その21 子どもたちの実態
きまた たつしろう
 社会問題として注目されている中学校の「校内暴力」に、鉄パイプやダイナマイトや包丁まで登場してきた。掛川や小笠地区の父母や先生たちは「いつかはきっとこの地でも起こるだろう」と思いながらも、心の中のどっかでは「関係ないこと」として安心しているようにみえる。

 ぼくの属している静岡県教職員組合の小笠支部では、教文部というところが中心となって、三年前から、子どもの意識調査や実態調査をやっている。なんとかしなければと思いながら、早く手を打たなければとあせりながらやっている。ぼくも、多少の協力をしている。今年は、「子どもたちは、いま何を考えているか─子どもの意識や子どもの行動の実態調査─」ということであった。組合のまとめてくれたプリントを読ん
でいくと、心が寒々としてくる。読み終わって、この報告書には慄然とした。他人事ではない、まるでぼくの教室の子どもたちの様子とあまりにも似ているのだ。

 今回の調査のまとめとして、小笠・掛川の子どもの実態を次のように箇条書きにしてある。

一、自己中心的でわがままである。
二、集団生活ができない。がまんがない。
三、だらしなく、自分のことが何もできない。
四、言葉づかいが悪く、すぐ乱暴する。
五、学習意欲の全くない子、食べることへの意欲の少ない子が多い。
六、弱いものいじめが非常にひどくなってきている。
七、お金の値打ちがわからず、自分の物他人の物の区別がつかない子が多い。その反面、ひどくケチで何で  もお金に結びつけてしまう。
八、見つからなければ何をやってもよい、という考えをする。
九、異性への興味、いたずら、異常行動、登校拒否、家庭内暴力がめだつ。
十、身体の虚弱化がめだつ。

 これを見て、「日教組のアカが、また大げさな」などと考える親がいるとしたらおおきなまちがいである。「わがやの子は、こんなにひどくない。」と安心したら、これもまちがいである。事件をおこして表沙汰になった子どもの親のほとんどは「まさかうちの子が」というものだし、受け持ちの先生が親に協力をもとめると、大部分の親は、自分の子どもがそういう行動をしているということを信じてくれない場合も多い。新聞に載る全国のあちこちの荒れる中学生の話が、どうして小笠・掛川でおこらないのか。今後もおこらないなんていう理由は、だれも持っていない。

 次の話は、中学生ではなく、小学生の話である。
・「姿勢が悪い」と注意されたら、机の上に足をのせて反抗する一年生。まちがって書いてはいない、小学校一年生の行動である。
・勉強中、席を立って出歩いたり、ぼんやりして何もしないでただ座っているだけの二年生。
・学校の勉強もろくにわからないのに英語塾へ通う二年生。
・五年生の女の子に言いがかりをつけ百円おどしとった三年生。
・ネコを炊飯器に入れふたをしてスイッチを押し殺してしまった四年生。

 むなしい。書き進めていくうちにつらくなってしまう。何が原因なのか、何がなぜ子どもたちをそうさせるのか。この問題は早い時期にひとつひとつほぐしながら、根気よく行うしか打つ手がないようにおもう。