多様化する外食産業
Vol.31980.6月号掲載 
酒井嘉市(連雀玉すし店主)
 気候がよくなると人々は出歩く。冬ごもりから抜け出る開放感を誰もが求めることであろう。野山をはじめ、車や鉄道、航空を利用して遠出するときのつきものは外食の楽しみで、その土地の名物、名産を探すことも、なかなかおもしろいものです。

 日本人の食生活が多様化してきたのは、もう二十年位前から。年代によって好みは多少異なるが、ほとんどが全国百三十万施設もある飲食店に代表される味である。

 すし・天ぷら・うなぎを主とする店の他に、断然多いのが、一般飲食店。都会の一部でみられる洋食、中華・ステーキ専門店とか、ハンバーガー・ピザパイ専門店などは飲食店全体の件数から言えばあまり多い数字ではない。また、どの業種に入るのか区分が定着していないスナック、サパークラブなどと呼ばれる深夜営業色の強い店や、ディスコ・クラブなどは、新しい業種であり、飲食店業種の一角を占めている。

 このような業種区分の複雑な業界にあって昔ながらの大衆嗜好に適しているのは、千年の歴史をもつ「すし」を筆頭に、四百年の伝統に生き、工夫されている丼物であり、その需要も毎年延びを見せている。

 掛川市の場合を例にとれば、約三百軒の飲食店があるが、そのうちの二割は、コーヒーなどの喫茶が占め、社交の場として、若い人達の利用も多いようである。最近の都市計画などで美しい装いにかえる店が増えた今日、お客様にとって、気持ちよく楽しい飲食が出来ることは非常に結構なことだが、業者の人達は、新鮮な原材料を提供し、食中毒などの発生防止に留意されたいものである。