ホームスティ
Vol.5 1980.8号掲載 
仁科雅夫(梅木屋)
 ことしの五月二日から二週間、姉妹都市のユージン市から十六名の中高校生が、掛川を訪れ、各人が一家庭に一週づつ、掛川西高や東高の生徒の家、都合三十二家庭に民泊し掛川市での様々な体験を楽しんで帰国した。また、七月十八日から十日間、掛川市からユージン市へ、第三次訪問団が出かけることになっている。

 私も、昨年の八月、榛村市長ほかの皆さんと、姉妹都市の正式調印のためユージンへ行ってきた。その時は、ブライアン・オービーという三十八歳の実業家で市議会議員も務めている四人家族の家に宿泊させて戴き、公式な儀式や視察だけでは味わえない、貴重な経験をさせてもらった。

 彼の家に案内される車の中で、彼は私に尋ねた。
「マサオ、水着を持って来ましたか。」
「ノー、泳ぐのは好きだが、水着は持ってきていないよ。」
「マサオ、君の家には、プールはありますか。」
我が家には子供の水浴用のビニールのプールしかない。それならあると答えようかとも思ったが、「プールはないよ、ブライアン、日本ではプール付きの庭を持つ家庭は僅かしかいないよ。」

 森林に囲まれた丘陵地帯の広いスペースに建てられた家に着くと、車庫の扉が自動的に開く。車の中からリモコンである。外見は木造のロッジ風の平屋であるが、一歩屋内に足を踏み入れると、豪華なインテリアと居心地の良い家具がすばらしい。

 土産に持参した葛布のテーブルクロスを贈ると、大変喜んで早速テーブルに飾ってくれたが、こちらの室を見てくれというので、ついて行くと壁一面に葛布が貼られている。裏庭にはタイマー付きのスプリンクラーのある見事な緑の広い芝と、ご自慢の碧い水を湛えた素晴らしいプールが丘の起伏を上手に使って作られている。プールサイドの樹影のテーブルで、バーボンを傾けながらの会話。彼は銀行の頭取を始め、不動産・マーケット・放送局・自動車販売・スポーツ施設まで経営しているという。

「マサオは余暇はどうして過ごすか。」と聞くので、つい「店の休日には他の仕事をするよ。」と本当のことを言って、シマッタと思う。

 週休二日制が徹底している彼等は、健康管理にことのほか意を用い、人生をエンジョイする達人でもある。彼は平日には毎朝八時に三マイルのジョギングを欠かさないという。
 ユージンの市街地をとりまく丘陵沿いの道路には、ちゃんとランニングの為のジョギング・トレイルが併設されている。

 我が掛川市でも定住モデル構想が進められているが、この境に達するのは何時の日かな、と考えている昨今である。