未成年者の犯罪
Vol.62 1985.5月号掲載 
子どもの非行と親

高橋◆今、未成年者の不満が犯罪にまでエスカレートしてしまう事件が多くなってきたけど、そういうふうになる前の家庭での環境とか、子どもが親をどういう風に考えているのかということを、犯罪の責任とかも含めて話し合ってみたい。
東A◆私は、犯罪の責任は家庭内にもあると思うし、親だけとか子どもだけとか決めつけられないと思う。
東B◆私は、親も悪いかもしれないけど、やったのは子どもなんだから子どもの方を厳しくしなければダメだと思う。親はちゃんと育てようとしているのに、子どもがグレちゃったり勝手なことをやるんだから…。
東C◆親だってさ、いい子に育てようと手を掛けてても、子どもが変な方向にいっちゃうというのはその子の意志が弱いからで、悪い者にさそわれたり声を掛けられたりした時に、いやだと言えないとか気が弱いとかで、仲間になってグレちゃうというのは、自分が悪い。親に関して言えば、ほっぽらかしにしていれば、ほっぽらかしと言っても、共働きで子どもと接する時間が少なくても愛情を持って接するというのは、ほっぽらかしじゃないんだけど、親が遊び回っていて子どもはほっぽらかして預けておけば大きくなる、という感じだったら親が悪いと思うけど。
東D◆子どもが非行に走るというのは、大部分が親に責任があると私は思う。
東B◆私の知っている男の子の場合は、お父さんに原因があったんだけど、その家のお父さんは性格が弱くておとなしくて、物事をビシビシ言えない方で、その男の子はそんなお父さんを見ていて、男らしくないので情けなく思い、だんだん非行に走っていった。その男の子は「俺がグレたのは親父のせいだ。もっと怒ってくれたら非行に走らなかった」と言っていた。
東C◆私も、知っている男の子の例だけど、その子は明るくて気のいい子なんだけど、両親が仲が悪くてケンカばかりしている。夜、家に居ても絶えずケンカしているから家に居たくないって言って。夜は外出ばかりするようになった。友達の家に居れば、もう遅いから帰った方がいいよとか言われて、だんだん仲間が限られてきちゃって、非行仲間と付き合うようになった。本人もそれはいけないことだと思っているんだけど、家に居て親のケンカを見ているよりはそういう仲間と一緒に居るほうがいいって言う。
東D◆私さぁ、お父さんがいなくて母親だけっていう家庭は、子どもが非行に走りやすいって思うけど。
高橋◆それは一概には言えないと思うよ。
東E◆私は現実に、お父さんいない。3才の時死別した。
高橋◆さっき東Bさんの例とか東Dさんの意見に対して父親不在の体験はどうだった?
東E◆私の場合は、顔も覚えていないから、お父さんはいないのがあたりまえという感じだった。母親と私と妹で、おまけにネコまでメスだから女ばっかの家庭で育った。お父さんは3才の時に死んで、その仕事をお母さんが引き継いで勤めるようになったんだけど、それ以前は家でブロイラーを飼っていた事があって、その時働きに来てくれていたおばさんやおじさん達が、私たちの面倒を見ていてくれて育った。だからそういう点では寂しいと思ったこともあまりなかった。お母さんを見ていても、文句ばかり言われたり口喧嘩もするけど、大変だなと思う。私は、それだから自分がしっかりしなくっちゃといけないとか意識して思うことはあまりないし、悲壮感も無い。やっぱ、いつも人が一杯出入りしている環境で育ったからだと思う。例えば、お母さんと二人きりだとか、お母さんが仕事に行っちゃうとず〜と一人っきりだから、まあ姉妹でもいればお互いに助け合うとかするだろうけど、小さいときに寂しいという感情が育っていると、何かの時に、仲間にしてやるって言われたら、嬉しい気がして、非行仲間に入る場合もあるんじゃないかな。だから、小さいときに寂しいということを、親は子どもにあじあわせてはいけないと思う。
東F◆私は、結局はその子の性格によると思う。私も小学3年生から2年前までの間は親父いなかったじゃん。それで、お母さんが仕事行っちゃう。だから誰も居ないわけなんだかど、あの人(母親)は夜遅くても帰ってこない。帰ってくるのは、翌朝私が学校へ行く頃で、それから2〜3時間寝て、また会社へ行く。
高橋◆ど大変じゃん!
東F◆遊んでいるんだもん、あの人。
高橋◆だって、会社に行くんだろ?
東F◆会社は夕方5時で終わるんだけど、集金で7時頃までやってね、その後のみに行くだよ。だから腹が立ってね。やっていることもちゃらんぽらんだから、嫌気がさして…。
高橋◆グレてやる?
東F◆それがさぁ、お兄ちゃんが刑務官っていう堅い仕事だから、何か私がやったら迷惑がかかるのはお兄ちゃんじゃん。お母さんなんかどうでもいいけん、お兄ちゃんだけには迷惑掛けたくないもんで何もやらなかった。
東G◆私は思うに、「子どもをイイいふうにしようと思ってやっているのに」って親は言うじゃん。その方法にもいろいろあるけど、例えば、生活苦でお母さんも子どもを大きくしたいから仕事に出ちゃった場合でも、子どもは寂しいし、いくらお前のために働いているって言い聞かせてもダメだと思う。お金があっても家政婦さんつけるんじゃ無くて、子どもと会話を持つとかしなくっちゃダメだと思う。
東C◆働いている母親の場合は、あまり子どもと接する時間がないじゃんね。以前読んだ本に載っていた話だけど、そのひとは子どもと交換日記をやって、普段話せない事とか、正面切って言えないことも書けるから、子どもも寂しいときに書けたり、親は後でまとめて見るし、子どもの考えていることもよくわかるし。
高橋◆それはいいことだね。そういうにさ、片親とか忙しい家庭だけじゃなくて、普通の家でもやるといいと思うな。そうしたらみんな、言いたいことを言えるんじゃないの?!

人間が人間を罰するとは

東H◆私は、罪に対して、親を罰するとか両方を罰するとかみんな話していことに思うんだけど、私自身は罰するということがわからない。そういう場合、親を罰して済む問題じゃないし、子を罰しても済む問題でもないと思う。だから罰することとはどういうことかがわからない。
高橋◆罰するということは禁止するというか、こういう罪を犯すと社会的な制裁にあうぞと言うのは、罰しても根本の問題は解決しないということだね?!
東H◆そうだけど、人殺しをしたら死刑とか無期懲役とかかが法律であるでしょ。人を殺したから殺した方も死ねばいいんだとかなっている。そうやって体罰を加えるけど、この問題は親を罰するか子を罰するかというときに、私たちが本当に罰するっていうことを言っても良いものかどうか、もし自分が親になった時のことを考えると、言ってられないと思うの。罪になる過程ではそれなりの意見もあるし、人間の心の中って、他の人間にはよく理解できない部分が多いし、だからそういう場合も、どういう解決方法があるか、私にはよくわからない。
東C◆普通の家庭では、親が子どもに怒るとき大体が怒鳴って怒るでしょ。うちの兄なんかも教師をやっていてよく話をしてくれるんだけど、兄が言うには、怒鳴る前に、「その子の言い分を十分聞いてから、本当に悪ければ悪いことであるという反省を求めるというやりかたをしている。」私も、本当に自分が悪かったんだと思えばそれでいいんだと思う
高橋◆あなたのお父さんはどうなの?
東C◆私のお父さんは、怒るとものすごく怖い。だから、いけないことだということがわかるんだけども、怖いからやらないという部分が多いわけ。学校生活でも、小学校の時から、先生が誉めそうな事をやるというか、何もかもしっかりやるみたいな所があって、最近になって気がついたんだけど、私は、これがイイ悪いってわからないわけではないんだけど、怒られるのが怖いからやめているんだなって思う。だから怒鳴って怒るというやり方だと、それが怖くなくなったら、いくら怒鳴っても効果は無いんじゃないかなって…。
高橋◆結局はそういうことになるよな。怖いもんで言うことを聞いていたり、罰があるからやらないということでは、本当の問題は解決できない。悪いことだと思って本心からそう思うなら悪いことは止めると思う。罰が有っても無くても。
東C◆本人が納得したなら、それ以上言われても、後は心が傷つくばかりだと思う。

先月号42頁の投書の件

東B◆私は、先月号の投書(最下段に掲載)を読んで考えたんだけど、みんなはどう思う?
東G◆私は、その二人の子どもは、その親を親とみないというか、子ども達はマンガの世界の親を想像しちゃっていて、本当は親なんだけど、いまいち親じゃ無いという想いでいると思う。生みの親より育ての親みたいなところがあって、おじいちゃんやおばあちゃんが親だっていうところがあるんじゃないかな。だけど、その子達がわたしらみたいな歳になっちゃえば、親っていうのは、私なんかは今は、親はもう一人の人間なんだっていうのがわかっているから、違う立場でいい話し相手に育っていくんじゃないかな。
東B◆私なんかは、この年になると同性というか、女ならお母さん、男ならお父さんを見るときに、お母さんをお母さんと見るんじゃなくて女として見ちゃってね、やたらといやな地頃が目についてね…。
東C◆そう、こういう生き方はいやだとか、私なんかは、お父さんをいやな生き方をしているというふうに見ちゃう。だから今やたらと変に意識している。

親の思い通りに子どもは育つか

高橋◆親は自分の子どもを悪い子に育てようとやっているんじゃない、みんないい子に育てたいと思ってやっていると、それが裏目に出て、たまたまその方針が子どもに合わなかったり、方向が全然反対だったりして、子どもが親の言うことも聞かなくなることもあるよね。でも、中には子どもに無頓着であったり、難易も言わないぴゃもある。よく言えば放任主義、悪く言えば無責任、そういう親も多い。
東C◆私の友達の男の子は、うちの親は放任主義だと、ぼやいている。何をやっても言わないし、テストの成績がすっごく良くても何も言わない。ある程度の放任はいいけど、子どもが何か精一杯やったなら、その結果はともあれ、努力を認めて欲しい。
高橋◆俺も、認めることは大切だと思う。子どもを罰とか恐怖とかでおどかすんじゃなくて、その子を人間として認めながら育てていくということだよね。でも大部分の大人は、それが理解できないで居る。たとえば親が子どもが勉強しないと怒るというけど、怒ることによって、子どもを追い立てるというか強制というか、言葉による威嚇をやっているんだよな。驚怖を与えながら…。それは親に限らず学校の先生だって同じじゃんな。そういう体質が大人にはある。



Vol.61/1985年4月号 42頁<投書欄より>
高校生のこれが言いたい!コーナーをいつも読んでいます。私は26才で2人の子どもをもっています。その子達が高校生になるまでには程遠いです。私は商売をやっていて、子どもに会うのは朝だけです。いつも祖父、祖母の手元です。そこで、私みたいに商売をやっている人たちの子どもさん(高校生)は親をどう思っているのか?いつも家に居ない親に対してどう思っているか?自分の子どもが12年後には高校生になるが、そういう商売をやっている人の子ども(高校生)が何を考えているのか、親をどう思っているのか、子どもの意見、親の意見をぜひこの場を借りて知ってみたいのです。(市内●ある主婦)