手作り大凧 鈴木常吉
Vol.9 1980.12月号掲載
 葛川にお住まいの鈴木さんは、手作り凧を趣味で作り始めて四十年になるという。早速、自宅裏の倉庫に案内された。扉をあけると天井から大きな凧がぶらりと掛けられていた。この大きな凧は、たたみ四畳半の大きさだ。一週間かけて、紙貼りから絵付けまですべて鈴木さんの手によるもの。

 この大きな凧を引く凧糸も千メートルという長さ。編むのに三年かかったという。雨が降って仕事(庭師)が出来ない日とか、休みの日にせっせと編んだとのことで、いくら引っぱられても切れないという丈夫な凧糸だ。

 この凧は揚げるときブカブカと上がっていくので、別名ブカ凧と呼ばれていて、男児誕生のお祝いの時に「祝い凧」として揚げる。凧を揚げるときには大人が五〜六人がかりで行う。手袋ははめていてもすぐにすり切れてしまう。揚がった後、ただ凧糸を持っているだけでは引きずられてしまうので、腰のところで支えるようにして持つのがコツだそうだ。

 鈴木さんは多趣味で、凧の他にも釣り竿も手作りしている。そして、祭りの屋台で打ちならされる太鼓の打ち手としては掛川一の名人。凧に描かれる絵も素晴らしくすべてが玄人はだし。「趣味が多すぎて家の衆がワアワア言わあね、あははは。」と鈴木さん。それでも好きな物はやっぱりやめられないのです。