“One return for Charing Cross.”(チェアリングクロス駅までの往復切符)2ポンドを出しながら切符売り場の老婦人にそう告げたところ、切符は確かに出てきましたが、それと共に「10:07分発に乗るんなら、今日はこの列車は来ないわ。ロンドンに行くなら次の列車で、グレイヴズエンドまで言ってちょうだい。」という言葉が出て来たのです。
実際に列車のcancel(キャンセル)に出くわしたのも、この時ばかりではありません。やはりロンドンからの帰り、心もとなく、ロンドンブリッヂの駅で一人走り回って帰りの列車を捜したことがありましたが、何度も時刻表の掲示板に足を運んだのは私一人。他の乗客は、心得たもので改札口の黒板の表示“We are very sorry,but these trains are cancelled ○:××,△:××…,”(次の電車は運休しました。○:××,△:××…。)を見ても平気な顔をしているのです。慣れとはすごいものだなあと思いました。日本人もこういう環境におかれたら、やはり同じような反応をするようになるのでしょう。
牛乳の方は、よく、先にカップに入れておくか、紅茶をいれた後に注ぎこむのかと問題にされますが、これはどうやら家庭によってまちまちのようで階級によって違うのだという説はあたっていないようでした。でも、何といっても友人の言葉でtだしかったのは牛乳の濃さでした。牛乳だけ飲むとアイスクリームの甘味抜きみたいな味がする程、濃いのです。そして残念なことに、やはりあの牛乳なくしては English tea の味はでないのです。
やっとわかったのは、河沿いの公園にホストのお孫さんで9才になるティナと一緒に行った時でした。河岸の大きな石の上には、潮の満ち干きで打ちあげられた海藻がへばりついているし、ほのかな潮の香りが鼻をくすぐっています。てっきり、これは入江だと思った私にティナが“This. river. is .the. Thames.”と単語をひとつずつ区切りながら、目をまんまるにさせて、一生懸命教えてくれます。
ホストのお婆チャンの亡くなられ御主人は、worked on the water だったそうです。お婆チャンの双児の娘さんの御主人達もそれぞれ、worked on the water です。“ worked on the water ”「水上で働く」というのは、ここではテムズ川のタグボートの運転をしたり、荷揚げの仕事をしたり、何かしらテムズ川に関係した仕事をすることを意味します。グリーンヒザで the waterといえば、これはテムズのことなのです。それ位ここではテムズが生活の貴重な一部になっています。大きな川があればそれを利用した何らかの産業が成り立つことは、どこの国でも同じことです。けれど、テムズを単に観光の一場面としてとらえていた私にはこの“ worked on the water ”という表現は、新しい小さな驚きでした。
RSPCA。これは、かの有名なる「英国動物虐待防止協会(The Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」の略称です。時々、どこそこの国では、動物を虐待しているではないか、なんていうクレームをつけたりする世界的に有名なイギリスの協会です。何故、イギリスでそんなに動物愛護の協会が発達しているかといえば、当然これは、イギリス人が動物好きだから、ということになりましょう。