アメリカのプロ野球
Vol.7 1980.10月号掲載
馨 哲夫
 ユージンと姉妹都市になって都合のいいのは、サンフランシスコとロサンゼルスが近いことである。サンフランシスコは私の好きな街で昼も夜も十分に楽しめるものを持っている。ロスにはディズニーランドがあると人は言うが、五回もつきあうと大体あきる。ロスの夜で私の好みの一つはジャーズのゲームである。

 ダジャーステジアム、とむこうの人は発音する。丘の上にあって涼しく、雨の心配のない土地だからナイターには快適である。

四回行って四回とも五万人の観衆でふくれあがった。その頃がちょうどどさ廻りからホームへ戻ってくる時期だということ、上位の激しい争いのはじまる時分だということによるらしい。それでも三ドル七五セントで内野席に入れる。外野は少年少女ファンのために開放してあるから金を出しても入れない。

 今年は、六対一で前半大きくリードしていたドジャーズが「チャージ、チャージ」(突撃という意味)と手をならし、足ぶみをして応援するスタンドにた援けられてガブスを七対六で負かしたゲームを見た。三番セイや四番ガービーを四球で歩かしたりすれば、ブーブーといって投手がやじられる。アメリカのプロ野球はスピーディでガッツがあり、見ていてさわやかである。

 西高の同級生で朝日新聞運動部デスク、中山司朗と話をした時、「あたりきよ、カオル、力のない奴はファームに落とされる。ファームは遠いので、妻子と別れて生活する。待遇はガタ落ち。だから大リーガーはみんな一生懸命さ。多摩川で女子学生にサインしたりして出番を待っているのとは違うぜ。」

 アメリカのスカウトがいつもストップウォッチを持っているのは脚力、スピードを調べるためだという。日本のプロ野球がどことなくたるんでいるわけが何となくわかってきた。