだもんね。


職人の道具はまたぐな…


「大工さんの道具(砥石)を女性が跨ぐと、砥石が割れる。」は大工職人の代表的な言い伝えで、他にもノコギリやのみなど刃物に関する言い伝えも多く、その解釈も諸説ある。知らない人(女、子ども)が現場に来て道具を壊されたり怪我でもされたら大変だから、職人の心構えが大切。歩くところに道具を出しっ放しにするなという戒めでもあるようだ。

「理由も無く眠くなる時は、知っている人が死ぬ。」よくわからないけど、予知能力?

「目にものもらいが出来かかったら、誰にも判らないうちに畳のケバでつつけば大きくならずに知らない間に治る。」試したことはないけど、畳のケバはい草。い草は薬草として江戸時代までは使われていたようなので、そういう効果もあるでしょうか?

「左手は下を拭くので、半分に割って物を上げるときには右手の方の物を上げなさい。」意味判った?ところで右手で拭くひとはどうするのかな…あいてはどちらで拭くのかわからないし…悩んじゃう。

「恐い物の前を通るときは、親指をかくして通れ。」親指は両親のことを指す。だから「霊柩車を見たら親指かくせ。」などとも言われていますね。いまだに大人になってもやっている人がいますが、どちらも科学的には根拠はないようです。


UFO見たり流れ星…

「あっ、流れ星だ!」と指さし、思わずニカッ!今年の夏は昨年同様、たくさんの流星が夜空を彩ってくれそうだ。特に8月11日から12日の明け方にかけてピークを迎え、一時間に200個くらい流れるそうだがら凄いですね。一分間に3個以上の流星が見られるんだから、見ない手はないよ。
「流れ星に願いをかけると願い事が叶う」って小さい頃によく聞かされた。流れ星が消えない内に、必死に願い事を3回言い続けなければいけないのだが、見ている間に消えてしまうのでとても無理。そのため願い事が叶ったためしはないけれど、夜空に輝く星を見ていると、日頃の忙しさも忘れ、その雄大さにただ感心するばかり。でも不思議ですね、何故宇宙空間があるのでしょうかネェ〜。


新しい物…履物や衣服に関する言い伝え


「新しい履物をおろす時、申(さる)の日におろすと人が去る。」“申”を“去る”にかけたと思われますが、人ではなく他の意味で、魔物が去るとか、邪気が去るでもいいんじゃないかなと思うのです…。
「履物をおろしてすぐに、履いたまま便所へ行ってはいけない。」そうすると鼻緒が切れたり履物が欠けるというのですが、昔の話だから下駄のことだと思うけど、家の外に便所がある家も少なくなったから、今はあまり言わないんじゃないかな?

着物にもこんな言い伝えがあります。
「夕方(暗くなってから)に新しい物をおろしてはいけない。」靴だけでなく着物もいけないそうです。どうしてもというときには、おろしたてでないように少し汚していけばいいそうです。昔は釜戸の炭を付けたりしたようですが、どちらにしても面倒ですね。
「洗濯物は必ず一度たたんでから着る」たたまず服を着るのは死んだ人の死衣装なんだそうです。よく取り込んだままの服を着ることもある人もいますが…。

「新しい服を着るときは産士(うぶすな・氏神様)の方を向いて着なさい。」昔は地元の人達が八百万の神などを氏神様として祀っていましたが、現在では氏神様がどこにあるのかも知らない事が多いですね。
「帯を切ると、長い病気にかかる。」命を縮めるとも。
「衣類を作るとき、未(ひつじ)の日と巳(み)の日には裁断してはいけない。」未の日に裁ったものを着ると“袖に涙が絶えない”そうです。巳の日に裁ったものは“身を切る”のだそうです。もし、どうしてもその日に必要ならば、裁ち切れを川に流せばいいそうです。


重箱の返し方

快気祝いや結婚祝いなどで重ねてあってはいけない時に
「重箱で赤飯など何かをもらったときは、重箱を洗って返してはいけない。」二度あってはいけないのでそのまま返すそうです。場合によっては洗うこともあり、その時にはお菓子とか半紙(神に通じる)などを入れるようにするそうです。実際の所洗わずに返すのは相手方に失礼な気もしますね。

また、快気祝いに
「重箱で何かをもらったときには、返すときに豆を入れて返す。」そうです。まめになるとかまめに働くなどに通じるそうです。


その他いろいろな言い伝え

「お茶を摘むなら根葉からお摘み、根葉にゃ百目の目方がござる。」摘みにくいところから先に根気よく摘みなさいということですが、新茶だと柔らかい上の方の新芽を摘むのでそんなことすると怒られそうですね。

「からす鳴きが悪いと人が死ぬ」これもよく耳にしますね。カラスが集団で鳴きながら空を回っているとその付近で人が死ぬとか。予知能力があるのでしょうか?

「夜、口笛を吹くとヘビを呼ぶ。」これも諸説あるのですが、蛇(じゃ)は邪気に通じるので悪い物を呼び寄せるなどという解釈もあるようです。

「夜、小銭を数えると泥棒が来る。」昼間数えれば問題なさそう。

「つばめが巣を作るとお大臣(金持ち)になる。」これもよく言いますね。“幸運を招く”とも。巣を作るように棚を付ける人もいるようです。

「朝、お汁をこぼすと何か悪いことが起きる。」まあ、その時点で起きていますけど。

「一膳飯は食うものでない。」葬式の時の作法でありますね。茶碗にご飯を盛って箸を立てる一膳飯。だから普段少しずつでも二度以上にわけて食べろということです。

「逆さ水をしてはいけない。」亡くなった人に湯灌(納棺前に死者を湯で拭くこと)をする時、水の中にお湯を入れるのが習わしになっているので、普段はお湯の中に水を入れるようにするということです。

「お嫁さんが家から出た後や、葬式の後には掃き出す。」お嫁さんや死人が二度と帰ってこないように、箒で家の中から外に掃き出すようにするそうです。

「桜の木で碁盤や将棋盤を作ってはいけない。」昔、桜の木で作った盤で打っている時にいさかいで殺し合いがあったからだそうです。

「縁談は不祝儀(葬式とか法事・年忌)の時に出た方が縁起かいい。」

「生の味噌をご飯のおかずにして食べてはいけない。」美味しくて何杯もおかわりするので、身上がつぶれるそうです。

雨の降った後に山の方に白い煙に見える靄(もや)が出るときがある。そんなとき、子どもに向かって
「あの山でやまんばが火を焚いているから、いたずらをするとやまんばが降りてくる。」と言った。ところで、やまんばって何者?(山奥に住んでいる老女の妖怪だそうです。恐ろしそう。)



しかし、言い伝えというのは、まったくたくさん有るものですね。今回紹介したのもほんの一部。おさわり程度じゃないかと思います。