「園芸科」
Vol.42 1983年9月号掲載
量より「質」です。

あの高級メロンは、わざと一本の茎蔓から一個の実しから成らせない。放っておけばたくさんの実を付けるが、まだ小さい内に摘み取って、たった一個だけを残しておくのである。それは、温室の中は土の量がわずかなため、栄養分や茎蔓の高さを計算すると一本に一個が限度となるそうです。だからあの広い温室の中には茎蔓の本数分だけのメロンしか成っていません。

小笠農業高校の温室には、一棟で役80から100本位植えるので、一回の収穫量は80から100個くらいというところ。約3ヶ月に一度の収穫で、中には病気や不良品も出るので、年間にしてもその収穫量は少ない。故に金額も高いのである。イチゴやミカンと違って今年は豊作だったということがない。だからメロン作りは必然的に量より質を高めるための努力をする。

生徒達は夏休みでも交替で登校して、苗に水をかけたり、さまざまな世話をする。夏場の温室の中は窓を開けても40度以上になるという。汗が身体中を流れる。「土を細かく砕いたり、こねる作業は辛いが、収穫の時は楽しい。」と、生徒達は物を作る喜びを全身で感じ取っている。


外観で値打ちが決まる。

園芸科には、温室メロン、ハウス栽培(キュウリ、トマトなど)、花・観葉植物、みかんの各専攻に分れていて全部で89名の生徒達が学んでいる。

今日も夏休みだというのに、メロンの穫り入れも終わり、出荷準備の真っ最中。メロンが上手く出来たのか、けっこう楽しそうだ。
温室メロンの場合、出荷する前に必ず糖度の検査を受ける。これにパスしないと出荷が出来ないので、市場に出回っているメロンの味は保証付き。ただ、ハウスメロンの場合はハウス内の温度調整がうまくきかないので露地物より味が落ちるが、後は外観で勝負。マスクメロンの価値は外観で大きく左右されるから、外側のネットをいかに綺麗に仕上げるかがとても大きな意味を持つ。このネットが綺麗か悪いかで、価格面でぐっと差が出てしまう。見た目の悪いメロンは半値ぐらいになってしまうのでその差は大きい。


食べ頃を逃がすな。

メロンの食べ頃は、夏場なら収穫から4〜5日位が一番美味しく食べられるそうだ。
その頃になるとお尻の部分のネットの間に見えるメロンの肌が、濃いグリーン色から白っぽくなりそれがずっと上まであがってくる。これが食べ頃の合図です。そして、お尻の部分がほんの少し柔らかくなってきます。
高級品だけに「勿体ない」と、いつまでも置いておかないで、食べ頃だと思ったらすぐに食べることをおすすめします。その時期を過ぎると少しずつ味が落ちていくそうです。
鈴木文夫くん(3年生)
「家業は温室メロンをやっていないので、学んだことを直接は活かすことはできないけど、根気力とかは身についていくので、これからの仕事には必ず役に立つはず」という鈴木君。いつも小さいのばっかりだったのが、今回は大きくて良いのが出来たと自慢気に話してくれた。
松下 剛くん(3年生)
「家業はハウスをやっているけど、次男だから多分後は継がない」という松下君。高校卒業後は工場に勤める予定。温室の中に入っていると、暑くて汗がボトボト落ちて気持ちが悪いそうだ。
米山幸宏くん(3年生)
米山君の場合は、長男でなおかつ家業の温室メロンを継ぐ予定なので、心なしか力の入れようが違うような感じを受けた。「一年の時から将来が決まっていたので、自分から仕事を覚えてすすんでやるようになりました。」日曜日の午前中は家業を手伝っておこずかいをもらい、親子のコミュニケーションも温室の中でバッチリ育まれています。