陶房「土ぼけ」
Vol.1 1980.5月号掲載 
 桜木の山奥を仕事場にして、手作りの陶器作りに励んでいる「土ぼけ」のご夫妻。ご主人は会津焼きの本場、会津若松のご出身。幼少の頃よりアルバイトで陶器を制作していたとのこと。奥さんは横浜出身。お二人は愛知県の瀬戸焼で有名な瀬戸でお互いに陶芸を通じて知り合った。現在は、自由にお互いのアイデアを織り込んだ陶器作りにはげんでいます。

 「土ぼけ」の陶器は、普通の陶器より土の中の気泡が多いので熱いものを入れてもその熱が外側に逃げにくく、なかなか冷めないのが特徴です。また、色がきれいにでるので、可愛らしいものから落ち着いた雰囲気のあるものまで自由自在にできるのも特徴。

その形も変化に富んでいて手作りの良さがよく表現できています。たとえば、ナプキン立てにはかわいい人形が付いていたり、コーヒーカップやスープカップの表面には人形の顔の絵が描いてあったりして、使っていて楽しく親しみがわいてくるものばかり。これらは、実際に喫茶店や飲食店などで使われており、先日なんかは、「お店の名前を土ぼけにしたいのですが。」との問い合わせもあったそうです。

 掛川の加茂荘の天ぷら皿、喫茶店のぎょくろの灰皿やシュガーポットや、浜松の中華料理チェーン店の五味八珍の容器はすべて土ぼけの特注品だそうです。遠く関東方面から訪れる方々もいるそうでです。量産品にはない雰囲気と、ひとつひとつ手作りされた素朴さが人気を呼んでいるようです。