表具師 山華堂
Vol.6 1980.9月号掲載
 昔は経師屋(きょうじや)今様にいうとインテリアの業種に入る表具屋。巻き物、軸物、ふすま、額物、衝立、屏風などを仕立てることを主な生業としている。

 松尾町にある「山華堂」は伝統ある表具屋さん。使用する和紙や糊にこだわりをもつ。和紙は人間国宝的な手漉き和紙職人のものを自らの目で確かめて仕入れ、三〜四年ねかせておく。

 山華堂のご主人曰く「和紙は生きているんです。三〜四年ねかせておくことにより非常によくなじんでくるんですよ。うちにある和紙は大部分が二月頃の寒い時期に漉いた紙です。一番寒い時期に漉いた紙は表具するときにどういうわけかいいのです。」

 糊もやはり二月の寒い時期に作り、三〜四年ねかせておくのだそうだ。こうして手を掛けた紙と糊はしっくりとなじみ、ふすまなどは幾重にもかさねて貼るので、少しぐらいたたいてもびくともしない丈夫なものになり、四十年、五十年位は十分にもつものに仕上がっていく。

 趣味で藍染めもやっているという。自分で染めたものを作品の中に織り込み、昨年静岡で個展を開いた。最近は、画家の横田稔氏との合作で掛け軸を作っている。

 また、最近では和紙の端切れをはりあわせて、お盆や箱を作ってその上にしぶを塗り、葛や藍染めの切れ端、金紙、銀紙を貼り付け趣味の分野も広げている。わたしたちも帰り際に、和紙で出来た素敵なしおりを頂きました。