その71 近頃のおそろしい話
きまた たつしろう
 第一番目はやっぱり、マンガ週刊誌の「週刊少年ジャンプ」。四百万部をこえたなんてのは去年の正月の話。今年の正月は……、見た人読んだ人のご存じの如し。四百万部が一年間五十週として、二億冊。一冊二・五センチの厚さとして、四百万部で百キロメートルの厚さ、だいたい富士山の高さの二十五倍。小学生が全国で約千二百万人。その内男の子が約六百万人とすると、日本中の小学三、四、五、六年生の男の子たちが毎週全員買っている計算(!)になる。

 これは、「月刊」や「フレッシュ」、季刊ごとのスペシャルや、「ヤングジャンプ」や「ビジネスジャンプ」を抜きにしてのことだ。ちょっと古い話だが、「キン肉マン」の十七巻の初版は百六十万部だったという。
なにもかもがモンスター。

 高学年の子は、「キン肉マン」(ゆでたまご)はちょっと下火。「キャプテン翼」(高橋陽一)は一時だけぐんとひろまったが、これも三、四年生には定着しているが、急に落ち込んできている。
 今は、「ハイスクール危面組」(新沢基栄)と、「北斗の拳」(武論尊、原哲夫)。「シェイプアップ乱」「きまぐれオレンジ・ロード」「シティハンター」などは、女の子や女の人のはだかやパンツがバッチリでてくるので、男の子たちは毎週ドキドキして読んでいるのだが、先生や友だちの前では話題にしない。

 そういえば、少し前ののように借りて読む、子どもたちのあいだで、友だちどうし別々のマンガ週刊誌を買ってまわし読みをするということはめっきり減った。

次のもうひとつのモンスターが男の子中心に流行っている「ファミコン」。
 ゲーム機本体もそうであるが、「ファミコン大百科」とか、ファミコン必勝法シリーズの「スーパーマリオブラザース」などという本も、たくさんどころか、ゲームの教科書みたいなものなので、子どもたちのほとんどみんなが持っている。

 ゲームカセットもひとりで四〇本持っているという子どもが現れ始めている。テレビゲーム・ブームではなくて、いまはもうファミコン・フィーバーなのである。
 このながれにのろうと売る側でも、要りもしないカセット何本付きだとか、ベーシックなどの周辺機器といっしょでないと売らないという店が出てきた話も聞くし、抽選で売るという店もある。

 そして、使いあきたカセットを千円で売る子もでてきているし、子どもたちが集まって競売するグループもでてきた。こうなると、「カセットを四〇本持っているから、四千円×四〇本で十六万円、プラス、ゲーム機器の価格が二万円で、十八万円のおもちゃだ」などという計算は成り立たなくなる。

 ぼくが、これらのことを「流行の画一化」と言ったら、反論した子がある。
「週刊少年ジャンプにのっている十五本のマンガの中で、好きなのはみんながちがう」というのだ。同じファミコンでも、「好きなカセットがそれぞれちがう」というのだ。この二つの考え方のちがいには、重要な問題が隠されているように思う。

 今回は男の子のことばっかになってしまったが、女の子の世界にもモンスターはある。そして、若者の世界にも、大人の世界にも、モンスターはある。