園芸科-天地返し
Vol.48 1984年3月号掲載
天地返し

園芸科の一年生は、いま土作りに忙しい。土作りは天地返しといって、80センチから1メートルの深さで土を掘り起こして、今まで作物を作っていた土を下に埋め込み、下の新しい土を上に出す作業である

土は放っておくと、どんどん堅くなっていくので、大根なんかは下へ伸びていかなくなってしまうし、土の中には病気の菌や害虫もいっぱい眠っている。

越冬した害虫は、そのままだと作物を食い荒らしてしまうので、結局は消毒をいっぱいすることになって、その消毒のために今度は人間にも害をもたらす。土を掘り起こして少し置いておけば、寒さで害虫が弱って死んでいくので、天地返しは大変ではあるけれど、大切な作業のひとつでもあるのです。それに、底の方に溜まっている化学肥料の悪い成分を動かしてあげる役目も果たします。

そうして天地返しをした土に、半年以上も発酵させ寝かした牛糞を混ぜるのである。この牛糞は土のようにサラサラとしていて、臭いも殆ど無い。この堆肥を使えば、化学肥料を使った作物と違い、味はグ〜ンと良くなる。自然の作物には自然の肥料が一番適しているのである。そして、私たちの身体のためにも一番良いようだ。


農業本来の姿

こうして一年生は年度の最後の仕上げに、新しく入ってくる一年生のために、良い作物が出来るように下準備をしてあげるのである。

今では農業のやり方もだいぶ変わってきて、天地返しを機械で掘り起こしたり、掘り起こす代わりに肥料や消毒をたっぷりと使って、見た目のきれいな物を作るようになってきてしまった。

小笠農業高校では、昔から伝わる農業本来の基本的なやりかたを生徒達に教えている。31名の一年生達は、この天地返しの作業に10時間余りも費やす。

新入生達は春からこの土でスイカ作りから始めて行く。秋になれば大根や白菜なども作る。収穫の時期が楽しみだ。


学んでいる生徒に聞いてみました

小林孝寿君(1年生)

小林君の家はハウスメロンの栽培をやっている 。園芸科は二年生になるとメロンの専攻に進めるために選んだとのこと。ゆくゆくは家業を継いで、ハウスメロン栽培をやることになるそうだ。








水野雅志君(1年生)

学校ではミカンを採ったり、畑を耕したりと、家の手伝いもたまにするという水野君。卒業したらすぐに家業を継ぐ予定だそうです。
重労働なので途中休みながらの作業。
スコップや鍬や鋤などを使い全て手作業。
深く掘るのは大変だが、次に繋げる作業だ。
小林君
水野君