竹細工 伊藤千章
Vol.4 1980.7月号掲載 
 今月登場するのは、掛川市長の「定住圏構想」に共鳴して島根県から掛川市居尻の山奥に移住してこられた伊藤さんです。前職は教師で、三年前に竹細工に魅せられて、この道一筋でいこうと一大決心。市外の居尻の古い農家を購入し、その自宅の裏にある二階建てのプレハブを仕事場にして、手作りで竹細工の制作に精を出されています。

 花かご、弁当箱、ビクなどをすべて手作業で一つ一つ丹念に編み上げていく作業。いまでは竹製品も機械化されゆくなかで、
「機械では出せない本物の手作りの良さをだしていくんだ。」と語る伊藤さん。

 新しい編み方でビクをひとつ作るのに、一日一個がせいぜい。ちょっと凝った物だと、模様を研究し工夫しながら制作するので一つ出来上がるのに一週間ぐらいかかってしまう。「家内が土日に外に勤めに出ているので何とか生活ができる。」ここにも縁の下の力持ち。よき協力者の奥さんの力も大きい。

 販売は「葛城の北の丸」でコーナーを設けていていただいて展示即売をおこなっているが、あとは人づてで注文があった物を制作している。現在、うちわとか身竹を使って蓋付きの箱を作り、周りに和紙を施し、柿渋で着色したものを研究中とのことです。去る四月二十四日〜二十九日に浜松市にあるギャラリーに於いて、人にすすめられながらも個展を開き、竹細工作家としてはめずらしい個展ということで成功を収めました。