陶芸クラブ(美術デザイ科陶磁工房)
Vol.49 1984年4月号掲載
追い出し窯?

取材当日は、春休みに入っていたのと、3月7日から静岡市民文化会館で行われる「卒業制作展」の準備のため、学校の中はシーンと静まりかえっていた。クラブの中でも一番活発と言われている「陶芸クラブ」も卒業していく2年生が2名だけで、最後の記念のコーヒーカップと茶碗を作っていただけ。

この陶芸クラブの正式名称は「常葉学園短期大学美術デザイン科陶磁工房」といい、窯の名前を「三峰苑(さんぽうえん)」と呼んでいる。三峰苑という名前は、今は亡きデザイン科の課長が「目標を三つたて、その目標に向かって進め」という意味を込めて付けられたそうです。

部員は現在、1年生、2年生各9名で合計18名。2年生はもうすぐ卒業してしまうので、新しく入ってくる1年生と選手交替。新しい息吹は次々に年輪の輪を広げて行くことと思います。

さて、卒業生達の作品は、休みの合間をぬってせっせと作り置きされ、最後にまとめて窯で焼き上げる。部員達はこれを「追い出し窯」と呼んでいるそうで、ちょっぴり淋しさを味わいながらも、最後の思い出をたくさん残しておこうと懸命につくります。

ここでは土を練ることから、窯で焼き上げるまでの全てを自分達の手で行う。最後の仕上げは1200度以上もある窯の中で14〜15時間もかけて焼き上げる。この日ばかりは、全員泊まり込みで窯の番をします。女三人寄ればなんとかって言いますから、10人以上も寄れば、それは賑やかな合宿になります。


ブローチも手造りで…

作品は主に湯呑、コーヒーカップなどの日常よく使われる物が多いが、最近ではイヤリングやブローチ、ネックレスなどの小物類に凝っている部員も多い。ファッション的な物にも興味があるようだ。手造りの小物は味わい深いので、なかなか好評だそうだ。自分達で作った作品は各自が持ち帰ることが出来るが、時には大学祭や地元の夜店市で売られることもある。そういう時には、どんな不出来な作品でも売れてしまうと言うから、部員達は制作意欲をかき立てられ、張り切って作ってしまう。今年の大学祭や夜店市にどんな作品が並ぶか楽しみである。


3人に聞いてみました

堀川さん(教務員・24才)

陶芸クラブの面倒をみたり、授業として陶芸が行われるときには講師の助手をしているという堀川さん。この学校の卒業生で、居心地が良かったのかそのまま居座ってしまったそうです。在学中は服飾(服のデザイン、染色、織物など)を専攻していたのに、「陶芸クラブに入っていたら、いつの間にか本業を忘れてしまって、クラブとして接している方に傾いちゃった…。」と笑う。


間(はざま)さん(2年生)

間さんは、自分で手編みのセーターやカーディガンを編み、それに付ける陶製のボタンまで作ってしまいました。今日も可愛らしい陶製のブローチで胸元を飾っていました。「卒業してしまうと、ここにも来れなくなってしまう…。」と残念そう。


伊藤さん(2年生)

友だちの作った作品を見て「これなら自分でも作れそう」とつられて入ったという伊藤さん。いざ作ってみれば、素焼きの段階で破裂してしまったり、イミリが入ってしまったりで、なかなか思うようにはいかなかったそうだ。「でも、夜店市なんかに出すと、どんなものでも買ってくれたから、すごく嬉しかったですね。」と。今日作っていたお茶碗はなかなかの出來でしたよ。
堀川さん
間さん
伊藤さん