敬老マッサージサービスと事業実施のお願い
Vol.22 1982.1月号掲載 
 一昨年(1980年)9月に陳情のための議会があり、盲人だけで組織されているマッサージ業の掛保支部より「敬老マッサージ・サービス事業実施陳情書」が提出されました。その時に、市長や福祉事務の職員たちから「国民保険を使ったらどうだろうか」と言う話が少し出たのですが、それ以降、何の連絡も無く1年と数ヶ月が過ぎようとしています。陳情書と共に全国各地で実施例を参考資料として添付されており、その資料には近くの磐田市が近年実施したこと、下関市は20年以上前から実施していることなどが書かれている。
 今月号ではこの陳情書の内容をお伝えし、市側から回答が得られた時点の号で経過などを掲載致します。
 正式回答も出さずに「保険扱いにしたら」という内容すら不明瞭なまま、毎日不安に思いながら生活しているのが陳情者たちの実際の姿です。

陳情書
 掛川市におきましては老人福祉向上のため各種事業を実施くださり感謝申し上げます。
 私達、あん摩、マッサージ、指圧、はり及びきゅうを行う者は最近ますます充実しております。
 近代医療の中にあって、筋肉をほぐし、血行をよくし、心神をやわらげ人間の五体を安定することに大きく寄与し、老人はもとより婦人、スポーツ選手等にも広くご利用いただいていますが、いまだ保険制度の適用を受けて居ないこと、老人医療の無料化による客離れ、心身障害を持たない者の(業界への)進出などによって生活の不安を感じている毎日です。
 つきましては、老人福祉の一層の向上をめざし七十歳以上の老人が、あん摩、マッサージ。指圧、はり及びきゅうなどを希望する場合、掛川市で「サービス券」を発行いただき、施術代金を掛川市と施術業者が負担し、老人の健康増進に寄与することが出来る「敬老マッサージ・サービス事業」を実施いただきたいと存じます。
 すでに全国各地で実施され、静岡県内でも磐田市の実施をはじめ数市で実施のうごきがございます。掛川市の一日も早い実施により、私達心身に障害をもちながらも自ら働くことによって生きがいを見出して、老人福祉の一助を、からだをはって技術、教養、向上し努力いたしたいと存じますので、この切なる願いをおふくみ取り下さいますよう、重ねてお願い申し上げます。



 以上の内容が市へ陳情書として提出されたものです。(原文のまま括弧内は編集部補足)今に至るまで何の経過報告も無く、正式の回答も出ていないとのことで、ある議員を通じて市側の考えが話の中で出たぐらいです。その内容は「陣馬峠にある老人福祉センターでヘルストーンという治療をやっている。多くの老人の方が来るので、マッサージ業者の中で希望する人か、あるいは業者内で当番制にしたりして、センターに行き、一人施術したらいくら、というように価格を決めて行ったらどうか。」と言うことらしい。
 視力障害のある人が、不自由な思いをして、交通費を払ってわざわざ出かけて行くことは大変な事です。また当然自宅が留守になって今まで来てくれていたお客さんにも迷惑がかかると言う面でも不都合だと思われます。
 事実、福祉センターのヘルストーンの利用は、年齢制限も無く無料なので多くの市民が利用しています。このことは大変結構なことですが、もう一つの面を見て欲しい。それはマッサージ業者にとっては当然その余波を受け、客離れも多くなるということです。
「すべての市民が健康で明るく生きがいのある生活が送れるよう、また社会的に弱い立場にある人が明るく希望に満ちた生活が営める様に、きめ細かな福祉の推進を図って居ます。」と市では大義名分を掲げています。障害福祉年金も一つの方法で現在行われていますが、それだけでは「きめ細かな」とは言えません。それと並行して障害者も希望に満ちて働け、充分生活が成り立たせられる制度も必要なのではないでしょうか。この陳情書の中でも、「私達心身に障害を持ちながらも。自ら働くことによって生きがいを見出して、」と希望が述べられています。
 まだ多くの問題があるのですが紙面の都合上割愛させていただきます。市ではこのようなことを十分配慮し、調査をして、国民健康保険の制度を適用するなり、サービス券を発行するなり、また他に良い方法があればその方法を真剣に考えて早急に制度化に向かってほしいと思います。大義名分に恥じぬように、もう一年も前に提出された陳情書なのですから。