その27 子どもの八大病
きまた たつしろう
 学区の幼稚園でのこと。五月の初めの連休中に、ある畑でもう少しでつるの出そうになったさつまいもが、きれいに掘り出されてしまい、おまけに全部芽がとられていて、なかには、ていねいに皮まではいであつたのもあったという。昔風の芋床を何日もかけて作ったおじいさんががっかりしたという。これは、もしかしたら小学生が犯人かもしれないということで一番近いぼくの小学校に話がもちこまれた。

 同じ連休中のこと。ぼくの学校の玄関前の入口通路のアスファルトの上に、爆竹の殻がしこたま捨てられていた。中にははぜてないものもあり、登校した子が踏んだら爆発したものもあった。すぐだれがやったのかがわかったが、これをやったのは中学生だった。おまけに、きれいな花をつけた花壇のなかには自転車のわだちが、くっきりと残っていた。

 ほんの一ヶ月前まで、ここの学校の六年生だった子だ。上級生として花だんの水かけをしたりそうじや登下校のおりおりに、自分たちの手で、または下級生に指示をしたりしてゴミを拾ったりしていた場所を、ふみにじってしまう…。

 この二つの出来事は、犯人をさがしてどなりつけることより先に、内容を聞いた先生方は、とほうにくれてしまった。どうしてもその子どもたちの気持ちがわからないのである。

 少しさかのぼって春休みのこと。学校から駅に向かう途中に有る青田のトンネルから上張の東海道線のガードへの坂道を自転車で春のにおいに気持ちよく下っていたら、小学生の一団がダンキリ(変速装置がついたもの)の自転車をつらね、凄いスピードでぼくを追い越していった。後ろから見ていると、そのうちに道路いっぱいに、ジグザグ運転をはじめた。通りかかる自動車のなかには急ブレーキをかけるものも、よけてスピードをゆるめるものもいる。

 なかなか見事な自転車さばきの小学生ではあったが、もっとびっくりしたことがあった。それは、迷惑を受けた自動車がたくさんあったのに一台もだれ一人として、窓から顔を出して、注意したり怒鳴ることをしなかったことだ。ほんとうに、これにもびっくりした。

 ある場合、ある場面では、子どもたちは、ぼくらのけっして想像出来ない、入ることの出来ない世界に生きているのだとおもう。

 先日の出張先の講演で、西中学校のある先生からたいへんおもしろいことを教えていただいた。それは、いまの子どもの持っている八つの病気についてである。

一、「いくら病」お葬式の花を見た幼児が、わあ、きれいと言わないで、「おじさん。これいくら」と言う。
二、「図鑑病」知識いっぱい。米は稲からとるのは知っているが目の前の田んぼの植物がそれとは知らない。
三、「学歴病」学歴をつければ将来は保証されると思い込む。
四、「ブーヤラン病」ブーブーと文句をいうばかりで、結局は動かない。
五、「ラクラク病」なんでも楽な方にいこうとする。自らは努力をしない。
六、「3K病」かっとなる。かっこいい。かんけいない。
七、「つっぱり病」文字通り。
八、「母原病」母親にゆらいする。

以上名付けて「子どもの八大病」と言うのだそうである。
どうして、子どもたちにはこんな病気がとりついてしまうのだろう。
なんとかしなければならない。