ボーイスカウトウッドバッジ研修所体験記
Vol.16 1981.7月号掲載
石田政男(ボーイスカウト掛川第二団)
 3日間、ドライの日(アルコール抜きの日)が続いたら、そのまま次の2日間もついその気になって連続5日間のドライの日がつづいた。これは私個人の新記録。おまけに背丈が伸びたのか、歩くたびに髪の毛が鴨居にスーッと触れる。よくよく考えてみると姿勢がよくなっていたのです。つまりそれもこれも3泊4日の野営生活のせいでした。

 隊編成のメンバーといえば20代のヤングから50代のオジンまで総勢49名の善男善女。入所式だはすべからく個人の収入・地位・財産・年令も女性についてはその美貌も忘れるべしとの所長の言葉で始まった共同生活。(しかし、天幕は男女別々でありました。)人間が生きるためのもっとも原始的、基本的なたべる・着る・住む・寝る・排せつすることから、作る・書く・歌う・演ずる・採集することまで、全体集会・組集会、気をつけ・休めの連続でありました。

 行動はすべて駆け足ですまし、座学では課業をギューとつめ込まれ、これが朝の5時から夜の10時まで続く。テレビ・ラジオ・新聞など娑婆には全く無縁の4日間でありました。しかし、不思議なことに少しも疲れませんでした。どうしてかと言うと、それは私の日常の生活とは全然異質の体験であったからにちがいありません。生きているという実感がいたしました。

 特に、野営における水の貴重さ、火の尊さ、太陽のありがたさ、お天気次第でガラリと変わる生活環境(2日間は雨にふられました。)、現代の人工環境に住む人間には、大人、子供を問わず、こういった体験が時にはぜったい必要ではないでしょうか。と、同時に自然とのかかわりあいの大切さを痛感いたしました。初めは見知らぬ他人同士も同一体験(俗に言う同じ釜のめしを喰った)をしたあとでは、別れがつらく大の男が目を真っ赤にしている光景が実に印象的でありました。