涼を求めてin 掛川

Vol.4 1980年7月号掲載
夏だあ!暑いなあ。じっとしてても汗ばんで来る。そんなわけで涼しいところに!今月号は「涼を求めて」レジャーガイドと行こうか!
(文:やなせかずこ)
   居尻キャンプ場
 原野谷防災ダムより北に2. 5キロほど行くと「居尻キャンプ場」がある。このキャンプ場の丸太で組んだ建物の中には、火炉が6カ所、昔懐かしいポンプ式の井戸が2台設置されている。建物の外にも井戸が3台ばかり設置されてはいるが、こちらの方はちょっと役立たず!いくら力んでも水が出てきませんのでご用心ご用心。キャンプ場の入り口には多分ヒノキだと思いますが、こちらもちょっとしゃれた建物のお手洗い。

 私たちが写真を撮っている間に川の岸辺では、先客の家族連れが一生懸命、石やブロックを積んでかまどを制作中。そのうちあたりに一面に、いいにおいが充満してきた。ちょっと取材してこようということになり傍らに近づくと、何と鉄板の上で肉や野菜がジュージューと音立てて反りかえっているではないか。主人らしい男の人が「おいッ!ビール早く持ってこい!」と怒鳴っている。となりのおひげのおじさんうらやましそうにビールと焼き肉をにらめっこ。

「今日は!」と声をかけるとみんんな一斉に振り向いて「何だ、こいつらは。」と言ってるような疑惑のまなざし。(何も取って食おうってんじゃないんだから、お願いだからそんな目で見ないで。)だけど、話をしているあいだ中、鉄板の上の焼き肉や野菜が気になって話半分。御前崎より知人同士が集まって4家族合同で遊びに来たということ。内山さん一家(ご主人と奥さん、子ども1人)と、沢入さん一家(ご主人と奥さん、子ども1人)と、藤沢さん一家(ご主人と奥さん、子ども2人)。4家族で合計12名。ワイワイがやがや楽しそう。このキャンプ場の感想は「きれいなところで、自然に囲まれて最高に気持ちがいい。」とのこと。

 子どもたちも自然の中で思いっきり暴れ回っている。川の水が澄んでいるし、周りは山にかこまれ緑一色。ここには公害もなければ、交通事故の心配もない。思いっきり暴れたあとはバーベキューをたらふく食べて…。健康的だな〜ぁ。「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい。」どこかのCMでやってたっけ。帰り際、車のそばでヒソヒソばなし。「私たちも幕の内弁当でも食べようか?」「ここはやめようぜ、差をつけられるからなあ。」こっちだってお腹が食べ物を要求しているのに。

楽しい昼食はバーベキュー!
共同の炊事場
自然に囲まれ広々している
   明ヶ島第1、第2キャンプ場
第1キャンプ場

 おなかをすかしながら、次は明ヶ島キャンプ場。大尾山へ登っていく道を走っていくと、途中で大尾山と明ヶ島へ行く道が二股に分かれているところがあって、明ヶ島にいくには左の道に入っていく。市道の西の谷線=林道明ヶ島線を14キロほど北上すると明ヶ島第1、第2キャンプ場の2カ所が設置されている。

 山深い静かな林道には、途中にいくつもの沢や川が流れている。ここは下界と違って空気が澄んでいるし、涼しくてもう言うこと無し!ただし車の運転は慎重に。特別危険なところではありませんが谷におっこちたら大変。生きて帰れませんよ。でも安全運転でいけばよっぽどヘタな人以外はまず大丈夫。途中民家は数えるほど。

 明ヶ島地区はヤマメの放流で知られているところ。キャンプ場の施設は昨年の7月に一部が整備され、一般開放している。市が国の補助を受け、森林総合利用促進事業として昭和53年から55年までの3カ年計画で設置しているもので、第1キャンプ場には火炉・水道、電気をはじめ、総合管理施設も整っており、総合管理施設には宿泊施設は整ってはいないが、一般開放にしてみんなの休息の場に使ってもらうとのこと。全面的にオレンジ系統の色が多く使ってあり、明るい雰囲気を醸し出している。知らない者同士が自然にとけ込んで談笑できそうな場所。

 さて、第2キャンプ場へ行くには、第1キャンプ場より北に向かって200メートルほど行くと、第2キャンプ場入り口と書いてある。標識を左に折れて後は一本道。途中、「本当にこんな方にキャンプ場があるのか?」と疑問を感じるが、くじけずにそのまま行ってください。必ず次の山を登り切ったところにあります。その先は行き止まりになっているのですぐに分かるはず。

 ここの山には2軒だけ家があり、その2軒とも廃屋(?)になっている。片方は茅葺き屋根の家で、脇屋の方には耕耘機などもそのまま置いてあり、すぐ家の前の広場は草がボウボウに生えていて不気味さ一層を増している。涼を求めて行く人には最適な場所。もう一軒は2階建てだけれど廃屋にするには非常に惜しい。回りもそんなにまだ荒れてなくて、つい最近まで人が住んでいた気配あり。庭には子供のいたずらがきした絵がまだ薄く残っている。住民はいったいどこに消えたのか?ちょっとミステリーじみてくる。

 キャンプ場の横は木が生い茂っていて近くの小川のせせらぎが聞こえてくる。火炉・水道・便所の設備はしっかり整っている。第1キャンプ場と第2キャンプ場の利用を希望する方は、明ヶ島の堀井金深さんまで。また、テントの貸し出しも5〜6人用が20張り用意してあるとのこと。それから掛川市では、大尾山を中心に明ヶ島キャンプ場と居尻キャンプ場を結ぶ遊歩道をつくる計画だとか。緑と川に囲まれて、山を愛する人も愛してない人も今年の夏は、涼を求めて、レッツゴー!ヤミツキになりそう。

第2キャンプ場
茅葺きき屋根の民家
第2キャンプ場の共同炊事場
   松葉の滝
本当に滝はあるのか?!
東海一の大飛瀑

 粟が岳の西北のふもとにある松葉の滝。マイカーの方は倉真温泉を隔てて奧に進んでいくと「松葉の滝入口」といういう標識がある。ここから先は車ではいけないのでどこかの空き地に車を停めて徒歩で行ってください。徒歩の方は粟が岳から約30分。

 中松葉で車を止めたら近所のおばさんが出てきたので「おばさん、松葉の滝へ行きたいんですが、ここから遠いんですか?」と尋ねたら「なあに、松葉の滝ならすぐそこだよ。」と言われ、気を良くして歩いていった。途中、何カ所かで滝の落ちてるような音が聞こえ、期待に胸を膨らませ、そのたびに急ぎ足になる。しかし、どこまでいっても滝らしものは見当たらない。道のずっと下の方で川が流れているだけ。山道は普段歩き慣れていないので息がぜいぜい、ハアハア。「すぐそばなんて嘘ばっかり。」恨み、辛みをブツブツ言いながら、今さら引き返すわけでもいかず歩いていくと、今度は道がもっと細くなり完全なあぜ道になる。途中、赤い実をつけた野イチゴが何本もあり、大きそうなイチゴをつまみ食い。「うーん、これはいける。」2つ3つ4つ、「やめられない、止まらない。」

 50〜60メートルも歩くと小さな丸太の橋がかけてあり、目の前に2坪ぐらいの建物が建っている。ここまでくるとぐっと気温が下がる。何のための建物なのかさっぱりわからない。節穴からのぞくと中にござや土瓶が置いてあり、どういうわけか十八番ラーメンの段ボールが置いてある。建物の外壁にはいろいろな落書きがしてあり、住所や名前、相合い傘などがぎっしり書き込まれている。もしかしたらあなたの知っている人の名前か記してあるかも。

 滝までの山道は、杉の樹木にはさまれて薄暗い。すぐそばに流れている川のせせらぎの音を聞きながら前進すると聞こえる、聞こえる滝の音。掛川市の商工パンフレットには「不動の滝ともいわれ、まさに東海一の大に飛瀑(高いところから落ちる滝)」と書いてあったので期待していったら、ちょっとがっかり。「どこが東海一なのか?」という感じがしないでもなかったが、でも真夏の暑い盛りに、山登りをして汗を流した後は、滝のそばでお弁当をひろげてなんて、最高の気分が味わえると思うのですが。また観光化されていないので秘境の地に行ったような気分を味わえます。行きは遠く感じますか帰りは楽なもんです。徒歩で片道15分か20分ぐらい。

細い山道だから気をつけて!
秘境の地だから涼しいよ〜
   七ツ釜道場
昔、竜神がここに住んでいたという滝壺。

 日坂峠のトンネルを抜けると信号があり、そこから西に向かう細い道がある。入り口から100メートルから250メートルほど行くとお茶工場がありここも分かれ道があり、そこを左りに折れてゆったりとした坂道を上っていくと、「七つ釜道場入口」という道路標識がある。入り口に車をおいて、テクテク(急な上り坂なのでテクテクというより、ハアハア)50メートルぐらい歩いていくと登りきったところに道場があった。入り口に「七つ釜道場由来」が書いてある。「遠州七不思議の一つ。この池は竜神の住まいなりとて諸人立ち入りを得ざり由。いろいろ不可思議なる伝説があり、云々。」

 
 少し奥に行くと、大木が倒れてちょうど橋のようになっている。でも危険ですので決して上に乗らないように。下は10メートルぐらいの谷底になっています。七つ釜と呼ばれる滝つぼへ降りていく小怪は、雨が降った後なのでつるつる滑って怖い。「このまま落ちたら、大けがをするなあ。もしかしたら打ちどころが悪くてこのまま永遠に帰らぬ人になってしまうかもしれない。」などと思いをめぐらしていると、なぜか無事に下についてしまった。

「なあるほどここが昔、竜神の住んでいたところか。」何となく雰囲気が薄気味悪い。小雨が降っているし、雷が鳴り出すし早く帰りたい。滝つぼは流れが強くお天気が良い日は、水が透き通っていてとてもきれいとのこと。あいにく今日は雨が降った後、水が白く濁っていて非常に残念。4つめの滝つぼのまわりに龍が遊んでいたのか?タイヤが数本流れている。もう少し奧に進みたいんだけと、ここにも倒れている木が1本あって道をふさいでいる。落ちたら困るので好奇心を抑えて引き返すことにした。(嘘ばっかり!本当は早く帰りたくてうずうずしていたくせに!)だいぶ涼しくなりました。七つ釜探訪はこれでおしまい、おしまい。

伝説の地はこの先に!
ここを登りきった所にある