いいかげんな進路指導
Vol.64 1985.7月号掲載 
学校の責任先生の責任

高橋◆今まで学校に行ってて理解してくれている先生はいた?
東A◆全然いない。生徒一人一人の気持ちを理解していない。学校でだけのことしか教えないし、校外活動なんか関係ないっいう感じで「先生個人としてはいいと思うが、学校としてみればダメ。学校は生徒に責任が取れない。」とか意ってさ。
東B◆自分がかわいいから、すぐ「責任」ということで片付けてしまう。
高橋◆先生も認めちゃうと学校の中での立場が悪くなると考えてんだろうね。でもさ、先生方はよく、「責任とらにゃいかんで、認めるわけにはいかん」って言うけど、結局は何かあると生徒をやめさせるじゃん。退学させて済むんなら責任も何もない。生徒が何か遣ろうということで、先生も一緒になってとことん面倒見ていると言うことなら話はわかるけど、その面倒すらみないからな。
東A◆悩み事なんかも、先生に言うくらいなら他の人に相談した方がいい。「今更何考えてるんだ」って言われそうだから。
東B◆親にも似たようなところがある。親だとわしらの昔の頃はああだこうだと行って何にも解決しない。
高橋◆理想の先生は?
東A◆金八先生みたいな人。
東B◆一人一人の生徒のことを親身になって考えてくれる人。
東A◆でも、そんな先生いないね。中学校の時は学校も楽しかったけど、今はぜんぜんつまらない。
東B◆学校が楽しくて、よければ、先生に怒られてもハイハイって聞くけど、東高みたいに、考えてくれる先生がいない学校は、怒られても、何言ってんだあいつということになる。
高橋◆東高に限らず、西高も掛工も酷いと思う。西高なんか特にその点はひどいね。
東B◆その年度に何人国立大学に入れるかが問題じゃんね。
高橋◆俺も西高入って感じたんだけど、先生は人間を育てているんじゃ無いと思う。それこそ、国立何人、有名私立何人入ったとか、うちの学校は品行方正で悪さをしないとかをいつも自慢している。結局は、学校の体裁や先生の力量とか「私は今年何人国立へ入れました」なんて言うことを言いたいわけじゃん。実際に何かあると、もみ消してその地位を確保している。

おまえ、学校やめるか?

東A◆わたしらがちょっと何かやると、まじな顔して「お前学校やめるか?」と言う先生がいる。
高橋◆確かに高校は義務教育じゃないよな。だからお前ら好きで来ている。それだもんで、やめたきゃ勝手にやめろって言えるんだよな。
東B◆だからといって、先生に全部が全部服従しなければならないことはないと思うけど。
高橋◆それは考える必要がある。そこをいつも先生に突かれるわけじゃん「好きで来たんなら学校の方針に従いなさい。その方針に合わない人は勝手にやめなさい。」と言われるとあんた方は何も言えなくなっちゃうね。
東A◆私は、高校生活はもっといいもんだと、憧れていたけど、こんなに酷いとは思ってはいなかった。
高橋◆本当のところ、もっと何かを育てたいとか、教えて欲しいとかあったんじゃないの。それを求めて入ったんだし、人生の方向も決めたいとかさ。
東A◆面接なんかも1回しかやってくれないし。後は自分で決めろって感じ。
東B◆私なんか、まだやっていない。
東A◆こういう大事なときに、もっと親身になってほしい。こんなんでいいのか!って思う。どこの学校に行くのかとか、就職なんかも全然わからないときに、「お前、決めておけよ」だけじゃね。
東B◆先生は毎年やってるんだから、私らは初めてだし、そこでまた人生が変わるんだから。

いい加減な進路指導

高橋◆先生はもっといい意味で口を出してもいいと思うな。いろんな方法をさ。むしろあんたらは口を出して欲しいだろ?。
東A◆うん。
高橋◆進路でも、お前ここ行けって言うんじゃ無くて、一緒に方向を考えてくれたり、面接でも長い時間掛けてくれたり。
東B◆でも、実際は、先生がいろいろな資料を出して検討してくれたり相談してくれるものだと思っていたわけ。そしたら、「お前決めておけよ」だけだもんね。生徒もみんなおかしくて、そういうときには焦っちゃって、急に進路ガイダンスとかリクルートなんか見ちゃう。「決めるのは夏休み前だ」なんか言われると余計に危機感がある。
東A◆そう、今まではさ、最後の最後まで、先生がそう言うとは思わなかった。そういう情報誌なんか見たことも無かった。だからみんな焦っている。
東B◆私も急に、いろんなところの資料を取り寄せたりしてやってるけど、先生がやってくれるもんでさ、でも、自分でやんなきゃいかんけど、その辺は。
高橋◆義務教育じゃないから。(笑)
東A◆ないからぁか。でも、もう少し説明があってもいい。
東B◆だから先生に、今年浜商から来た先生なんだけど、専門学校に私が行きたいと思っているって言ったら「専門学校でもインチキなところがあるから名前だけで決めるなよ。」と言ったからわたしが、「先生の所にはそういう資料があるんですか?」って聞いたら、調べておくよって言ったきり。それで終わり。本当にそんなことでいいのかなって思う。
東A◆私も「お前なぁ、しっかりやらんと、そこは今年途中でやめたのが多いぞ」なんて言われる。でもさ、それは先生の指導が悪いからそうなるんであって、もっとその人現のことを考えてアドバイスしてくれていれば、そういうことは少ないと思う。
東B◆ただ、危機感を煽るだけ。
高橋◆俺の時は、進学校だったもんで「お前な、どんどん勉強やらんと、先生は知らんぞ。昨年もね、これだけ落ちたヤツもいるし、おまえら甘い!」という感じで来る。
東B◆私が感じるには、進学校の方がせんせいはよく考えてくれているように思うけど。
高橋◆それは違うな。考えてくれているようで考えていない。先生は、どっかにはいれればいいという考えでいる。どっかに入れなければしょうがない。だからどこでもいいから入って欲しい。
東A◆その生徒の特技とか個性なんかを無視して、学力的に見て受かるだろういいう感じで簡単に決めるみたい。
高橋◆当時思ったんだけども、決めるまでが最大の問題じゃんな。だから、決めるまでを特技とか才能とか、キラリと光る長所は何かとかをいろいろ親子とか、あんたっちだけとか、先生が面接してさ、そうやって決まれば、その後は自分でやろうと思うじゃん。
東A◆そうだね、それに向かって必死になると思う。
高橋◆でも、実際は、学校や先生がやっていることは正反対で、決める方が先で、お前ら勝手に決めてこい。進路は教師がやることじゃない、だから相談もしないよ。と言って後は危機感を煽るだけじゃん。
東A◆いいかげんに決めれば、いいかげんに社会に出て行くことになる。だから先生も、もっと親身になってくれなきゃぁ、と思うけど。
高橋◆本当におかしいね。
東B◆おかしいよ。何も相談にのらないなんてさ。
高橋◆あのさ、例えば、あんたらが自主的に何かをやろうとして提案したりすると、先生は「その責任は誰が取るのか!」って言うくせに、勝手に決めるななんて言っていて、事、進路の関係だと、おまえら勝手にやれよ。って言うこともおかしいね。バンド活動の郊外コンサートも、それで潰されたじゃんな。学校は責任がとれないなんて言っててさ、責任なんてとったことないくせにさ。

助言ぐらいしてね。

高橋◆あんたらくらいの年齢だと、よくわからないことも多いじゃん。だから先生だってもさ、客観的な判断でもいいから助言してほしいと思わない?
東B◆私なんか友達に助言したあげている。
東A◆私も友達に助言されたりする。先生は絶対に言ってくれないけど。
高橋◆そこを強く言いたい。(笑)
東B◆先生は言ってくれない。
東A◆先生はさ、個人の趣味とか特技とかわかってくれないしね。だから適性検査ぐらいで判断しちゃう。それで結論を下されちゃって、すごくいい加減って感じ。
高橋◆多くの人はさ、自分の事って判っているようで判らない面があるね。それを第三者が、あんたのいいところはこういう所だとか言ってくれると、力強く思ったりするね。
東A◆そうだね、自分じゃ判らないけど、他人に言われて初めて判る場合もあるね。
東B◆そういう風に言われてみたいな。他の人の意見も聞いてみたい。本当は、そういうのが面接なんでしょ?今、学校でやっているのは面接でもなんでもない。
高橋◆俺はさ、それが教育だと思う。あんたの良い面を発見して、こういう勉強をすれば、こういう風に成長するよ、という方向を示してくれれば、最初から進路を決めるというじゃないけど、親身になって、人間と人間という点で、2〜3年かかって方向をある程度示してくれなきなゃ。
東A◆でも、現実は違う。多くの先生はさ、「いちいち、お前らの事を考えていられない。そんなところまで面倒見切れないからな。」と言う。
高橋◆先生は「忙しい」っていうことを言いたいのかな?
東A◆というか、めんどくさいっていう言い方をする。新しい先生は、最初は一生懸命やっているけど、二年目くらいになると少しは力を入れて、だんだん、年を重ねた先生なんかは、毎年同じ事やってるもんだから全然親身じゃない。

教師は重大な職業だ

高橋◆新任の先生が、生徒を親身になって考えてやって、一人一人が社会に育っていくとすれば、先生も嬉しいと思う。それが嬉しいと思えば、次の年もまた頑張ろうとするはずじゃん。
東B◆そんなことは、少ない。
高橋◆と言うか、先生と生徒がもっといろいろなことを話し合って触れ合いがあれば、先生っていうのは楽しいんじゃないかな。もしそういう風にやってれば、ものすごい多くの人間と接することができるし、また、その時期が、ある程度人生も決める事が出来るんだからさ、すごく重大な職業だと思う。
東A◆話を聞くと、そういう先生は少しいるみたい。でも、どんどん少なくなってきた。
東B◆でも、勉強が出来る子って、ある点では得だと思う。
高橋◆どういう意味で?
東B◆いいところへ行けるじゃん。それで、先生も親身になって相談を受けて居るみたいでさ。私なんか、ハブセになっている。マジに困っている。悩んじゃっているのもわかってくれない。
東A◆期待されてない。ちょっと言うと「お前なぁ、今頃何言ってんだよ。リクルートでも買って読め。」とか。

成績だけで決めるな

高橋◆学校も先生の頭の中も、点数で統一されているじゃん。実際、人間が人間を判断するだもんで、すごく難しい事だと思う。ただ、その難しさのあまり、点数一本だけでさ、それを価値の尺度にみたてて人間を測って、ある人は西高、お前は笠農とか、東高、掛工というぐあいに学校を割り当てているじゃん。これは横暴だと思う。
東B◆私も点数で人間を分けるのはおかしいと思うし、必要が無いと思う。でも、分けなきゃいかん社会になっている。
東A◆そう、頭のいいという人は、先生もそうだけど、何でも出来るんじゃないかと思われている。
東B◆私のお母さんも、そういうことをよく言っていた。
高橋◆とんでもないことだ!
東B◆そういうことを言うんなら、私なんか何にも出来ない人間じゃん。(笑)
高橋◆社会はさ、小さい頃からその子を決めつけちゃうじゃん。例えば、成績の悪い子には「お前はバカだ。」とかいって観念を植え付けちゃうし、バカだバカだって言われ続ければ、俺って本当にバカなんだから、もうどでもいいよって事になりかねないよな。そうすれば世間も面倒見てくれない。
東A◆私は勉強なんかどうでもよくて、もっと自分の好きな事やりたい。
東B◆私もそう、でも何が好きな事なのかが判らない。
高橋◆テストの成績が悪くてもさ、これをやらせればすごい!っていうヤツがよくいるじゃん。あんたらもそうだけど、何か好きな事があってさ、それのためには、どんどん研究して、いろんなことを吸収しようとして努力するじゃん。
東B◆うん。するね!そういうことは、すごく楽しい。実才勉強は楽しくない。結局は自分のやりたいことをやる。学校や社会はそういう個性を見ないから、頭が悪いくせに何やってんだ位にしか思わない。
東A◆学校って何。わからない。