僕たちにとってコンサートはうまい下手なんて問題じゃなかった! 
Vol.11 1981.2号掲載 
「それで無くても、おまえらはだらけてるんだから、コンサートをやればもっとだらける。校長先生の話を聞いてこい!」

昨年12月初旬、中学生がコンサートをやるという情報が入った。桜木公民館で恒例の年忘れコンサートだ。5年前から地元中心のバンドが主催して行われている。今回は前日になって、中学生が主催して行うのは好ましくないという学校側の要請で、高校生バンドと地元OBの参加のみのコンサートになってしまった。そこで彼等の声を聞いてみた。

掛川工業高校の1年生である大場君は「ちょっとシラけたなぁ、でも、西郷地区に比較すると、桜木なんかは活発にやっていると思う。
また、杉村しげのり君は、「下手だけど、演奏が終わって度胸がついたと思う。」
森高校1年生の山下君は、「もっと人が入れば良かったと思う。」
佐藤君は、「むりやりリードギターをやらされたけど楽しかったよ!」

今回の主催者である掛川工業高校の坂下のりひこ君は、「新しくバンドを組めた人たちが発表できて、何らかの成果は得られたと思うけど、中学生の参加がなかったことが残念だった。前回は、中学生が集まってコンサートの後で学校の問題を話し合ったんだけど、規則とか先生の暴力問題とか…。

今回は中学生が一人しか来なかった。なぜ彼等はコンサートを開いてはいけないのだろうか。開催を企画した中学生は語る。

「3年生の担任の先生が言うには、高校受験の一番大切な時期に、勉強もやらずにコンサートをやるのはとんでもないことだから、校長先生の話を聞いてこいということで校長室に呼ばれ、話を聞いたら『ともかく高校生と一緒にやるのは良くない、不良になるきっかけになるし、酒やタバコも覚えてしまうかもしれないからという理由で、やってはいけない。必ず悪影響を受けるから。もしそれでもやりたいのなら、親の許可を受けて、当日、担任の先生か親が立ち会うのならやっても良い。』ということを言われたので、親の許可はもらったんだけど、担任の先生は、立会なんかばかばかしく思ったのか知らないが来てくれないし、親も年末で忙しくて付き合っていられないということで、僕達中学生は参加できなかった。」

「みんな責任を相手に押しつける。たとえば、3年の担任は校長に、校長は親に、親は担任の先生へ、まるで自分らを信用せず、規則だ、きまりだと押さえつけている。自分たちも、それをはねつける力もなかったのは、だらしがないとは思うけど、文化祭の時にだって規制が多すぎて、かたくるしく、何も楽しくない。僕たちは、もっと自由にやらせてほしいんだ!」


「純粋な気持ちでコンサートをやりたかった。しかし、先生方は、理解をしてくれなかった。」

今、中学生が先生に暴力を振るう事件が全国各地で起こっている。社会の歪みが生じさせた事件だが、掛川では幸いそのような事は起こっていないようである。この中学生は今回のことを、真剣に考えて話してくれた。その内容はともかく学校の規則が厳しすぎるということであった。

たとえば、コンサートを見に行くのは絶対に禁止。つま恋なんかで開かれるものに関しても父兄同伴でも全面的に禁止とか、エレキ(古い言葉だが)を使って文化祭に出演するのも禁止なのだそうだ。今回は音楽に関してだけ書いたが、他のことも何もかも校則で縛られていて、そして生徒を信用せず、彼等の行為を理解すらしない先生も多いと聞く。

「今ある問題を解決して、今度自分達でコンサートを開きたい。」と中学生は言った。そして、彼は歯を食いしばりながら、高校生のバンドが演奏するステージの影で、音の出ないエレキギターを必死で弾いていた。