その51 だってを連発する子
きまた たつしろう
 ぼくが名づけたのだが、「いいわけ病」という心の病気がある。言葉の病気ではないが、この心の病気にかかっている子は、やたらと、“だって”や“でも”や、“ぼくだけじゃないもん”とか、“○○くんも”などの言葉を連発するのですぐに発見出来る。

 しかし、世のお母さんたちには、この病気の恐ろしさに気づいていないせいか、自分もかかっているからなのかどちらかはわからないが、我が子がこの「いいわけ病」にかかっていることを見抜けない。

“だって”を連発する子は“はい”の返事より先に「だって」と返事をする。教室でぼくは、朝から晩まで、
「だってはいらない」と言い続けてくらす。

「きみ子さん、机がゆがんでいますよ。」
「だって。」
「だって、なんですか?」
「だって、動いちゃうんだもん。」
「だれかが動かさなければ、動くはずはないでしょ。」
「だって、となりの○○くんが、おしたんだもん。」
このように、いいわけが延々と続く。

「太郎君、おしゃべりしてないで、早く食べなさい。」「だって……。」
「春子さん、こちらを向いてください。」「だって………。」
こんな具合で、子どもたちは“だって”を連発する。なかには、“でも”を連発する子もいる。

 子どもの生活の中では、もちろん、きちんといいわけをしなければいけない時がある。どんな権力者の前だろうが、申し開きをしていかなければならない時は、きちんと申し開きをする子でなければいけない。しかし、ここで言っている“だって”は、少し意味が違う。

“だって”を連発する子は、決して自分の否を認めない。また、その言葉を連発しているうちに、自分の欠点をかくす、なおそうとしない子に育っていってしまう。だから、心がくさる。

「○○ちゃんが、二年生の子をいじめているよ。」という知らせが届く。
ぼくは、まず○○ちゃんを呼んで、

一、いじめたのは事実かどうか
二、事実ならちゃんとした正当な理由があるのか
三、正当な理由がないならこれからやめさせよう
と、こんな順番で話しを聞こうと思う。

「○○ちゃん、あなたがさっき、二年生をいじめていたという話しを聞いたけどほんとうですか。」ときりだした。と、いきなり「△△くんだって、やったもん。」との返事。ほんとうかどうかを聞いているのに、“△△くんだって”と言いだす。自分の行動した事実をわきに置いて、友だちの行動した事実をもちだす。

 こんな子どもたちは、どうして育ってきてしまったのだろう。社会のしくみ、親、教育のしくみ、教師などがつくりだしたに違いない。だれが、どこでつくりだしているのか。

お母さんたちは、今日から我が子が“だって”と言うたびに、“だってはいらない”と言ってほしい。そして、“だって”を先に言う子がそだったかを考えだしてほしい。