「茶業科」
Vol.41 1983年8月号掲載
全国でも類の無い「茶業科」

茶の木はいつ見ても同じ高さできれいに揃っている。恥ずかしい話なんだけど正直あれ以上は伸びないと思っていました。刈り取らないとドンドン伸びていくんだそうですね。調べてみたら佐賀県の嬉野(うれしの)には高さ8メートルもある茶の木があるそうです。そんなに大きくなっては葉を摘みにくくて仕方が無いので、摘みやすい高さにそろえてあるのだそうです。

さて、全国の農業高校の中で茶業科があるのは小笠農業高校だけだそうです。茶処小笠・掛川・榛原に囲まれた、地域にふさわしい農業高校です。茶業科には、お茶の専業農家を目指して、100名(1年生38名、2年生27名、3年生35名)の生徒が学んでいます。2年生が少ないのは、生まれた時がちょうど丙午(ひのえうま)の年に当たっていたからだそうです。

茶業科を専攻している生徒のほとんどが、お茶の専業農家の長男ということで、今後の地場産業を担っていく立場に置かれています。生徒達もその辺のところはよ〜く心得ているせいか、卒業後は一時的に就職しても、結婚する頃には家業を継いでいく心構えでいるから、就職するにしてもほとんどの生徒がお茶関係の所に就職していくそうなので、将来的にはますます大きく成長していくことでしょう。

やはり専門的な知識を身につけても、一時的にしろ全然関係の無い所に就職したのでは、3年間学んだことが無駄骨になりかねません。最終的には専門的な所に就職した人と、そうでない人の差は大きく開いていくはず「どっちが得かよ〜く考えてみよ」っていうコマーシャルがありましたね。


卒業生達の苦労が今実っています。

お茶の場合も5アールの茶畑を2人で任されて、一年間生徒だけで管理することになっている。だから当然真剣さも違ってくるし、一通りの作業を身をもって覚えることができる。以前よりも少なくなったそうではあるが、授業以外に放課後や休みの日にも自主的にやっている生徒もいるそうです。

現在の茶畑は山を切り崩して作られたが、土壌的にはかなり悪く、頁岩(けつがん)という粘土質の岩がいっぱいで、以前は根が下に張っていかなかったそうです。今までの卒業生達が土を入れ替えたりして苦労に苦労を重ねてきたおかげで、ようやく何とかなってきたと言う。これからも成育調査や肥料の比較試験、深蒸しや普通のお茶の違い等々、研究課題はいろいろ残されているが、毎年一歩ずつ前進しているとのことです。


お茶は通信販売もしています。

茶業科では、茶樹栽培だけではなく、摘み取られたお茶の荒茶から再製加工まで実施で経験し、最終的には梱装出荷までを行っていく。生徒達を見ていると、まだまだ不慣れな点も多く見られるが、この経験はこれから実社会でいろいろな面で役立っていくと思う。兼業農家や廃業していく農家が多い中で、大いに期待したいものである。

さて、再製が済んで梱装されたお茶は、主に全国の学校関係に売られていく。玉露の一番高いお茶で1キロ1万円。一番安いお茶は粉茶で1キロ800円。生産量は全体で4,500キロで約2,000万円を売り上げている。小笠農高全体の売上げが約5,000万円だから、茶業科だけでもかなりの売上げを占めていることになる。ここのお茶は一般にも、連絡があれば販売しているそうです。
村松完一くん(3年生)掛川市
村松君の家はお茶が8割畜産が2割の専業農家。村松君自身はお茶が好きだからお茶に力を入れていきたいそうです。「お茶の将来性は有る」とキッパリ言い切る。(頼もしいですね)卒業後はやはりお茶関係の仕事に従事するそうです。
鈴木雅志くん(3年生)榛原町
「僕は野球部だもんで、なかなか休みがなくて家の手伝いが出来ない」という鈴木君。たまのお休みは「たまの休みだから」と、やっぱり手伝わないそうです。今年の一番茶の時には家の人から「一日くらい休みをもらって手伝って欲しい」と言われたけど、やっぱり手伝いませんでした。(将来が不安だなぁ!)
山崎志信くん(3年生)掛川市
「家では茶樹栽培から荒茶加工までやっているので、学校での実習はかなり役立っている」という山崎君。父親も長い経験を積んできているので、教えられることが多いそうだ。学校の実習と父親の経験と、違った角度から学ぶことも大事なことですね。