その66 教師の力量形成調査からみえること
きまた たつしろう
 爽竹桃(キョウチクトウ)のむせかえるような盛夏の紅色をあちこちに見ながら、夏休みの学校へ通う。あの花はヒロシマの色でもある。八月六日は今年もやってきたが、福島地区(広島市の西)の人々の二重の苦しみについてはいつの年もふれられ続けないままで夏が過ぎる。

 今のころになるとプールに通う子の数もめっきりと減る。運動場はさみしい。子どもたちはどこに行ったのか姿は見えない。「甲子園の夏」という言葉はどこかの新聞社のコマーシャルみたいで好きではないが、例年のことであるのだが今年は違った。「中曽根首相の靖国神社の夏」もあったし、なにより日航機の墜落は痛ましかった。

 ぼくはたまたま十三日に休みがもらってあって家に居てテレビを見ていたのだが、NHKテレビの異常さには考えさせられた。他の民間テレビ局が生存者を大きく映し出しているときに、NHKは平然と甲子園のグランドにあった。この時間家の中にいてテレビを見ている子もいるだろう。その子たちはどちらを見ていたのだろうか。

 豊田商事社長刺殺の時のとりまきの報道といい、三浦さんの週刊誌、山根さんの新聞、このごろマスコミはどこかが病んではいまいか。それにくらべて、このタウン誌78%の先月号の高橋さんはよかった。日本茶なしで反省しきりである。ぼくもじっくり考え直す。

 今日学校に行ったら百日草の赤が盛りであった。たしかに百日草の花は残暑の色だ。
空が高い。夏休みもあとすこしである。

さて、静岡大学の山崎先生から冊子が送られてきた。
「教師の力量形成に関する調査研究」という題のレポートである。
静岡大学の教育学部を卒業して県下で、小・中学校の先生をやっている人、千五百人以上の人からのアンケートのまとめである。

 このレポートは、あらかじめ、卒業の後(先生になって)一年、五年、十年、十五年、二十年、二十五年、三十年を経た各集団にわけてアンケートをして、それにそってまとめてあるので興味深いことが多い。

気になるところを記してみる。

一、「教師をやめたい」と思ったことがあるか。
このことには、全体の六十%のひとがあると答えている。しかも、経験一年目のひとは例外として、先生になっての年数の少ない人ほどやめたいと思ったことが多い。その理由の第一は、教育実践上の深刻なゆきづまり…である。

二、「教師は次代を担う青少年を育成しているという強い使命感をもたなければならない」。と思うか。
これに「非常にそう思う」と答えた人は若い先生ほど少ない。先生三十年の人たちが八十%もそうだと答えているのに、一年目の人は四十七%しかそう思っていない。

三、「教師に対する世間の目は」どう思うか。
全体では、とても冷たいが十四%、やや冷たいが五十七%。

四、「教師という仕事のやりがいは」あるか。
については、とても大きいという人が多いのだが、やや小さい、とても小さいが十一%以上もある。

これは小さくない数字だと思う。