掛川における石器時代
Vol.9 1980年12月号掲載
 地球上の人類の歴史をみると、その始まりは動物のような時代を経て、人類が初めて生産用具を作りだし、共同生活集団などの社会に対し全体的に影響力を持つ生産労働を始めた時代からである。日本の歴史も同じようで、掛川の歴史も石器の発生に始まる。しかし、文献もないこの時代のことは今も明らかにされていない。そこで、仲屋考古資料館の仲屋栄一さんに掛川の旧石器時代についてわかっている範囲で語ってもらった。
仲屋考古資料館 仲屋栄一氏
 調査によると、この近辺で川が流れていたのが10万年位前だろうと言われています。出土する石器はその時に堆積した洪積層からなのですが、三倉層からは、質の良い石が出てきます。岩石を打ち欠いただけの打製石器にも、二つ割石器や四つ割石器、八つ割石器などがあります。

 ここにある石器は約6万年前のもので、ちょっと珍しく自然石の面が付いているんです。普通は石の真ん中を残し両側を割った物が多いんです。こういう形は考古学者でも見たことのない人が多いくらい珍しいものです。石を割る石器台も発見されています。掛川でも旧石器時代は、ほとんど研究段階ですので明かではないのです。

 ただ、旧石器時代では、農業耕作は行われず、山や野原でイノシシや鹿などの狩をしたり、海や川で魚や貝を採り、食用になる野生の植物を集めて生活していたことは確かです。そして衣類も動物の毛皮をはいで植物の繊維などで結んで身につけていたのでしょう。ここにもありますが、皮に穴を開ける為に作ったと思われるドリルみたいな石器が見つかっています。

 他にも、毛皮をはぐ道具や切る道具なども見つかっていて、動物を殺すための投げ槍の先などもあります。1〜2万年前位の物でしょうかね。1万年位前、縄文時代にはいると、打製石器に磨製石器が加わり、石の矢じりや斧、刃、モリなど多くの狩猟用や工作用の石器が出土しています。ここにもありますが、定角式磨製石斧というもので、これに柄を藤の繊維の縄などで固定させて、家などを造るとき細い木や枝をはらうのに使用したものと思います。これは斧では優秀なもので、国立博物館にも同じような物が2本展示されています。

 他にも九千年位前の矢じりも発見されていますし、日本で86個目に発見されたペンダント、正式には鰹節型有孔石器というのですが、色と形では日本で一番良いと言われています。装身具も多く出土していて、他にも丸玉(ネックレスの玉)や耳飾りなどもあり、これらも石工技術が発達したことを物語っています。
協力/仲屋考古資料館 仲屋栄一氏(掛川市原里)


 
鰹節型有孔石器(日本で86個目に発見されたペンダント
矢じり
定角式磨製石斧