洗張職人  山村 昇さん(60才)
Vol.10. 1981.1月号掲載
取材協力:うなぎの甚八
 山村さんは15才の時に東京に丁稚奉公出て以来45年間、洗い張りだけを専門にやつてきた生粋の職人さん。いい仕事をするために弟子もとらずに一人で守り続けています。掛川で洗い張りだけを専門に営んでいるのは山村さんだけ。

 洗い張りとは、和服にシミや汚れがついた時、着物を全部ほどいて汚れを落とし、もう一度仕立て直す、いわば和服のクリーニング屋さん。洋服と違って和服の場合すべてが手作業で年季が入らないとなかなかむずかしい。

 シミを見ただけで何のシミかを判断できるようにならなければ一人前ではない。その上、着物を全部ほどいて縫い合わせて一枚の反物に仕上げる。それを手で洗ってのりをつけて干す。この干す作業も技術を要する。そばで見ていると簡単そうに見えるけど非常にむずかしいそうだ。今時では貴重な職人だ。

「汗をかいたり、シミがついたまましまい込んでおくと赤茶けてとれなくなってしまいます。いい着物は早めに手入れをするのがコツ」と山村さん。いつまでもお元気で頑張ってください。