その29 カルシウムが欠乏すると
きまた たつしろう
 ことしは涼しい、そして雨の降らない梅雨だった。梅雨がちゃんと明けたかどうかわからないが、夏休みが手のとどくところまでやってきている。子どもたちも先生も、市内の小学校ソフトボール大会の練習で夕方遅くまでかかり、いささか疲れてしまっている。例年だとこの時期は雨が降り続いていて、屋外でのソフトボールの練習は休みが続き、子どもたちは英気を養うことになるのだが、そんなわけで今年は違う。

 雨の降らない梅雨…。毎日練習に出ているので、くたびれている。そんな日々のなか、先日、友人の先生から本を借りてきた。本のタイトルに惹かれて読みたくなったのである。そのタイトルは「どこで食い止められるか─カルシウム欠乏症─砂糖の副作用─」(田村 豊幸著)というものだ。読んでいくうちに、びっくりしてしまった。ちょっと要約して気になった部分を中心にすこし紹介してみることにする。

 まず大事なことは、むつかしい理屈は抜きにして、砂糖類がからだに大量に入るとからだの中のあらゆるところのカルシウム分を消費してしまうということだ。

 男のおとなだと、体重の六十%くらいが水分だということは知っているとおもう。ところが、乳児だと体重の七十%くらいが水分なのだそうだ。そして、しょっちゅう子どもの身体の細胞の水はいれかわっているそうだ。だから、「水は子どもの主食」ということになる。

 子どもはいつも水を要求する。近ごろは特に暑くなってくると清涼飲料水をよく飲む。コーラやジュースやシャーベットなどである。これらの中には砂糖が大量に入っている。小・中学生だと、間食だけで一人一日平均百グラムも砂糖分をとっているという。

 身体の中にはいった砂糖は、骨や血液や筋肉の中のカルシウム分をどんどん溶かして使っていく。おまけに、このごろの食事にはカルシウム分が少ない。食べ方も変わって、イワシやアジなどの焼き魚を骨まで食べる子どもは滅多にみかけないようになった。

 そのために、そのうち身体のあっちこっちがカルシウム欠乏のために異常になっていく。解りやすいのは虫歯だ。これは痛くてだれでも解る。しょっちゅう骨を折る子どもも増えてきた。ぼくの学校の一年生のある子は、六歳になってもう三度目だという。

 貧血や近視などもそうだ。化膿しやすいとか、子どものガンの白血病、さらには頭痛や肩こり、イライラ。このような症状の場合、カルシウム欠乏が原因のことがおおいという。カルシウムは身体の中のあらゆる部分に含まれているのである。

 身体に入ってくるカルシウムが少ないのに、必要以上に摂取する砂糖分がどんどん使いとかしていく。脳みその中のカルシウムがとけ出せば大変だ。岩手大学のある先生は、家庭内暴力や非行、登校拒否は子どもの食生活、特に糖分のとりすぎと密接に関係していると発表している。

 暴力中学生や自閉症児や高校生の女子運動部員などのなかで、貧血の子を調べてみると、おどろくほど、ジュースや、コーラ類をがぶ飲みしている子が多いという。

この本はこのようなことがもっとくわしく書かれていて、子どもたちが何気なく摂取している日頃の食生活の危険性や、その次にふりかかるおそろしいことが、次々と記されている。
ぜひ、母親たちに一読をすすめたい。