自然派SOHOの田舎暮らし快適実践術
メールマガジン「八ヶ岳の里から」バックナンバー
《第60号》2009年2月14日発行
◆いろいろな里山の出来事(裏山の散歩道)
◆田舎暮らしと暖房の燃料
◆例年なら厳寒期なのですが、立春も過ぎ暖かい日が続いています。月桂樹も枯れることなく、椎茸までも出てきてしまいました。変な感じですが、たまにはこの様な冬もいいかなと思っています。



  ◆続編-いろいろな里山の出来事

《裏山の散歩道》

愛犬と散歩する道がここ数年限られてきました。
この頃は、ほとんど裏山の林道みたいな道を散歩しています。ちょっと「陰の気」を感じるような道ですが、とりあえず町道です。

ここに来た8年前は、ほとんど藪状態で手入れがされていなかったので滅多に通ることはありませんでした。もちろん地元の人たちも通りませんでした。

5年前この近所に別荘が建ちはじめ、そのとき上水道を引くために水道管を埋設する工事が行われたため、車が通れるほどの幅に拡張されたので、道として機能するようになりました。

この道は農繁期にトラクターが年に数回、他には農家の人が年に数回、山の手入れで利用するくらいで、車も年に数台でほとんど通りません。春の山菜の時期や秋のキノコの時期でも人は少なく普段は人にも滅多に会わないので、気楽にのんびりと愛犬たちと散歩が出来る、私にとって唯一の散歩道になっています。

この道は我が家の直ぐ東側に隣接しています。そのまま北に向かい奥に入っていくと500メートルくらいですぐに集落に出てしまいます。途中を曲がれば山を一周する道になります。

道の左右は赤松林。ほとんど手入れがされていません。そのため競い合いながら密生して、力のない林になってしまっています。自然に間伐されたように自ら立つ力の無くなった木々が倒れることもあり時には道を塞ぐこともあります。

年に数回ですが、道に掛かった木を退けるため、チェーンソーを担いで整備しています。道の草刈りも誰もしないので夏の草が繁茂する時期になると草刈り機を担いで散歩をしやすいように周りを刈っています。踏み心地の良い秋の落ち葉だけはそのままにしておきます。

こうして確保している散歩道は余計に愛着が湧きます。やはり、散歩には山の道が一番です。基本的に、無機質なアスファルト道路は好きではありません。原村にいたときも、ほとんど登山道に出て散歩していました。

この道は、野生動物も多く通るようで、愛犬たちは臭いを一生懸命かぎまくります。他の犬の散歩の臭いも有るのですが、野生動物の臭いは反応が際立って異なります。特に動物が通ったばかりだと、毛が逆立ちながら臭いをかぎ回り道から外れるように林の中に突っ込むようにしながら臭いを追いかけていきます。

このときノーリードだったら、犬の本能なので、静止は効かず、思うに任せ追いかけて行ってしまいます。

数年前のある雨の日、シェルティをノーリードで散歩をさせていたとき、数十メートル前に、一頭の鹿が道を横切りました。散歩途中から犬の様子が何かを探すようでおかしかったので、繋ぐかどうか迷っていた矢先の出来事でした。

シェルティは、もちろん突進です。牧羊犬の血筋は争えません。しかし、鹿は犬よりも素早く山を駆け上っていきます。犬も鹿も無言です。遂に二頭とも木の陰になり見えなくなりました。山の上方では愛犬が吠えています。その声が左右に移動しています。

愛犬シェルティは、自分の思うようにならないときに良く吠えます。その犬のいつもの行動からすると、多分鹿に追いつかなかったのでしょう。鹿に逃げられたから吠えていると察しました。私も途中まで追いかけましたが、とても追いつくものではありません。

暫くして、愛犬は、帰ってきました。雨で濡れた体から湯気が出ているような興奮ぶりです。眼はきりっとして緊張しているようなcかなり張り切った感じです。それでもちょっとの間、野生に戻って、とても満足した様子にも見えました。と言うことで、短いけれどのんびり出来るこの道が、お気に入りです。



   ◆田舎暮らしと暖房の燃料

冬の暖房といえば寒冷地では石油ストーブが主流ですが、この近所、特に別荘の家では、ガスストーブや電気の床暖房を入れているお宅があります。中には、薪ストーブや暖炉を設置している家も見かけますが、都会では主流のエアコンを使っている所はあまりありません。

電気の床暖房で、毎月5〜6万円の電気代がかかり不経済なので使わないとか、燃やす薪がないので薪ストーブは使わないなど、事前のリサーチや後のことを考えなかったために無駄な設備に成ってしまったという事を良く聞きます。

この頃では、ソーラーなどの自然エネルギーによる発電や、エコキュートなどを取り入れる家もちらほら見かけます。が、新築で組み込まれるならまあ良いのですが、後付けで行うとかなりの金額になり、必要に応じて改装が必要になったりで結構費用もかかるのが現実で、製品を作るときのエネルギーや設置するときのエネルギーなどに加え製品寿命なども含めたトータルで考えるとあまり「エコ」には繋がらないように思えます。

我が家は、今のところバイオマス(注釈1)である薪が主流です。補助として温水暖房機を使っていますが、これは燃料に石油、着火と送風と温水循環に電気を使っています。

この冬は、最初に寒い日が続いたので、例年より速く薪が減ってきました。スターターに使う細い枝や端材もほとんどありません。

この薪ですが、一番良いのが広葉樹の堅木が良いとされていました。

近年は、間伐材などから作られたペレット(注釈2)を使ったストーブも出回り始めましたが、わざわざペレットに加工する設備や手間と製品にするためのエネルギーを見るとちょっと疑問があります。また、燃料のコストから言えば他の燃料から比べてまだまだ高いように思います。

その中で、この辺ではほとんどタダ同然で手に入り、ほとんどの人は薪にはしない、間伐のアカマツやカラマツがあります。本来なら、このような針葉樹は薪ストーブの燃料としては需要が低くあまり適しません。

なぜなら、一気に燃えて、尚かつ高温(1000〜1400度)になりすぎるために、エアタイト(密閉)型だと燃焼効率が悪く煙道にタールの溜まる率が上がるので、煙道火災の心配があるからです。

しかし、これらをクリアすれば、この辺に大量にあるカラマツなどはとても良い薪になります。他にも間伐したヒノキや杉なども良いかもしれません。

市販されている欧米のほとんどのストーブは高温に耐えるように作られています。中には粗悪なものもありますが国産でもハンドメイドでしっかり作られているのも見かけます。

そのなかでもメジャーでは有りませんがカラマツストーブとして売りに出されているものも有ります。もちろん他の木も燃やせますが高温になるカラマツなどを燃やしても大丈夫と言うことだと思います。

いずれにしても、ストーブ自体に空気調整が出来ることと、煙突の性能や設置方法、手入れ如何により、薪ストーブに使用する薪の樹種の選択の幅が決まってきます。

長野に住み始めた当初、カナダ製のカリブコンフォートというエアタイトにもオープンタイプにもなる鉄板が厚い薪ストーブを使っていました。調子づいてカラマツや米松をどんどん燃やしていました。60畳ぐらいの部屋でも大丈夫というストーブです。外はマイナス15度でも部屋の中は22〜25度くらい、とても暖かく快適です。

しかし、ある日煙突が透けて見えるほど煙突火災が起きてしまいました。壁から水平に外に出ている部分から、90度に折れて上に立ち上がる角にタールが溜まり、それが途中の煙突に溜まったタールに火がつき、その場所で溶鉱炉のように燃えていたのです。

当時の煙突はストーブからの立ち上がりは1.2メートルは6ミリ厚の鉄製煙突で安心設計。それから上が直径210ミリ径の一重ステンレス製です。屋外も一重煙突だったので、外気に触れた部分で煙突内に結露が生じ、タールが溜まったことだと思います。それ以降、途中に煉瓦でタールピットを作り、断熱材の詰まった二重煙突にして常に煙突には掃除点検を怠らずに気を配っていました。

煙突の掃除と点検をこまめにすれば、カラマツだけでなく針葉樹は薪としても今後の利用に期待できそうです。

注釈1:枯渇性資源ではない、現生生物体構成物質起源の産業資源。国が定めたバイオマス・ニッポン総合戦略では「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義。
注釈2:間伐材やおが屑などを機械で細かく粉砕し直径約6〜12mm、長さ約10〜20mm程度の大きさに圧縮成型(スクラップ)した固形燃料。



【編集後記】

世の中、更に不景気になってきました。ここ数年徐々に仕事が減ってきたことで、より一層肌で感じます。昨年は多数こなしていた都会のクライアントからも月に数点の仕事しか来ませんし、この春には閉鎖する会社もあります。デザイン料の価格破壊もありますが、私たちのようなデザイナーが関わる広告関係費用は一番に削減対象になるのでしかたがありません。反面、昨今の経済成長の減速は二酸化炭素排出量が減って環境には良いかもしれません。生活しづらくなるけれど有りの儘に受け入れるしかありません。
地球上の生物の頂点にいる人類は特に近年、環境によいことは何一つとしてしてきませんでした。中でも先進国は社会成長を急ぐあまり、その営みは全て自然破壊で成り立ってきました。勿論私自身も、ここに住む続けること、何かを作ること自体で環境破壊はしています。抽象的ですがこれからもっと自然の包容力に合わせて、もっとのんびり、もっとゆっくり暮らしていれば何とかなるかもしないと思っています。私は自分の持ち場で、できることを無理をしないでやるだけですが、まだ取り返しのつくこの時期に、そろそろ世界のさまざまな産業全体もターニングポイントではないでしょうか。
枯れた木が倒れかかっている裏山の道。落葉を踏みしめるのが心地よい。
左下は小さな川が流れている。冬は雑木がはお落とすので明るく、草も無いので歩きやすい。

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