工房「バク」
Vol.23 1982.2月号掲載 
子育てで悶々とした毎日を過ごしてきた主婦達が集まった工房が誕生

仕掛け人の幸田さんに話して戴きました。
「現在の主婦層は子育てだけでイライラしていると思うの。以前何かやっていた人は特にそうだと思う。空いた時間に集まってお茶飲んでぺらぺらお喋りして、毎日がそれだけで終わってしまっていると思うのね。そういうパワーみたいなものを何かで九周できれば、と思って呼びかけて始めたのが工房『バク』です。まだ人数は3人しかいないけど、スタッフが沢山そろえば大きな力になっていくと思う。隠れた才能を持っていながら、それが生かされないとしたら、やはり悶々としているんじゃないかしら?そんな人たちが、楽しみながら、才能が生かされ、商品化され、尚且つ実益につながっていったら最高だと思うのね。」

手作りのあたたかさがいっぱい

手作りのものは少々不細工でも、やはり暖かさがある。工房「バク」が今企画しているのは、今年の3月までに、幼稚園に通園する子ども達の通園バックとか、弁当入れ、コップ入れなどの袋をセットで作ってあげることだ。買ってくれた人には、その子のイニシャルを入れてあげたり、本物の手作りの味を出していきたいという。

「本当は、母親が作ってあげるべき物なんだけど、共稼ぎの家庭が増えているから、手作りの良さを子ども達に触れさせる機会がないんですよね。だから、そういうことのできる主婦が、代わりに作ってあげようと言うことなんです。」買ってきたブラウスにイニシャル一つ付けただけで、子どもは親の心みたいなものを敏感に感じ取ってしまう。

主婦の時間が細切れだから、その細切れな時間を楽しみながら、社会とのつながりを持っていく。それプラス実益になっていくのだからこんなに良いことはない。単なる主婦で終わらず、世間となんらかの繋がりを持って行きたいと願いつつ工房「バク」は歩み始めた。


メンバー紹介
◆幸田政子さん(上写真中央)
もっぱら、企画宣伝、売り込みを担当している。将来工房「バク」のお店を作っていきたいという野心を持っている。そこには手作りのものを置き、主婦のコミュニケーションの場としても活用できるスペースにしたいそうである。ただし、何でもかんでも扱うのではなく、手作りの良さが十分表現されているものだけを扱っていきたいそうである。「主婦通しって言うのは表面的なおつきあいは多いけど、なかなか内面まで入り込めない。そんな中で利害関係抜きの裸のつき合いをしていきたいと思っている。今作らなければいつまでたっても出来ないと感じたから、皆に呼びかけて結成しました。もっと集まれば大きなパワーになっていきます。」

◆高橋 清さん(上写真右)
ブラウス、ワンピース、袋物など洋裁のことなら何でもござれ。手元にあった黒の別珍のワンピース(下写真右)はプロ顔負けの出来栄えである。手作りのものが不細工なんてとんでもない。縫製もしっかりしているしデザインもとてもカワイイ。

◆北浦世津子さん(上写真左)
デザイン学校で染色とか油絵を専攻していた。手先が器用なので編み物や刺繍までこなしてしまう。何の変哲もないセーターに、きらきら光るビーズを施せばハイ、高級セーターに早変わり。そのへんに転がっている紐にビーズを付ければ可愛らしいリボンのできあがりと、こんな具合にいろんな物をどんどん作ってしまう、まるで魔法のように。