親について
Vol.59 1985.2月号掲載 
 今回のテーマは「親」についてです。親は子にとってみれば、いつも一番身近にいる大人で、多くの子は親に、良き理解者、良き相談相手、良き教育者であることを望んでいると思います。しかし、現実の親と子のつながりにおいては、多くの状況が混ざり合っていて、様々な親と子の関係が生じています。今回の話し合いでも、十人十色という感じですが、それぞれ悩みが有り、その中で皆頑張っているんだと感じました。今回は日程の都合で掛工の生徒は参加していません。それでは、日頃の生活で彼女たちがどのように親について考えているのかを話し合って貰いましょう。(78%)



子の世界から見た父親

東A◆皆それぞれに、親の良い面や悪い面を見ていると思うけど、私の場合、親は私のことを何も知らないというか。何かというと、本当の他人みたいに扱うことが多い。
東B◆他人みたいに?
東A◆そう。たまに夜長電話なんかしていると、「まだ家になじんでいない」とか言って。
東B◆なにそれ?家になじんでないっていうのは?
東A◆私、両親が離婚してしまって、去年まで母親の方に引き取られていて北海道に住んでいた。いろいろと母親方で事情があって、父親方で来てもいいと言うから、こっちの学校を受験して今は父親の方に来ている。おやじさんは現在再婚していて、5才の子どももいる。私とか妹は、あまりいろいろと気にしない方だけど、おやじさんは、家にあまりいないせいか、ちょっとしたことでも何かあると、家になじんでいないとか言うので腹が立つ。挙げ句の果てには、世間知らず!なんて言う。でも、私の方がよっぽど一般世間を知っていると思う。この間も、東京に私の先輩が来るから行きたいって言って、お金も自分で出して、ちゃんと計画まで立てていたの。だけど結局は危ないとか何とか言って駄目になっちゃった。
高橋◆でもさ、俺なんかそうだったから言うんだけど、高校生ぐらいになれば、大人扱いというか、ある程度他人みたいに扱われた方が良いときもあるんじゃないのかな?
東A◆そういうんじゃなくて、お父さんに「俺は全愛情をおまえに捧げている。」って感じで言われてさぁ、それでもって、たかが長電話しただけで、他人扱いされるのは、やっぱ私としては腹が立つ。
東B◆私ね、小学校から中学校まで、父親と話しをしたことが無かった。
東C◆私もそうだった。初めの頃は、お父さんに死んでもらいたかった。大嫌いでね…。
東B◆私、お父さんとよくお風呂に入ったんだけど…今思えば…、うちのお父さんはお母さんをすごく愛している訳なんですよ。で、幼稚園の時にね、私が「お母さんなんて死んじゃえばいいのに。」って言ったら、お母さんよりお父さんの方の手が先に飛んできてね、茶畑まで、3メートルくらい飛ばされた。すごく怒られてね、それ以来お父さんが怖くなっちゃった。その事があってから、お父さんに何か言うのもおべっかい使ってね。お兄ちゃんなんかは「やい、オヤジ」とか言って、良く話をしていたんだけど、私にはどうしてもそれが出来なかった。それでも最近は、お父さんを、なんか尊敬しているというか、そんな風だけど、それより何となく、おとうさんも年だなって感じている。

反抗期の体験談

東C◆私はハッキリ言って、お父さんなんか尊敬できんに。
高橋◆だけどさ、普通というか、このくらいの年齢の女の子は、大体において、お父さんが好きなんじゃないの?
東全員◆そんなことないよ。好きな人はあんまりいない。
東C◆今は嫌い。私がお父さんを嫌っていることをお父さんも知っていて、ある日「○○ちゃんタバコ取って。」ってお父さんが声を掛けたことがあるのよ。バーンって投げつけてやった。お父さんの車を壊したこともある。ボンネットベコベコ。
高橋◆小さいときからずっとお父さんのこと嫌いだったのか?
東C◆ううん、小さい頃は好きだった。中学校に入りはじめてから嫌いになった。
東D◆反抗期?
東C◆そうだらぁ。車壊しても、お父さん怒らなかった。
東D◆私の場合は、反抗期は徹底的だった。小学校の頃というか、これがお母さんだなと自覚しはじめた時から、周期的にくるみたい。その頃から、目の前で親のケンカしか見たことがないだよ。だからさ、寝ていても突然起き上がって無意識のうちに、お母さんの顔を叩いたり、お母さん恐いとか言ってたんだって。小さい子でもさ、ケンカしていたり、お母さんが泣いている姿はよく覚えている。わざわざ子どもの前で…、こういうのは親が悪いと思う。
高橋◆子どもは不安になるよな。親がそういうことをやっているとな。
東C◆私ね、幼稚園の時、お父さんがテーブルひっくり返してお茶碗が割れて手が切れちゃっただよ。それでお父さんを殺してやろうかと思ったことがある。
高橋◆あんたね、好きだったお父さんをね、ある日突然に嫌いになったんだろ、その意識はないの?何でかという。
東C◆わかんない。車を壊したときも、いきなりね、お父さんの車を見たら「バカヤロー」って思ってね。
高橋◆車を見ていきなりムラムラって来て壊しちゃったの?いったいどういう人なんだよ?!
東C◆組み立ての鉄棒でさ、バンバンと叩いてさ、それをお父さん見ていたけど怒らなかった。それでね、入試の時にノイローゼになったの。お母さんがね「朝の4時ぐらいまで勉強しなければ高校は入れない」って言ったもんだから、ず〜と勉強していた。その内、もう勉強なんかしたくない!と思って2時頃になってね、階段を降りていってね、その時プレハブに住んでいたんだけど、そしたらお母さんが「もう勉強終わるの」と言うもんで、「もう2時だよ」って言ったら、「何を言っているの!高校は入れなくなっちゃうでしょ!」と言ってガーガー言ってくるわけ。それでムカムカってきてね…。
高橋◆今度は何壊した?
東C◆お風呂場の戸があるだよ。バーンってやったらメリィ。
東B◆それはスゴイ。
高橋◆怒るとものすごく恐いね、この人は。
東C◆血が出ただよ。それでお母さんは「もう寝なさい」って言ったけど、またプレハブに戻って寝て、次の朝壊れたところを見て「何であれ壊れているんだろう」ってお母さんに聞いたら、私がやったと言われ、そういえば昨日なにか壊したなぁ位にしか覚えていなかった。
東E◆私の親はね、何かというと友達の家にも泊まっちゃいけないって言うし、パーマもダメで、バイトもしちゃあいけないって言うし、すごい固いというか…。
東F◆そう、Eさんがかわいそうだと思う。だってね、Eさんは2人姉弟だから、お姉さんと弟っていう感じだけど、結局一人っ子という見方を親がしているわけ。だもんで、お母さんも心配性というかさ。うちのお母さんは私が4人目だから、もううるさいからどこにでも行ってちょうだい!という感じで、お父さんなんかはお前は東京へも一人で行けないのか、とかさ言ってくれるわけ。
東E◆そう、恵まれているのFさんは。すごく理解があって、お父さんはおもしろい人だし、お母さんは優しいし、そごい良い親。
東F◆そう、友達が来てマンガ読んでいたりすると。突然「ハイ!こっち向いて」と言ってカメラでカシャ(笑)

親に言いたいこと

高橋◆それじゃ最後に、自分の親に向かって何か言うとしたら何を言いたいのかを一言づつどうぞ。
東D◆人間っていうのはどっちかに偏っていると思う。子どもだって欲求不満はあるんだから。それと、親と子が仲良く出来る部分とできない部分があるから難しいと思う。
東E◆親に、「自分に責任を持ってから言って」とよく言われるけど。責任持ってやっていることまで言われるので、親は子をもっと理解して、理解力をたかめるよう努力してほしい。
東B◆わたしはね、そういうことが無いから、長生きしてください。と言いたい。親をけなされるととてもじゃないけど辛い。
東C◆かまわないでほしい。年賀状読むんだよ、人のものを。
東A◆父親に対して、自分のやってた事をちゃんと自覚してほしいと思う。何かって言うとさ、なんて言うか、ウチの離婚のことでも、自分が悪いということさえも自覚していないし、今のお母さんは、「前のお母さんが、私のこと怨んでいるかもしれない」って言っているけども、私は全部親父が悪いと思っている。親父が前のお母さんと結婚しなかったらウチもらも生まれてこなかった。こんな悲しみも知らなくて済んだのにと思う。だからもっと自覚して生きてほしい。