エリマキトカゲもびっくりの衣装
Vol.53 1984.8月号掲載 
 時は満州事変の頃だから今から50年以上も前に、仁藤の笠屋町の橋下に一人の浮浪者が住んでいた。どこからやってきたのか、切り裂いたようなボロボロの衣服(と言えるかどうか)を身につけていた。当時でも珍しい程ボロボロの服だったので、人々は「オボロ」と呼んでいた。足にはクツの替わりに変な物を引きずっている。
 誰かが話しかけても、口を堅く閉ざして何も語ろうとしなかった。だから、どこの生まれでどういう素性の人なのかは、最後まで解らなかった。そのうちいつの間にか居なくなってしまった。
 付近の人達が物を上げようとしても、「いらない」と言って絶対に受け取らなかったそうです。ゴミ箱の中をあさっては食いつないでいた。だから、人々はそっとゴミ箱の上に食べ物を置いてやったりした。物を貰うことはプライドが許さなかったのかもしれない。身体つきからすると若い感じを受ける。ボロボロの衣装をまとっていながら、歯は金歯らしきものが並んでいたのを見た人も居る。なぜか只者ではないような気がする。(関連の投書が「あれも言いたいこれもイイたい!」Vol.55に掲載されています。)