掛川演劇鑑賞会
Vol.54 1984.9月号掲載 
演劇は役者と観客が創り出すもの

 
昔、大衆演劇が人々に愛されたのは、観客と役者が一体になったからであろう。畳の上にあぐらをかいて、酒を飲みながら大きな声で野次り、舞台にはおひねり(お金を紙に包んだもの)のご祝儀が舞う。大衆演劇は芝居の原点でもあるが、映画同様、テレビの出現で、今やヘルスセンターか下町の演芸場辺りに行かなければ滅多にお目にかかれることもなくなった。

 掛川演劇鑑賞会が主催する演劇は、大衆演劇とは趣を異にするが、生の迫力、芝居そのもののテーマ性、役者の良さが魅力となっている所は、大衆演劇と共通するものがある。観客と役者の双方で創り出していく、何とも言えない緊張感が素晴らしいという。

身近になった演劇

 
掛川演劇鑑賞会というのは、いい演劇を地元で観ようと、演劇の好きな人達が集まって運営している。掛川に生涯学習センターができたのをきっかけに、昨年の7月に発足した。20年位前までは、浜松まで行かなければ観られなかった演劇が、今は本当に身近な所にある。浜松まで観に行っていた人は、当初5〜6名しかいなかったのが、徐々に輪が広がって多いときには250〜260名になったと言う。

 その人達の間で、何とか自分達でそういう会を作りたいという希望が高まり、ついに中遠地区の人達が集まって磐田に本部を置く磐田演劇鑑賞会が出来上がった。掛川では上演するところもなかったために、掛川支部として発足。それが、いよいよ掛川独自の演劇鑑賞会が誕生し、ますます身近なものとなったわけだ。

一度観たらやみつきに…

 
第1回の文学座公演・杉村春子、高橋悦史主演の「横浜物語」はチケットが直ぐ売り切れになる程好評だった。2回目に行われた文化座公演。佐々木愛主演の「越後つついし親不知」も好評のうちに終わった。しかし、掛川演劇鑑賞会にとっては、これからが正念場でもある。掛川の場合は、まだ完全な会員制になっていないため、上演するものによって、毎回多少の変動がある。苦しいところでもあるが、地区ごとにチラシを配ったり、チケットを売っている130名以上の仲間の努力が、この会の大きな原動力となっている。

 しかし、どんなものでも、それを支える人、すなわち観客が感動しなければ長くは続かない。本当に良い演劇はいつまでたっても飽きられることなく続いていく。中には芝居が終わっても、観た人が劇場を去りがたくていつまでも客席に残っていることもあるという。文学座の杉村春子主演の「女の一生」などは、過去何百回と上演しているにも関わらず、未だに根強いものを持っている。

 良い演劇は、そこから教えられるものも多い。掛川演劇鑑賞会の中心となっている小野田さんなどは、20年間も演劇を見続けてきた。演劇の虜になっているようだ。

運営者の役得?!

 
会員は今のところ900名前後。何をやるかは、例会の会場でアンケートをとって決めるので、全ての会員に公平に発言の場が与えられる。演劇が終わった後の役者を囲んでの反省会や話し合いも自由参加で行われる。そして、時には皆で飲みに行く事もあるという。素顔の役者と接するチャンスなんて滅多にないけれど、自分達で運営していると、こんなチャンスにも恵まれる。

 興味のある人は是非参加して下さい。毎週水曜日には、掛川市大手町の事務所で会合が開かれます。今後の公演予定は次の通りです。

◆8月28日(火)滝沢修、奈良岡朋子主演「セールスマンの死」
◆10月19日(金)賀原夏子、黒柳徹子主演「テスト病」
◆2月4日(月)大滝秀治、日色ともゑ主演「すててこてこてこ」
※他にも「神の汚れた手」「うわさの二人」などが予定されている。