高校生と祭り
Vol.55 1984.10月号掲載 
 今回のテーマ{高校生と祭り}に寄せられた、お祭り大好き(女性24才)さんからの投書を先にご紹介致します。
 私の学生時代にも、お祭りの参加は禁止されていました。私はお祭り大好き人間です。生まれたときから法被を着ていたのに、高校の3年間は、まるで警察にでも追われているかのようにびくびくと周りを気にして連雀通りをねっていました。今思うと懐かしい限りです。今の学生の皆さんも(お祭りの好きな子)同じ思いをしていると思います。青森のねぶたを知っていますか。あそこは中学生だけのねぶたがあるのです。会長は校長先生、総務は教頭先生、それにつづいて生徒達が元気よく「ラッセラー、ラッセラ−」と声を張り上げて、すごくほほえましい光景です。地方によってさまざまなお祭りのとらえかたが有ると思います。社会人となった今、もし「学生達を祭りに参加させる会」があれば応援させていただきます。



高校生だけが参加禁止とは

高橋◆俺の高校生の時も回覧が回ってきて、出てはいけないって書いてあったけど皆の所はどうなのかな?
掛A◆うちのおやじは4〜5年前は高校生もでればいいのにと言っていたんだけど、今年は祭りの役員をやっているから「毎年高校生が出て、酒を飲んで酔っ払っているから出ちゃいかん」というので、その事できのう話し合ったんだけど、大人は役員になったりすると言うことが違ってくる。別に悪いことをするんじゃないので出るくらいはいいと思う。
高橋◆役員にしてみると高校生を出せば、後で言われるからね。
掛A◆もし出て捕まって謹慎処分とかになると、親も役員やっていて世間体が悪いじゃん。大東は特に「朝ねり」というのがあって、夜中から朝にかけて青年衆と一緒に高校生が出て、ねりまわすんだけど、一般の人たちはそれを知っていて、警察がくるんだけど「何でこんなに高校生がい私んとこは、見つかっても見逃してくれる先生もいるけど、中には隠れてカメラで撮っている先生もいる。
東B◆写真に写っていれば、祭りに出ていないなんて言えなくなる。証拠があるから。
掛B◆サングラス掛けたり化粧すればわかんないじゃん。(笑)
高橋◆高校生だけが出てはいけないというのは疑問を感じるんだけど、その点はどう?
東C◆小学校や中学の時は、祭典のことで紙切れが回ってきて、地域の文化交流のために是非積極的に参加して下さい。と書いてあったけど、高校生だけがダメだというのはおかしい。

祭典における高校生の飲酒

高橋◆ダメだという理由には酒やタバコがあげられていて、「地域の文化のために若者の参加は望ましいところですが、高校生の祭典参加は非行の温床となる可能性があるので禁止します。」という内容だね。
掛B◆でもね、祭りの時、家でゴロゴロしていると、近所のおっさん連中が来て「やい、酒を飲め!」だとか、「やい、祭りに出よ!」とか言って引っ張られる。
高橋◆大人や子どもが楽しんでいるのにさ、祭りの時だけ高校生を隔離しておくのもおかしいね。これは非行とかの根本的な問題解決にはならないと思う。
高橋友人◆地域の大人の考え方と学校の考え方とがちがっていることも問題じゃないかな。「高校生になったんだから酒ぐらい飲め」とかいってすすめられるけど、法律では禁止されているし、学校に見つかれば処分されるし、高校生の方でもその対処に困ると思うけど。

高橋◆祭典なんだから、地域全体で盛り上げなければね。
掛B◆隠れて出るのもスリルがあっておもしろい。(笑)
東D◆手拭いをかぶって顔を隠したりして出る。

掛A◆そうしているのは、皆高校生だけだからばれるけど…。
高橋◆祭りに出ていて大人達に注意されたことはあるの?
東E◆私の友人が祭りに出ていてお酒をすすめられ、ちょっと飲んだら、それを見ていた近所のおばさんが学校へ通報した。そのためにその子は謹慎処分になったの。
全員◆それはひどい、かわいそうだよ!
掛A◆おばさん連中はだいたいがそうだね。
高橋◆どういう気持ちで連絡するのかね、本当に
掛A◆自分が善良な市民だと思って目立ちたがってんじゃないの。
東D◆そういううちの子が「うちの子に限って」ということになって何かをやる。。
東E◆だけど、お酒をすすめたのは、そのおばさんの家のおじさん。(笑)


高校生が集まって何かをやろうぜ!

高橋◆提案なんだけど、こんなに押さえつけられているんだから、こうこうせいだけで祭りの時に何かをやったらどう?たとえば高校生だけの屋台をつくるとか。
掛B◆昔、小学の低学年の時、祭りの興奮が冷めないで、祭りごっこみたいにリヤカーをいろいろ飾ってやったことがある。(笑)
東C◆私もやった。祭りが終わって1週間ぐらいず〜っとやった。
掛A◆やっぱり青年衆と一緒にやった方がおもしろいな。大人だとうるさいだけでだめだけれど、青年衆は自分たちを同じ様に扱ってくれるから。
掛B◆今年はもうおそいけど、来年くらいから高校生も出ていいということにならんかな。
高橋◆自分らで何か行動を起こせば、ひょっとしたらということも考えられるけど、たとえば、広く世間に賛否を求める署名運動とか、教育委員会や学校に掛け合うとか、もちろん、自分らで責任がとれるという前提でね。
掛A◆でも、学校に言っただけじゃ何も解決しないしね。
東B◆署名運動(9月号のバイトの件)も、3年生が「私達はバイトやらないから」ということで上手くいかなかったからね。
高橋◆全然お祭りと関係なく、自分たちのお祭りというか、学校とも関係ない所で、高校生が集まってさ、例えば「僕らは音楽が好きだからバンド演奏をやる」とか「私達は映画が好きだから自分たちで撮った映画を上映する」とか「俺たちはディスコだ!」ということの方が本物のお祭りだと思う。
掛B◆そうだね、その方が盛り上がると思う。バンドで言えばレイラの解散コンサートなんかすごかった。
東E◆う〜ん!私なんか体重が1キロ減っちゃった(笑)
高橋◆高校生のバンドを集めてさ、コンサートを一発打ち上げようとか、おもしろいと思う。夏だったら野外でもいいしさ。俺はさ、大事に思うのは、若いやつらのエキサイトする精神というもので何かをやるということだと思う。
東B◆そうだね、実現できたらおもしろいね。

教師や校長と話したい

掛B◆一回でもいから、学校の方からハッキリと、校長でも誰でも出てきてもらって、僕らに納得するように話をしてもらいたい。
東全員◆そう!私達も大人への不満とか言いたいことを言って、交互に話し合いたいね。
高橋◆でもさ、物わかりのいい先生じゃおもしろくないな。規則とか、いろいろうるさいガチガチの先生と話した方がおもしろい。わかるまで話すとか。
東E◆でも、やり込められそう。
掛B◆やり込めるのがうまいからね。相手はプロだもん。
東A◆祭りだけじゃ無く、バイトのこととかさ、でも、普段の生活態度から改めなさいなんて言われそう。
掛B◆でもさ、自分の納得がいかない事で行動がとれないなんていやじゃん。
高橋◆話し合って、とことん話して自分が負けたら納得する?
掛B◆負けるじゃなくて「わかったか」「はい」式の返事をさせられるんじゃなくて、ちゃんと自分でも理解できて納得いくようにしてくれればいい。
高橋◆学校では校長と話す事なんかあるの?
東E◆紙を配るだけ。あとは怒鳴るだけ。怒鳴って終わり。だから話せない。
高橋◆そうかぁ、それじゃそういう話し合いの場をつくろうよ。学校には働きかけてさ。
全員◆いいね!賛成!



 高校生が「祭り」に参加すれば、学校や大人は「飲酒、喫煙等、非行に走るきっかけになり、学業の妨げになる」という。確かに、高校生が祭りに参加すれば、その一種独特な高揚感に包まれた雰囲気の中で、彼らだけそれらのものから、無関係でいろということは事実上不可能であろう。しかし、そうした「非行に走りやすい場所から隔離さえしておけば問題は解決する」という管理者側の発想こそ、まったく安易でバカげていると言えるだろう。何故なら、それらの対策は対症法的で、その場しのぎの表面上の効果は生みこそすれ、現在様々な形で顕れている教育問題の根本解決にはならないからである。若者の持つそうしたパワー、エネルギーを建設的方向に導ききれない教育・社会の中にこそ真の「非行(といわれるもの)を生み出す原因」があるのであり、そして、そういう「クサイモノにはフタ」式の管理教育こそがさらなる非行を生み出す力になっているということに、世の教育者は早く気づくべきだと思う。(高橋 宏)



 次回のテーマは「アルバイト」を一応予定しております。このテーマに限らず、日頃から高校生活について考えていること、今回の祭りのことでも、読者の意見を募集します、また、座談会に参加してみたいという高校生の連絡を待っております。今回の参加者は10名でした。(78%編集室)