最初の丸太小屋
仕事場の増築
かわいい倉庫
キットの角ログ
コテージ
20年後の角ログ
1989年6月から仕事場の増築へ
仕事場(グラフィックデザイン)が手狭になり増築を決心。自宅隣なので暇な時にいつでも出来、1人でもできるツーバイフォー工法にした。何度も設計を練り直した結果、敷地の高低差を利用して薪置き場を半地下に、 車庫と木工室は1階、仕事場が2階になった。母屋とは居間からとロフトからも行けるようにし、丸太のセトリングが落ち着いた時期に全てつなぐつもりだ。
石積みの基礎そしてツーバイフォー工法の家
基礎の石積みや、ツーバイフォー工法は本来の仕事をやりながらいつでも工事の中断や再開ができる工法と考え選んだ。急がない工事だから生コン車もクレーンもいらない。1989年6月より基礎穴堀りなどの一連の作業がスタートする。
ここは石が多い。敷地内にあった石や基礎を掘ったときに出た石に栗石を足して石積みの基礎をつくる。
基礎は自由性のある石積みがおもしろい
住宅の基礎と言うと構えてしまうが、実際にやってみると案外簡単なものだ。凍結深度以下に穴を掘り、栗石を二重に入れて押し固め、コンクリートを流し下地を作る。その上に墨打ちをし、基本となる鉄筋を敷き、同時に垂直の鉄筋を目的の高さに立てて固定する。その鉄筋を中心に目的の高さまで石をモルタルで積んでいく。簡単に言えばこの作業の繰り返し。単純作業だが自由な形にできる。モルタルを練ったり石を運んだり選んだりの作業がなかなか手間だ。出来上がった基礎を見て「露天風呂ですか?」と言われた。なるほどそうかも。幅は一定ではないが、それなりに味のある仕上がりになった。作るとき水糸を水平直角の目標として張っておくのは言うまでもないが、最後に天端をモルタルで水平に仕上げれば、かなりいいかげんでも何とかなる。プロも最後の水平調整はこの手で行っている。
隣地境界線から5m離さなければならないので東側ギリギリにして南北に細長くなった。
石積みは気長に半年、格安材料入手に満足
基礎石は大きさが20〜30cmの栗石を2tトラックで2車分、割栗石を1車分を業者から買い、足りない分を敷地内から出た石で補った。基礎の費用はおよそ業者の十分の一。建物の材料は知り合った大工さんの紹介で地元の製材所に依頼。ツーバイフォーの寸法を伝え米松を挽いてもらい、外装材は知り合いの静岡の製材所に無理を言って栂の原木から挽き出してもらった。その運送費は夕飯のごちそうと高原の美味しい空気。いずれもコストは市販のツーバイフォー材や米松の外壁板を買うより半額以下に抑えられることが出来た。
母屋とは1階は窓をはずしログを開口にした入り口から階段で上がり、2階はホールから直接入れるようにした。
ルールの無いハンドメイドだから気軽に家が建てられる
車庫になるところは土間にして枕木を敷き詰めた。裏からは地続きで薪置き場に入ることができるが、雨や雪の日でも濡れずに取りに行けるようにしたかったので、車庫から木工室の下の薪置き場に下る階段を作る。ついでに母屋下の空いている地下に入れる入口も作りちょっとした木の材料を置ける場所を作った。工事をやりながら予定がドンドン変更されていく。気軽に変更し、完成を楽しみにしながら施工する。これもハンドメイドハウスの良さ。空いているスペースは全て使うつもりでいる。
仕事場には3カ所ドーマーを取り付けたが、加工が複雑で難しく、作業に手間取った。
11月から木工事、いよいよ寒い雪の季節がはじまる
基礎が終わって床組みのスタート。土台を2×6でダブルに廻してアンカーボルトに緊結。1階床枠組みは2×8。繋ぎ部分と木工室だけなのですぐ終わる。次は壁(スタッド)だ。車庫になる部分のスタッドは2×6を使う。高さが2間(約3.6m)あるので分けて作り、滑車を使って立ち上げた。木工室のスタッドはステージがあるので意外と楽に起こせた。全てのスタッドを立ち上げ頭をつなぐ。本来ならば次の作業は小屋組みになるのだが、風が吹き寒くなってきたので、風除けのために先に外壁下地の針葉樹合板を張った。
年が変わり1990年。ログのロフトの東側の小さなデッキをはずし、2階根太を打ち床下地のコンパネを張る。24 畳の地上4mの空中ステージの完成。雪の季節で作業も滞りがち。その後2階のスタッドが完成したのは3月、屋根下地が出来たのは4月だった。
足場は2寸角100本で組み、後に下屋根太と野地に再利用
足場を組んでから外壁作業になる。外壁は縦の目板張る。窓を入れながらの作業も8月に終わり、9月に屋根材のシェイクを打つ。母屋から出ていた薪ストーブの横引き煙突を、増築部分にレンガで作ったタールピットの中に一度入れ、つなぎの階段部分から屋外に出す。煙突の外装はカルチャードストーンにした。窓の外側に飾りを施し、ほぼ外観は完成し後はペイントを残すのみ。内装材の板にプレーナーをかけルーターで加工をして内装作業に備える。10月は天気の良い日は外壁の塗装、雨の日は内装と、効率よく作業が進む。今月をもって1990年の作業が終わる。

教訓!材料はよく乾燥させよう
1991年2月から内装作業が始まる。2階仕事場は、片流れの屋根にドーマが3カ所あるので取り合わせのパネリングが難しい。しかし一つパターンをつくれば後は同じ加工なので楽だ。フローリングは地元で伐採した樅の木を挽いてもう。仕上げを急いでいたため挽いてすぐ取り付けたので、乾燥して収縮しすきまが大分空いてしまった。電気工事や照明の取付、細かい飾りやモールディング加工等が終わり母屋と接続。やっと4月からここで本来の仕事が出来るようになった。
東側から見たところ。外壁は栂の立て板張り。車庫と薪置き場の明かり採り窓は手作り。
フィックス(明かり採り)の窓は手作り
窓は仕事場に4カ所、木工室に3カ所アンダーセン社製のダブルハングウィンドがある。他は開ける必要のない明かり採りの窓なので、ガラス店でカットしてもらった板ガラスで額縁の要領で枠を作り、ガラスの間をウェザーシールドテープで接着して空気層を設け、二重ガラス風のフィックス窓に仕立てた。タール点検口の開き戸も含め大小合わせて14カ所。外側の汚れが気になるがあまり結露もないし自作でも不具合は感じていない。
ツーバイフォーは自由性もあり特殊技術もいらない合理的工法。ただ、ログハウスと較べ手間が掛かる。ログは壁が内外同時にできるが、ツーバイフォーはスタッドを立て断熱材を入れ壁下地を張り防水紙を張り外壁材で仕上げる。内装も同様だ。その分意匠は好みに合わせて様々な工夫が出来、思い通りの仕上がりが期待できる。電気工事や設備工事もログハウスに比べればはるかに容易だ。今回の仕事場の場合はアーリーアメリカンタイプに仕上がった。

足場材で車庫続きの下屋をつくる。
車庫は馬小屋のような扉を付けようと思ったが、開閉が面倒なので中止して下屋を作ることにした。間伐をした唐松をピーリングして柱にし、ログハウスの時の残りや近くの建築現場でもらった材料で梁とトラスを組み、足場で使った二寸角を垂木と野地に利用した。屋根材は仕事場で残ったシーダーシェイクだ。基礎は残った石で作る。材料費はほとんど掛からず、2間×2間の下屋が完成。天候の悪い日でも薪割りができ、畑の肥料混ぜなど屋外作業の基点になっている。ガレージセールの時にも良く活躍する優れ場所だ。
左右が空いているが厳寒期には冷気を少し防ぐことが出来る。車に雪も積もらずらず快適だ
おまけの北側ポーチ部分の増築と薪置き場
表から見ると半地下に見えるの車庫奧にある薪置き場は約10畳の広さ。ボイラー用の薪を置いてある。半分は耕耘機やら肥料やらでいっぱいだ。
母屋の裏にも屋根付きのポーチがあった。いわゆる勝手口である。その部分の周りをツーバイで囲こみ、冷蔵庫や冷凍庫とオーブン等を収納するスペースにした。その横は下屋付きの500L 灯油タンクを置いてあるスペースで、その材料は間伐した唐松で作った。
薪置き場は一間の出入り口があり裏からすんなり入れ耕耘機の出し入れも簡単。
外でゆっくりコーヒーを飲みたいならデッキを作ろう
家の南側全面に1間幅の下屋付きのポーチがある。薪やベンチを置いたりと便利だが、物を置くと狭い。また庭にはバーベキューコーナーとベンチテーブルがあるのだが、階段を上がったり降りたりが面倒だ。入口からすんなり行けて、爽やかな青空の下でのんびりコーヒーを飲みたいということで早速部屋の延長としてのフラットなデッキを作ることにした。
穴掘りにいつも時間が掛かるので、知り合いの土建業者に依頼して犬小屋の移動を含め独立基礎の穴を1m 強の深さで9カ所掘ってもらった。機械は早い。手堀なら1週間以上掛かるところを半日で掘り上げた。基礎は相変わらず石積み。今度は独立基礎なので1 週間ほどで作業は終わる。
次は根太と床板張りだ。年中雨ざらしになるので材料は2×6のウェスタンレッドシーダーを使用。単調なので玄関の入り口に4本の柱を立てエントランスに屋根を作った。デッキのフェンスはレッドシーダーを板に挽き格子状に取り付けた。
人間とはおかしなもので周囲がにちょっとした目隠しが有ると安心する。囲いのないオープンデッキも良いが、これなら、居心地の良いアウトドアのリビングスペースとして十分利用価値が有る。11月29日今年の作業が終了。もうすぐ雪の季節がはじまる。
「家作りにこだわっているね。」私にそんなことを言った人がいた。
でも私自身は特にこれといったこだわりは持っていない。
ログハウスのスタイルはこうだとかノッチはこれが一番だとか…その部分にはあまり関心はない。
自然木を使った家が好きでただ木の温もりと香りが好きなだけ。
いつも身を置いて生活する場所だから出来る限り自分で建てる。
山の静寂の中であまり自然とケンカしないように…
Data:床面積64.4平米(1階24.8平米・ロフト:39.6平米)車庫:23.1平米・デッキ:50.0平米・半地下:16.5平米/工期:1989年6月〜1992年11月/工法:ツーバイフォー/材料:ダグラスファー、米栂/屋根材:ウエスタンレッドシダーヘビーシダーシェイク/建具:アンダーセンウインドほか/内装材:栂材パネリング、樅床板/基礎:石積み
※2001年にここの原村から富士見町に移転したため母屋のログハウスとともに今は他のオーナーの所有になっております。

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