龍華院の狸 (今月のニュースより)
Vol.33 1982.12号掲載 
今月のニュースは、10月27日に、城内にある龍華院(市役所の裏手)の敷地内に、野良犬や野良猫をつかまえるために設置した捕獲器のなかに、犬が入らずに狸がかかってしまったというお話し。

龍華院の周りは未だ自然が多く残っているので、野良犬や野良猫が多く、文化財の御霊屋(おたまや)の周辺をかじったりしていたずらをするために、たまりかねた住職が捕獲器を設置した所、数日後、ガサガサ音がするので「しめた!!」と思って見に行ったら、なんと犬の代わりに狸が入っていた。

狸は体長70センチ位で、尾が太く短い。体はちょっと太めで耳が丸くて短いのが特徴である。イヌ科の動物なんだけど、知らない人は、腹が大きくて二本足で突っ立っている狸を想像する人もいるようだ。時々、商店の軒先で見かける陶器製の一升徳利を抱えた、例のタヌキである。

狸は警戒心が薄いので、人家の近くまで平気でやってくる。エサを毎日出しておいて、狸と仲良しになった話は良く聞くし、掛川周辺でも、山に行けばよく見かける。しかし、こんな街のど真ん中で見つかるのは珍しい。どうやってこんな所に来たんでしょうかね。

その狸は、檻の中の隅っこの方で身動きひとつしないで小さくなっていた。あんまりおとなしいので「タヌキ寝入りしてるのかなあ?」と思って覗き込んだら、じっとこちらの様子を覗っていた。

住職の話によると、狸は夜行性の動物のため昼間はおとなしくじっとしているが、夜になると檻の中に置いてある木をガリガリかじったりしているそうである。

ちなみに、なぜ「タヌキ寝入り」と言われるのか調べてみたら、狸はビックリするとすぐ気を失ってしまうので、そこからタヌキ寝入りと言われるようになったんだそうです。それから、狸は自分の巣に近い一定の場所に糞をする習性があり、俗に「タヌキのためぐそ」(きったねぇ!)と呼ばれ、これがタヌキを発見する手がかりになるそうです。

龍華院ではこの狸の処分をどうするか迷っており、だれか引き取ってくれる人がいれば差し上げたいと言っていました。狸汁はいけませんよっ!かわいそうだから…。

              (文:やなせかずこ)