上西郷の法泉寺霊泉
Vol.6 1980年9月号掲載
 滝の谷にある法泉寺温泉は緑に包まれた山里の湯宿。室町時代(1440年)に開山宗能和尚の夢枕によって硫黄泉が発見されたと伝えられている。

 法泉寺温泉の湯歴をかいつまんで説明すると、およそ500年ぐらい前に、修業のため全国を巡っている一人の旅僧がいた。この旅僧が開山宗能和尚である。この地のある尼僧は宿場の山あいから流れる清流に霊感を感じた。尼僧は毎日山の中腹にある比丘尼石(びくにいし・左の写真)の上で座禅を組み、この旅僧の来るのを待っていた。

 尼僧は旅僧に出逢い「この地にとどまって永く守護してほしい。」と言ったところ「修業中のため今はだめ。」と、断られた。ところが、その夜、開山宗能和尚の夢枕に常磐と名のる白髪の仙人が現れて「汝、この地に四百四病に効く霊泉を与える。よってこの地にとどまり寺を開き、広く世に伝えよ。」と教えてくれました。翌朝、仙人に指示された場所に行き、手にした杖を大地に突き刺すと、不思議なことに霊泉がコンコンと湧き出てきた。その後、尼僧に「比丘尼石(びくにいし)の下に火を残していく。再び戻ってきたときにこの火が残っていたら、この地に寺を建ててとどまろう。」と約束をしてまた修業に出掛けた。

 そして開山宗能和尚が再び戻ってきたときに比丘尼石の下にまだ温もりが残っていたので、この地に寺を建て、法泉寺と名付けて今日に至ったと伝えられている。