紙塑人形 伊藤絹子
Vol.11 1981.2月号掲載 
 ちょっと珍しい紙塑(しそ)人形を作っている市内居尻に住む伊藤絹子さん。作り始めて四年ちょっと。誰に教わるのでもなく本を唯一の師として、毎日の家事のかたわらに独学で勉強し制作している。本来であれば、和紙の原料になるコウゾやミツマタを梳いて紙塑人形を作るのだが、手間がかかりすぎて一体作るのに一ヶ月以上もかかってしまうそうで、伊藤さんの場合は現在紙粘土を使って作っている。

 最初に紙粘土で形作った人形を、石膏で型をとる。型どりした石膏の中に紙粘土をつめて人形の原型を作っていく。取り出した人形に和紙を貼り、修正しながら肉付けしていきながら仕上げていく。紙粘土の場合少しもろくなるけれど、それでも和紙を二十枚位重ねながら貼り合わせていくので、軽く落とした位では割れない。手で持った時、和紙の暖かさが伝わってくる。

 「家事のかたわらに作っているでしょ。だから、なかなか思うようにいきませんね。私の場合、やはり家事を重点においていますので…。始めてから四年ぐらいですが、実際には外に働きに出ると制作はほとんど出来ませんでしたね。これからもっと勉強して、真剣に取り組んで、売れるような人形を造っていきたいと思っています。」と語る。

 手作りの人形には大量生産された人形には無い表情がある。ひとつひとつの作品に、それぞれちがう表情があり、いつまでもあきがこない。伊藤さんの作る紙塑人形は日本古来の和紙を材料にしているにもかかわらず、その中に現代感覚があふれた作品が多い。これからもいろいろ研究されて多くの作品を作っていってほしいとおもいます。