アニメ同好会
Vol.59 1985年2月号掲載
根気、根気のアニメ

アニメーション(コマ撮り動画)というのは、一つのストーリーを仕上げるのに考えられないような多くの枚数の絵を必要とする。一連の動作を何枚かに割って描くわけだけど、一秒間に18コマの絵が必要だというから、180枚描いても10秒間しか観られないことになる。30分もののアニメを作るのに32,400枚描くなんていったら、気が遠くなりそうな枚数だ。ひたすら、根気、根気の作業である。


1分が限界!?


常葉学園のアニメ同好会では、ストーリーが大体20秒から長くて1分が限度ということである。作品を見せてもらったが、中には全く意味不明で終わってしまったものもあったが、全体的には絵も綺麗だし、ストーリーも短い割にはうまくまとまっていたような気がする。中には、素晴らしい作品も何点かあった。

それにしても、アニメの場合は一生懸命やっている割には報われないという。何百枚と描いてもフィルムに収めると動きがメチャクチャで失敗に終わることもあったりして、そうなると、もう意気消沈。それでも、上手くいったときには最高に良い気分に浸れるのでしょうね。しかし、将来アニメの仕事をやってみたいという部員は一人もいなかった。全員が趣味の範囲に留めている様だ。


「十四日の土曜日」オカルト映画撮影中


昨年までは部員も大勢いて、せっせと上映会をやったり、他の大学とも交流していたようだが、今年は必要最低限の人数しかいなくて、厳しい状態に置かれている。人数に比例して一人が描く枚数が増えるからだ。

発表は学園祭の時の一度だけ。上映時間が20秒から長くて1分では、とても1本や2本と言うわけにはいかない。そんなわけで現在はアニメそっちのけで、実写(映画)に夢中になっている。

現在手がけているのは「十三日の金曜日」をもじって「十四日の土曜日」という恐〜いオカルト映画。主役はなぜか部外者が選ばれ、部長の森さんと副部長の本多さんが撮影係。

実写の場合は体力だけあればいいと言うが、それでも、中々大変なようだ。まずシナリオを書いて、それを皆で検討しながらまとめ、その情景を絵コンテで表して、再検討してからようやく撮影の段階に入る。絵コンテで表さないとフィルムが無駄になるからです。親のスネをかじっている学生の身としては、フィルム代も浮かさねば…。

配役が足りないときには軽音楽部の部員に応援を頼む。(8名の部員の内3名は軽音楽部にも属している。)実写の映画を見せてもらったが、おもしろくてお腹を抱えて笑ってしまった。あまりの出来の良さに、味をしめてしまったのではなかろうか。「十四日の土曜日」に乞うご期待!


アニメ業界も行き詰まっている?


部員達は、現在のアニメに対して厳しい目を向けている。部長の森さんは、「現在のアニメーションを観ていると、ストーリー的にも行き詰まってるなっていう印象を受ける。もう、いいかげんにやめたほうがいいんじゃないかと常々思っているので、将来、アニメに進みたいとは思わない。」と言う。

他の部員もほとんど同じ意見。「昔のように信じられない動きがない。絵が動いているというだけで、あれはアニメではない。かと言って、自分達の力でそれを打破する力も無いので、実写(映画)の方に走ってしまいました。」

しかし、実写をやっていてもアニメを忘れたわけではない。2年生が卒業する前に、記念に残るアニメを制作したいと言っていました。