78%によせて
Vol.10 1981.1月号掲載 
榛村純一(掛川市長)
 タウン誌というのは、人口15万人以上いないとやっていけないという面があるので、地方中小都市ではなかなか育たない。これはスポンサーの問題もあるし、町の横丁やシャレたお店の情報とか、井戸端会議の司会者みたいな機能をもつためには、例えばビーフステーキの専門店だったら人口30万人以上いなければやっていけないように、単品で勝負するには一定の人口の支持がないとできないからです。コンサートホールを作っても30万人位の人口がいないと一流オーケストラを呼んでも観客の絶対人数が足りない。それと新しい物に鋭敏な若者の数が一定にいないとバイタリティが出ないんじゃないかと思う。経済ベースの問題と、これを支持する人達と、提供する情報がうまくいって初めて長続きするんだけど、そういう意味でも掛川の街にタウン誌ができて、3号雑誌で終わらず続いてきているという事はたいへん立派なことだし、嬉しいというかよくやるなあという感じです。だから僕もいろんな形で協力させてもらいたいと思っています。

 気のきいた都市になるためには衣食住の文化、その他のリクレーション等の身近な楽しい情報、耳寄りな話、これが一番大切なことだと思います。テレビや広告が発達しているから、全国的な面での情報というのはいろいろあるけれど、いま一番不足しているのは気の利いた身近な情報だと思う。それを掘り起こしたり紹介したりするのがタウン誌の機能だと思うのだけれど、地方都市だとなかなか育たないんですね。それが掛川にできて続いているということは非常に良いことだと思う。「今度は何が書いてあるのか」「こんな事もあったのか」という、そういう媒体機能をもってくれれば、僕としてはありがたいと思っている。生涯学習の日常的な参考書の機能をもつことにもなる。

 今、掛川に住んでいる若者には、従来からの青年団とか、JCとか、4Hクラブとかがあって、その他にもうひとつ、いずれのグループにも属していない若者がいるんだね。そういう若者のたまり場がない。特に若い女性の出入り出来る交流の場がないように思う。僕は今、いろんな市民と対話しているけれど、一番対話の接触の低いのが20代の若者なんです。若者というのはグループ活動が全市民的な組織じゃないので、お呼びもないし考えていることがつかめない。でも、このタウン誌を見ると「若者はこんな事を考えているのか」「こんな風にしてもらいたいのか」というようなことがわかるので、少しでも若者の気持ちを知るよすがとすることができる。これからも頑張ってずっと続けていってほしいと思っています。タウン誌が栄える都市でなければ、センスが磨かれていかないから文化都市とは言えない。