掛川かるた愛好会(日本かるた協会所属掛川かるた協会)
Vol.22 1982.1月号掲載 
知力と鋭敏さを必要とする競技かるたは、正月だけのものではない。

百人一首は正月を代表する優雅でほのぼのとしたお座敷遊びである。同じかるたでもそんな優雅さとは程遠いのが競技かるたである。知力と鋭敏さを必要とし、運動神経の発達している者ほど段を取るのが早いそうである。ある高校のクラブでは、競技かるたは運動部に所属していて運動しながら身体を鍛え、試合に臨むのであるという。0.1秒の差を競うのだから至極当たり前のことかもしれない。

そして、競技に臨むためには百人一首の歌を全部暗記しなければならない。下の句を詠んで上の句がすぐに言えるようになることが第一条件である。かるたは上の句と下の句があって、読み人は上の句から詠み始める。並べられているかるたは、下の句だけしか書かれていないにも関わらず、殆どは上の句の1〜2音だけで勝負が決まってしまう。読み人が詠み始めた瞬間に取り札が宙に舞う。見事である。知力と反射神経の両面を持ち合わせていないと出来ないために、競技かるたを尻込みする人も多いという。

競技かるたは普通のかるたとは違って、歌を鑑賞するものではなく、トランプの神経衰弱のような者だという。100枚ある札のうち50枚を無作為に選びその半分の25枚づつを持ち札とし、1対1で競う。読み人は100枚の札を全部詠み上げるので、お手付きも多い。札を並べるのにも作戦が必要だ。取りやすい札を手前に持ってきたり間違えやすい札を相手近くに置いたり、人それぞれに作戦の立て方に個性がある。そして15分間そのままで札がどこにあるかを記憶する。15分後ようやくゲームが開始されるのである。

詠み人が歌を詠む瞬間、全身の神経を集中させるために、試合中は物音は禁物である。畳の上を誰かが歩く音だけで詠み人は読むのをやめてしまう。競技かるたは独特な雰囲気を持っている。

真剣勝負に挑む!

10年ほど前に掛川にかるたを普及させようとかるたのすきな同士が集まって「掛川かるた協会」が発足された。(このときは競技かるたではなく普通の百人一首から始まった。)2〜3年後、初めて全国かるた会で行われる「競技かるた」がある事を知り、見学に行きその魅力に惹かれ。競技カルタを主体に活動するようになった。が、競技かるたに尻込みする会員や諸般の事情もあってやめていく人もいて、現在も続けている人は3名となった。

世の中にはいろいろな面白いゲームや遊びが溢れているが、遊びの感度というかゲームに対する感覚がますます研ぎ澄まされてきて、当たり前のゲームでは飽き足らなくなってきている。だから趣向を次々と変えていくのである。しかし、競技かるたは、やり始めたらとことんのめり込んでいけるゲームのようだ。常に真剣勝負の世界だからであろうか。現在残っている3名もこの世界にのめり込んでいる。毎年1回行われる全校大会出場に向けて練習に余念がない。

みんな集まれ!

毎年行われている「百人一首初心者の集い」が、今年も1月15日に掛川市城北町の城北公民館で午前10時から行われます。会費は無料。愛好会のメンバーが親切に教えてくれます。あなたも正月にふさわしいかるた遊びに興じてみませんか。


メンバー紹介
●兵藤 毅さん(城北)毎週1回行われる練習は兵藤さんの自宅で行われている。毎回競技かるたの大会に出場しているが、なかなか段がとれないでいるようである。C級の3位まで入れれば段が取れる。「中・高校生には反射神経の面で追いつけない」と言うものの、第55回全国大会でC級4位という成績を収めている。あと一歩というところで段を取り損なったようだ。
●曽我正志さん(城内)掛川東高の教師で、かるたクラブの顧問としても活躍されている。「生徒達は若いから上達も早くどんどん追いつかれてしまう。でも、さいきんは中・高校生の愛好者がだいぶ増えてきたので、非常に良い傾向だと思う。これからもかるたの普及に努めていきたい。」
●山崎完治さん(吉岡)3人の中でただ一人の有段者・初段保有者です。