小笠社会科サークル
Vol.52 1984.7月号掲載 
情報交換が学習書作りに発展

 
中学校の先生1人を含む小学校の先生方で活動している「小笠社会科サークル」は、地域の情報を交換する目的で昭和48年(1973年)に松本先生を含む4名の先生方で発足。年々会員も増え現在は23名の先生が会に所属している。

 小学校の社会科というのは、算数を教えるのと違って、地域のいろいろな資料を必要とする。そのため、グループを作ってお互いに情報交換すれば、より大きな力になると考えたのがそもそもの始まりである。

 情報交換したものは、まとめて本にし、教材用として使っている。1冊目の「お茶作り」に始まり、今回発行された「葛布」で5冊目になる。どれも、授業の進め方がガイドとして入っていたり余白部分がノートとして使えるようになっていたりで、先生方が使いやすいように隅々まで工夫が成されている。また、大勢の先生がそれぞれに分担して、詳しく調べ上げているため、教材用としてばかりでなく、専門書としても貴重な資料となるため、関係者や一般の人達からの問い合わせも相次いでいる。

地域を愛する人間に…

 
全国には、いろいろな先生方のサークルがあるが、学習書を作っているのはここだけとか「中央の組織とつながって、地元から遊離してしまうような活動は絶対に戒めようと思ってます。だから全国組織には入っていないです。そのかわり常にこの地域に対して開けっぴろげにしています。だから、地域の先生が入ってくるのも出ていくのも自由にしています。何が絆かというと、こういう活動をしているというお互いの信頼関係です。」と、松本先生。

 そして、子ども達には、こういう学習を通じて地域の良さを知ってもらい、地域を愛する人間に育ってもらいたいという、先生方の願いも込められている。

 教科書は通り一辺で、グラフとか地図が載っている程度だから、子ども達はどうしても国語みたいにただ読むだけで終わってしまう。地元の身近な所から実際に見学とか体験をさせることによって、初めて理解できるようになると言う。表面的な捉え方だけで「わかりました?」と言っても、子ども達にわかるはずもない。だから、時には社会科でありながら、理科的な実験もさせながら学ばせていこうとしている。

葛布は自然そのもの

 
さて、今回発行された掛川の地域産業である「葛布」については、教材用としてだけでなく、一般の人達にも見てもらえるようにと、作り方から葛布業界の経済分析や織り方まで9項目にわたって写真と解説文でわかりやすくまとめられている。

 「葛布のもつ素朴な光沢と織りが、ともすれば自然を失いがちの私たちに、自然の素晴らしさを教えてくれます。葛はまさしく自然そのものです。葛布というのは、手作りの世界だから、自分達の手を通して葛布の良さを知ることが出来ます。伝統工芸でも、輪島塗などは高度すぎて実験は出来ないけど、葛布ならちょこっとやれば自分達で出来るんです。そこに惹かれますね。これができるようになれば、葛の材料はいくらでも手に入るんですから、すたれないと思いますよ。」

 地場産業でありながら、地元の人でさえ知らない人も多い。糸を紡ぐ人も年々少なくなり、葛布の危機が叫ばれている。そんな中で何とか存続させていくために、子ども達に実際に体験させながら教えていこうと努力している。そして、子ども達だけでなく、昨年の8月には一般市民や先生を対象に、小笠社会科サークル主催で「葛布教室」も開いた。掛川市民だけでなく全国から希望者が集まり、遠くは九州からも来てくれ、意外な反響に驚いている。出来ることならこれからも続けていきたいそうだ。

「葛布」の本が欲しい方は…

 
この掛川の「葛布」の本を欲しい方は下記の所で扱っています。1冊1冊に葛布の見本も貼ってあり、これ1冊で葛布の歴史から作り方まですべてがわかります。他には葛布に関する資料が意外に少ないので貴重な資料となることでしょう。変形版ですが、かなり大きなサイズで117ページもあります。
定価は1冊2,000円。販売先:掛川市役所商工労働課・三原屋書店・岡田書店・びさい堂


小笠社会科サークルメンバー
松本方之先生・鈴木達郎先生・高橋悦男先生・佐藤剛久先生・飯田良昭先生他18名