ろうあ者から掛川市への要望事項
Vol.20 1981.11月号掲載 
 7月13日に、市長と福祉事務所所長・課長・職員、ろうあ者、手話通訳者の計23名が参加して対話集会が開かれました。ここでろうあ者側より4つの要望事項が出されました。この要望事項の内容(20号)と次号で経過を報告していきたいと思います。
 今回この問題を取り上げた理由は、この要望事項によって、ろうあ者の大変さを健常者に理解してもらい、又、市側の回答いかんによって、市がどの程度福祉に力を入れているのかを知るきっかけにもなると思います。福祉の問題は身障者だけの問題ではありません。自分たちもいつどのような事態が発生するか計りしれない世の中です。突発的な事故、あるいは子孫のことを考えたとき、もっともっと真剣に取り組んでいくべきだと思います。


要望事項
一. ろうあ者が、いつでも手話通訳を受けられるように、福祉事務所に専任手話通訳者を採用して下さい。

 手話通訳依頼の実体を見ますと、ろうあ者からの依頼はほとんど月曜日〜土曜日の昼間です。病院、保育園、警察署、市役所などにしても昼間だけだから当然のことです。しかし、身分保障のない派遣事業による通訳活動には限界が有り、ろうあ者にとっては依頼しにくいのが実情です。手話通訳者自身の生活も守らなければなりません。いつでも、どこでも手話通訳に出かけることができ、身分が保障された専任手話通訳者が行政に採用されることが早急に必要です。※現在手話通訳の方はほとんどの人が、昼間別の仕事に携わっています。

二. ろうあ者の集会場を確保して下さい、

聴覚に障害をもったための起因として、様々な生活の不便を持ちます。その例として、聞こえないために電話の連絡も出来ないので、バス等で訪ねてみると相手は留守だったり、また、話し合いをしてお互いが納得するまでには長い時間がかかります。昼間職場で孤独であったり、家族の人たちとの対話も充分にする事もできないことが多いし、テレビを見ても内容がわからない。社会の中での疎外感を持つために、聞こえない者同志が心を通わせて話し合い、励まし合い助け合って生きる活力を養う場所が必要です。又、文化学習については、私たちろうあ者同志が集まって視覚を通して受けとめた感覚で問題を解決し、お互いに高め合っていくということは聞こえる人たちの三倍、五倍の時間を要するという特殊性をご理解いただけますようお願い致します。
・ろうあ者の社会教育
・手話通訳者の養成
・ろうあ者の社会参加が拡大されるよう研究する
・生活相談
・手話サークル、小笠ろうあ協会、ろうあ部などの機関誌の作成
・会議又は事務的な仕事をする
等、このような学習、活動を向上させるための拠点として、いつでもそこへ行けば連絡がとれ、情報が得られる集まり場所の確保をお願い致します。

三.ろうあ者の実情に合わせた日常生活用具の支給補助をお願いします

現在、聴覚障害のための日常生活用具(ベビーシグナル、パトライト、バイブラーム)が補助されていますが、条件が厳しいと同時に不充分です。国、県の不充分の点を市独自で補助してください

四.手話通訳者の研修費の補助について

初級及び中級講習会を修了したからといって手話通訳となれるわけではありません。ろうあ者問題をよく理解し、手話技術もいろいろなろうあ者に合わせて精通しなければなりません。又、社会情勢が変わることによって、日常使われる言葉が増えてくると、手話を新たに創造されますし、その中におかれるろうあ者の立場を理解していくためには、常に研修が必要です。現在、通訳者は県で行われている通訳研修会及び全国手話通訳問題研究集会に自発的に参加していますが、全て自己負担になっています。手話通訳者の研修の必要性を理解されるとともに補助をお願いします。



以上4つの問題点について78%読者はどう感じましたか?この問題が少しでも明るい方向へ向かって行くことを私たちは望みます。専任手話通訳者の生活の権利は当然のことだと思うし、ろうあ者の集会所の確保も、来年市民会館(生涯学習センター)ができれば決して不可能なことではないと思います。ここで本物の生涯学習都市が問われてくると思います。たとえ小さくてもいいから、いつでも自由に使える部屋を作ってあげてほしいと思います。ろうあ者は申し込みをするにも手話通訳者を介さなければならないのですから。