二俣線
Vol.1 1980.4月号掲載 
大村達男(掛川商工会議所事務局長)
 ある朝、ふと新聞に目を落とすと、赤字地方線廃止国鉄再建法案とあり、二俣、清水港線も対象と一号活字にて記されており拾い読みしている内に、累計赤字一兆五千億の国鉄。経営再建促進特別措置法案が今、国会に提出され、特定地方交通対策協議会を設置し、二年間を限度としてバス転換や、第三セクターに移管するとある。

 よくもこんなに赤字を出したものだ、正直第一印象であった。次にもう少し早く対策は取れなかったのか一般企業ならとうに倒産だ。私鉄経営の場合は運賃もさることながらサービスもよい。名古屋・岐阜に行く場合は必ずと云ってよい程、しぜんに豊橋に出て名鉄に乗り替えて当然のように行く。これはなんだろうか。

 そんな事を想う内に、二俣線が廃止になったらと現実に引き戻される。道路網の整備がなされないまま廃止になったら沿線住民は、通勤通学者は、新幹線をも停車させようと云う当市の夢多き将来計画は、駅舎の改築は住み良い地域作りはどうなるのか?と自問自答する。私なりに何かよい解決の方途はと、タバコに火をつけながら当事者にでもなったような錯覚に陥っていた。夢でもよい、若い娘さんが乗車券を取り扱い、切符を切り、受け取ってくれ、「おはようございます」「おやすみなさい」と一言でも声を掛けることになれば、それだけでさぞ明るい楽しい駅になったであろうに。これだけでも「いい日旅立ち」だ!

 どうだろう、二俣線沿線の関係市町村が官民合同の路線用地を格安で(バスを走らせる経費等を考えて)国鉄より払い下げを受け、これを豊橋まで乗り入れている名鉄に投資し直接経営は名鉄に移管したら、見直しされつつある北遠地域の開発にもなるだろうし、将来には日本のスイスともくろむ奧大井アプト式電車を走らせる計画、SL路線大井川鉄道と結ぶ。この夢が実現されれば南アルプスは夏の地域住民のメガロポリスの森となるであろうに。地方の時代、定住構想にも…。と身勝手な理屈をつけ新聞を閉じた。