メルヘンパッチワーク
Vol.27 1982.6月号掲載 
絵本の世界がそのままパッチワークに。

東京原宿に「ヌック」というパッチワークを扱っている店がある。この店は、上野紀子(うえののりこ)さんという絵本作家の弟の上野光夫さんが開いている店である。自分で生地を染め、デザインし部分部分の絵を縫い合わせて、1枚の絵に仕上げていく。これをメルヘンパッチワークと言う。このメルヘンパッチワークはヌックが本家本元で、世界中でただ一軒だけという。生地の染めから縫い付けまでがすべて手作りなので、根気の要る作業である。然し、出来上がったパッチワークは、まさしくメルヘンの世界。布を縫い合わせただけのパッチワークとは、かなりイメージが違う。

パッチワークとの出逢い

萩原さんとメルヘンパッチワークとの出逢いは、彼が東京でブラブラ遊んでいる時に、偶然「ヌック」を見つけたことから始まった。その時「こんな風な絵の表現方法もあるのか…」とひどく感銘を受けたと言う。最初は「自分にはとても出来ない」と思っていたが、度々足を運ぶ内に、次第にその世界に魅せられていった。そして、週2〜3回、3ヶ月位通い続けて、見たり手伝ったりしながら要領を覚えた。掛川に帰ってからは、自己流で始めて見た。最初はベストやショルダーバックを作り、最近では額装した絵一本に絞られた。時には、その一枚の絵の中に、食事風景の中に猫が椅子の上で寝そべっていたり、窓から見える一本道は、はるか遠くの山々に続いていたりする。最初の頃から比べると図柄がずいぶん細かくなったという。額絵も大きいサイズの方が楽だけど、技術を向上させるためにも、小さいサイズを細かくしてやっているそうである。

個展が開ける!
萩原さんの作品も、最近ようやく日の目を見ることができるようになった。2ヶ月前から浜松のウッドブロックの店内に作品を置いてもらえるようになったからだ。ここでは飾り付ける前に1枚売れ、2ヶ月の間に7枚も売れたと気を良くしている彼である。最初の1枚が売れたときが最高にうれしかったと言う。そして今年の8月18日〜23日の6日間は、ウッドブロックが主催して、浜松キッドギャラリーで個展が開けることになった。徐々に世間に認められつつある。


                
人物紹介
萩原武さん(28才)掛川市上垂木
頭のてっぺんから足の先まで、どう見てもパッチワークをやるようなタイプではない。手先もそれ程器用には見えないし、体つきもゴツイ。「うっそお!本当っ?」って感じで、どこにこんな繊細な神経が隠されているのか不思議である。しかし、これらはまぎれもなく彼自身の作品である。あられちゃんが大好きという彼は、どこか少女趣味というか、メルヘンチックなものを持ち合わせているのかも知れない。彼の作品には夢がいっぱい詰め込まれている。細かい所も一枚一枚丁寧に縫い込んであり、もし自分でやるとしたら気が遠くなりそうだ。仕事が終わってから、余暇を利用して作っている。一枚のパッチワークを仕上げるのに15時間位を費やす。
メルヘンパッチワークの作り方

1.天竺(てんじく、木綿の晒す前の布)を染める。染料は手芸店で、ダイロン(1缶300円位)という英国製のものを使う。基本の色があれば混ぜて何色にも使える。
2.下絵を描く。それを染めた布に下絵の各部分部分をトレースする。例えば、赤い靴なら赤に染めた布に靴の部分だけをトレースする。
3.トレースしたものを縫いしろをつけて断裁する。
4.断裁したものを下絵通りに折りしろをつける。これらの作業を絵の中の各パーツごとに作る。
5.ジグザグミシンで、最初の下絵どおりに一枚一枚縫い付けていく。